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白い巨人からの招待状、そしてマドリードへ

歴史的なトップチームデビューからわずか3日後。

ヘルシンキ郊外にあるホルトーリ家のリビングには、いつもとは違うピンと張り詰めた、しかしどこか誇らしい空気が流れていた。

大きな木製のダイニングテーブルの上に、重厚な封筒が置かれている。上部には、世界中のフットボーラーが憧れる王冠のエンブレム。

レアル・マドリードからの、インビテーション。


「……本当に来ちゃったね、ダン」

真由美が、紅茶のカップを置く手をごくわずかに震わせながら呟いた。

「下部組織(カスティージャ)からのスタートだが、条件は破格だ」

マルクが、契約書を眼鏡の奥の目で見つめながら、静かに、しかし確かな興奮を隠せずに語った。

「彼らのスカウトレポートが添付されているよ。『15歳にして、クルトワ(レアルマドリード、ベルギー代表GK)の牙城すら脅かす可能性を秘めた、惑星最高のキッキング・マシーン』だとさ。パパの科学的分析を、マドリードのスカウトも完全に認めたわけだ」


ダンは、ソファーに深く腰掛けたまま、自身の右足の爪先をじっと見つめていた。

ボルト・アリーナで放った、あの垂直に落ちる「懸河のドライブ」。プロのトップリーグであれを決めた瞬間から、自分の日常が世界のスピードで回り始める想像はしていた。

けれど、まさか16歳になるのを待たずに、フットボール界の最高峰である「白い巨人」の門が開くとは思っていなかった。

(注:契約開始は16歳に達した日からです)


真由美がリビングの棚からあの古い革表紙のノートを持ち、ダンの隣に座る。

「ねえ、ダン。じいちゃんのノートの、最後のページに何が書いてあるか知ってる?」

「ううん、そこだけいつも、母さんが見せてくれなかったから」

真由美がそっと開いた最後のページ。


『本竹の蹴球は、泥の中だけで終わる器ではない。いつか意志を継ぐ者が、世界で最も青い空の下でこのキックを放つ日を信じている。恐れるな、飛び立て』


「じいちゃん……」

碧い瞳に、下町のゴッドファーザーの執念と愛が、まっすぐに飛び込んできた。

1932年、ロサンゼルスのピッチに立てなかった曾祖父の無念。しかしそれは「悲劇」ではなかった。

ダンが世界の頂点でその『懸河の蹴球』を証明するための「100年の助走」だったのです。


ダンはゆっくりと立ち上がると、オファー用紙を手に取り、両親をまっすぐに見つめた。

「行くよ、マドリードへ。じいちゃんが言った通りの、最も青い空の下へ」

マルクは満足そうに深く頷き、真由美は愛おしそうに息子の金髪を撫でた。


フィンランドの豊かな森と、大正~昭和時代の泥臭いレガシーをその身に宿した碧眼の少年は、ついに世界の真ん中へと翼を広げたのです。



『懸河の蹴球~碧き瞳 飛翔編』 完


第2編 懸河の蹴球~碧き瞳 光陰のマドリード編~

9/30(水) 7:00より公開スタート。

マドリードを舞台に、第1編の主人公、ダン・ホルトーリのサッカー生活を描きます。

全12話、初日3話公開しました。(第1話は登場人物紹介)

今作もぜひぜひ、ご愛読下さい。


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