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第21話 うしろの正面

 


 

「当たって! ルミナスアローッ!」


 ルミナスハートの矢は業魔の額を射抜き、爆発を起こす。


「斬り裂け! オーロラブレードッ!」


 オーロラハートの剣が業魔を分断し、業魔は光に消える。


「お疲れさま、オーロラ。技の威力凄かったね」


「それを言うならルミナスもよ。狙いも正確で、トドメを刺しやすかった。……でも」


「うん。まだまだだね。でも焦らず、私たちは私たちのペースで力を付けるしかないと思う」


「そうね。いつまでもステラハートにデカい顔させたくないわね」


「ふふふ、そうだね。……トゥインクルハートも、見てくれてるかな」


 二者二様。それぞれの特性を活かし、二人は順調に力をつけ始めていた。

 それをトゥインクルハートは、建物の屋上で胡座をかいて見守る。


「……うん、二人とも着実に強くなってるな」


 二人とも魔法少女としてはルーキーだからね。

 これから少しずつ魔力を多く引き出せるようになって、力を伸ばしていくことだろうね。

 魔法少女界隈では、今の状態を“魔力が馴染んできた”って言うんだよ。


「いや、俺もめちゃくちゃルーキーなんだけど。もしかして、俺もまだ魔力は馴染んでない感じ?」


 小太郎の場合、始まった時から既に馴染みまくってるよ。ラブコメマンガの幼馴染ヒロインくらい馴染みまくってるから。もうベッタベタだから。

 ホントに規格外だよ、キミは。

 普通の魔法少女が聞いたらみんなキレると思う。


「そんなの知らないって。……にしても、ちょっとこのところ業魔が多い気がする」


 そうだね。

 ここ連日出てるよね。

 

「一体一体は大した強さじゃないんだけど、こう連続すると、意図のようなものを感じるな」


 そうだね。

 ルミナスもオーロラも、ついでにステラハートもフル稼働だしね。

 のんびりしてるのは、小太郎くらいだよ。


「俺は正規社員じゃないから別にいいだろ。そもそも俺の出番がないくらいにはみんな強いわけだし」


 でもなんか、ムズムズするっていうか、煮え切れないっていうか。

 嫌な感じはあるよね。


「だな。ここでキリッと“嫌な予感がする”とか言ったら、それもうネタフリになりそう」


 そうだね。

 もっとも、ネタフリで言うなら、それ言ってる段階でもう手遅れだろうけど。




 ◆




 ルミナスとオーロラがいた場所から離れた繁華街に、彼女はいた。


「――Verreckeeee!!(くたばれぇぇ!!)」


 ステラハートの雄叫びと、機関銃の掃射音が凍結空間に響く。

 掃射を受けた業魔は、断末魔すら許されることなく消滅した。

 そして彼女は機関銃の銃口を下げ、辺りを見渡すが、他に業魔の気配は感じられない。

 そこでようやく、ステラハートは緊張を解いた。


「Puh …… jetzt fühle ich mich wenigstens ein bisschen besser(ふぅ……少しはスッキリしたわね)」


 ステラハートは、機関銃を虚空へと消し去った。


「Aber das bringt mich wirklich in Bedrängnis. Dass ausgerechnet Kotarō sogar der Gebieterin ins Auge gefallen ist, hätte ich nicht erwartet. …… Na ja, dann hatte ich wohl doch ein ziemlich gutes Auge für ihn(でも、本当に困ったわね。まさか小太郎が、盟主様にまで目をつけられていたなんて思わなかったわ。……まぁ、そう考えると、やっぱり私には人を見る目があったってことかしらね)」


 しかしそうは言っても、やはり複雑である。

 盟主ルクレティアが小太郎に目をつけているということは、今後も彼を籠絡しようとした際、盟主がまたも横槍を入れてくる可能性は捨てきれない。


「Irgendwie würde ich Kotarō ja gern mit nach Hause nehmen, aber … hm. Vielleicht sollte ich einfach meinen erwachsenen Charme spielen lassen und gleich vollendete Tatsachen schaffen? …… War nur ein Scherz(どうにかして小太郎を連れて帰りたいんだけど……うーん。いっそのこと、大人の魅力を使ってそのまま既成事実まで作っちゃおうかしら? ……なんてね)」


 リィーーン――。

 鈴の音が鳴る。


「――――ッ!?」


 ステラハートは即座に機関銃を取り出し構えた。

 リィーーン――。

 またも音が周囲に響いた。


「…… Was ist denn das? Was war das für ein Geräusch?(……何なの? 今の、何の音?)」


 時空間凍結はまだ解いていない。

 ということは、人ではない。しかし業魔の気配もない。

 言い知れぬ不安がステラハートを包み始めた――その時だった。


〈――……うしろの正面、だぁれ〉


 籠もった声が、背中を摩った。


「――――ッ!!」


 ステラハートが後ろを振り返ると、眼前には、触れる距離で迫る深い青色のドミノマスク。

 そしてその日、ステラハートことアリス・シュテルンは、忽然と姿を消したのだった。







 



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