表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万華鏡は月を巻き戻す  作者: 舞響


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/45

41話 大人の君と恋をする


「羽瑠に話したいことたくさんあるんだ。」


朔は少し照れたように笑いながら、

でもどこか必死に言葉を探していた。


「私もだよ!」


胸が熱くなる。

声が震えるのを抑えられない。


「うん。これからたくさん話そう。

この先はずっと一緒だ。」


その言い方があまりにも自然で、

まるで“続き”を話しているみたいで、

涙がこぼれそうになる。


「うん。」


「思い出すの遅くなってごめん。」


朔は少しだけ視線を落とした。

その横顔は、昔より大人びていて、

でも根っこの優しさは変わっていなかった。


「ううん、私は怖くて会いに行けなくてごめん。」


「それでも、会えた。

これからまた始めよう。」


「うん。」


言葉を交わすたびに、

会えなかった空白が少しずつ埋まっていく気がした。


私たちは二人で私のアパートにやってきた。


夜の空気は少し冷たくて、

でも朔の隣にいるだけで不思議と安心した。


部屋に入ると、

朔は周りを見渡す。


「これ朔にもらった本に挟まってたの。」


私はそっと紙を差し出す。

朔は目を丸くした。


「うそ!みたの?」


「うん。」


「そっかー、恥ずかしい。」


朔が顔を両手でおおい、

指の隙間からチラッとこちらをみる。

その仕草が昔とまったく同じで、胸が痛くなる。


「このページ。」


「うん。」


私はそっとくっついてたページを見せる。



死ぬまでにしたいことリスト


『大人の羽瑠とまた恋をする。』



指を刺す。


「これ今も変わらない?」


静かな部屋に、

朔の呼吸だけが近くで聞こえる。


「もちろん、

変わらない。」


そう言って朔が私を抱きしめる。


その腕の温度が、

“失われたはずの未来”を取り戻してくれたようで、

私は目を閉じてその胸に顔を埋めた。


「羽瑠こそ…

変わってない?

恋人とか…いない?」


朔は不安そうにこちらをみる。

大人になった顔なのに、その目だけは昔のままで、胸がきゅっと痛む。


「いないよ。

忘れようもしても…ダメだった。」


湊さんに気持ちを向けようとした時期もあったけどやっぱりうまくいかなかった。

いつでも浮かぶのは、無邪気な朔の笑顔だった。


「そっか。

それにしたってさ、羽瑠きれいになりすぎだよ。」


朔は照れたように笑いながら、

でも本気で言っているのが伝わる。


「え?そう?

朔こそ…かっこよくなってる。」


「ほんと?

嬉しい。」


「うん。」


「話したいこといっぱいあるんだけどさ、

まずは…腎臓ありがとう。

俺の命を繋いでくれたんだね。」


朔は真剣な目でこちらを見る。

その瞳に映る自分が、泣きそうだった。


「うん。

私怒ってるんだよ。」


「え!?」


朔が目を丸くする。

その反応が昔と変わらなくて、胸が熱くなる。


「全部一人で抱え込んで。

カッコつけて終わりにしょうとするなんて…

ほんと、バカ。」


「バカって…。

一応飛び級で研修医になったんだけどね。」


「それはすごいけど…。」


言いながら、

胸の奥がじんわり温かくなる。


朔が生きていて、

こうして目の前で笑っていて、

触れられる距離にいる。


それだけで、

涙が出そうになるほど幸せだった。


「羽瑠…この11年どうやって過ごしてたか教えてよ。」


朔は、まるで時間を取り戻すように、

ゆっくりと言葉を選びながら私を見る。


「いいよ。朔こそ教えて。」


「うん、一晩中話そう。」


その声があまりにも優しくて、

胸の奥がじんわり温かくなる。


「17歳で記憶思い出したの?」


「そう。本当はすぐ会いたかったけど、

17歳の俺が会いに行っても子供扱いされて相手にされないと思って、

だから本気だした。」


ふっと笑う朔。

その笑い方が昔と同じで、でも少し大人びていて、

胸がきゅっとなる。


「すごい。」


「ねぇ、羽瑠。

今なら俺の恋人になってくれるよね?」


「うん。

でも私7つも上だけどいいの?」


「当たり前じゃん。

関係ないよ。羽瑠は羽瑠だ。」


その言葉があまりにも真っ直ぐで、

涙が出そうになる。


「ねぇ、私がおばあちゃんになってもちゃんとそう言ってね。」


「その時は俺もおじいちゃんだから大丈夫だよ。」


ふっと二人で笑い合う。



「あとさ、この死ぬまでにやりたいことリストじゃなくて、

生きてるうちにやりたいことリストに変えようよ。」


私がそういうと、朔は紙を指で軽く叩きながら、

少し照れたように笑う。


「確かに。そっちの方が前向きだ。

じゃあさ、

二人でやりたいことこれからたくさんやっていこうよ。」


「うん。」


胸の奥がじんわり温かくなる。

“これから”という言葉が、こんなに嬉しいなんて。


「じゃあまずは、

大人の羽瑠とキスをする?

これどう?」


朔が少しだけ首を傾けて、

いたずらっぽく笑う。


「ちょっとさ。」


思わず笑ってしまう。

でも心臓はずっと早くて、

顔が熱くなる。


ふふっと笑う。


「だめ?」


「だめじゃない。」


その言葉を聞いた瞬間、

朔の表情がふわっとほどけた。


優しく朔の手が伸びて、

そっと頬に触れる。


そして、

唇が重なった。


触れた瞬間、

全部あたたかく溶けていくようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ