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万華鏡は月を巻き戻す  作者: 舞響


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33/45

33話 真相


「そんなの、狂ってる……。」


私が震える声で言うと、黒木は静かに笑った。


「そうだね。姉さんが死んだ日から、僕の人生は狂ってる。

医者として人を助けても、何も感じなかった。」


朔が一歩前に出る。


「あんたは……今、羽瑠を奪おうとしてる。

やめろ。絶対に後悔する。」


黒木は首をかしげる。


「それはどうかな。やってみないと分からないよ。」


朔の目が鋭く光った。


「いや、分かる。

俺は未来から来たんだ。

あんたは羽瑠を失っても満たされない。

渇いた心を埋めようとして、羽瑠のあと――3人の少女を狙う。」


黒木の表情がわずかに揺れた。


朔は続ける。


「何も満たされないまま、ただ壊れていくだけだ。

黒木雅信はそれに気づいていた。

だからあんたを隠した。戸籍から消して、海外に飛ばした。」


空気が凍りつく。


「そして俺は……気づけなかった。

あんたが“犯人”だったこと。

見逃したんだ。」


黒木の呼吸が浅くなる。


朔はさらに踏み込む。


「ずっと恨まれ続ける。

寝ても覚めても、あんたの罪は消えない。」


黒木はかすかに笑った。


「未来って…面白いことを言うな…。」


朔は静かに言った。


「あんたの言葉の意味を、やっと理解したよ。」


黒木の目がわずかに見開かれる。


朔は続けた。


「『動かない蝶は、美しくないね。

捕まえて壊してしまったことを、僕はきっと忘れないんだろう。』」


黒木の表情が固まる。



「俺…10歳の頃あんたに一度だけ会ってるんだ。

黒木院長の後ろについてた。

子供の俺は、その言葉の意味が分からなかった。

でも今なら分かる。

それは“後悔”だ。

あんたが壊してしまったものへの、消えない後悔。」


黒木巧は、完全に動きを止めた。


「その言葉……確かに僕が言いそうだな。」


黒木は薄く笑った。

その笑みは、どこか壊れた静けさをまとっている。


朔は私の前に立ち、微動だにしない。


「でも、君たち二人を“消せば”……関係ないよね?」


その一言で、空気が一気に冷えた。


朔は低く、しかし揺るぎない声で言う。


「そんなこと、させると思うか。

もう手は打ってある。

あんたが俺たちに何かしたら――その瞬間、全部が明るみに出る。」


黒木の目が細くなる。


「へぇ。すごいな。

でも……そう簡単にいくかな?」


黒木がポケットに手を入れた瞬間、

朔は私を後ろへ押しやり、黒木との距離を一気に詰めて、黒木を背負い投げした。


床に響く音。

黒木は驚いたように息を呑む。


「はは……すごいね、君。」


朔は息を整えながら言う。


「何の準備もなしに来るわけないだろ。

護身術も、対応も、一通りやってきた。

羽瑠を守るために。」


そして、スマホの画面を黒木に向けて見せる。


「それに――今までの会話、全部録音してある。」


黒木の目が大きく見開かれた。


その瞬間、

彼の中で何かが“止まった”ように見えた。



「可愛げのないガキだな。」


黒木は乾いた笑みを浮かべた。


「それはどうも。」


朔は一歩も引かない。


「約束しろ。

今後羽瑠を――傷つけないと。」


黒木は肩をすくめる。


「約束するよ。

ここまでバレてるのに無茶はしない。

捕まりたくはないからね。」


その笑みは、自嘲にも諦めにも見えた。


その瞬間、朔がふっと膝をついた。


「朔!? どうしたの?」


私は慌てて駆け寄る。


朔は苦しそうに笑った。


「ごめん……もう、時間みたいだ。」


「……え? どういうこと?」


胸がざわつく。

嫌な予感が、全身を締めつける。


朔はゆっくりと私を見た。

その瞳は、どこか遠くを見ているようだった。



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