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万華鏡は月を巻き戻す  作者: 舞響


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13話 遊園地に潜む影

そして、遊園地デート当日。


「なんか朔、荷物多くない?」


「うん、色々とね。」


「へぇー……?」


何を持ってきたのか気になったけど、朔はそれ以上言わなかった。


「それにしても、羽瑠。今日の格好、めちゃくちゃ可愛いね!」


シフォン素材のワンピースに短パン、スニーカー。

動きやすさ重視だけど、ちゃんと“デート仕様”にしたつもり。


「ありがとう。一応デートでしょ?」


「そうだね。しっかりデートだ!」


朔は嬉しそうに私の手を引いた。


午前中は普通に楽しんだ。

ジェットコースターで叫んで、コーヒーカップで目を回して。


「まずい、普通に楽しんでた。」


私がそう言うと、朔は肩をすくめて笑った。


「いいじゃん。何もなければそれでいいし。」


その笑顔があまりにも自然で、

“事件のこと”を忘れそうになる。


でも――

朔の背負っている大きめのリュックが、

時々カサッと音を立てるたびに、現実に引き戻された。


彼は“何か”を想定している。

今日、何かが起こる可能性を。


そのことが、胸の奥でじわりと重くなる。



「次さ、あれ行かない?」


朔が楽しそうに指をさす。


人だかりの向こうに、黒い幕で覆われた入口。

中からは、誰かの悲鳴とも笑い声ともつかない音が漏れてきて、足元がそわそわする。




「ねぇ、待って。絶対置いていかないで。」


「置いてかないよ。

ほら、お手をどうぞ。お姫様。」


「ひぃー……暗い!こわい!」


私は思わず朔にぐっと近づく。


「近いね。

なんか俺は違うドキドキ感じるんだけど。」


「そういうのいいから!

ひぃー!!こわっ!!」


暗がりのお化け屋敷。

足元のライトがぼんやり揺れて、影が壁に伸びる。


「朔は平気なの?」


「うん。偽物だし。

お化けより人間のほうが怖いよ。」


「まあ、実害あるのは人だしね……」


そう言った瞬間、

血だらけの人形がカタンと飛び出してきた。


「やっぱりこわい!!」


「はは、羽瑠可愛い。」


朔は笑いながら、私の手をぎゅっと握り返す。

その手が温かくて、怖さが少しだけ薄れた。


でも――

この“偽物の恐怖”の裏で、

本物の危険が近づいているかもしれないと思うと背筋が冷える。


お化け屋敷を出た瞬間、

朔の声が低く落ちた。


「……いるね。」


「え?ほんとに?」


「見ちゃだめ。気づかないふりして……誘きだす。」


「わ、わかった。」


私たちはあえてゆっくり歩き、列に並ぶふりをした。


「そこの角で走るよ。」


「うん。」


朔の合図と同時に、私たちは一気に駆け出した。

背後で、慌てた足音が追いかけてくる。


「追ってきてる。」


「大丈夫。」


朔は落ち着いた声で言い、私の手を引いて物陰へ滑り込む。

息を潜めると、足音が近づいてきた。


――来てる。


鼓動が耳の奥でうるさいほど響く。


そのとき、隣で朔がリュックを開けた。

中から何かを取り出し、ひょいっと軽く投げる。


カラン、と乾いた音がして、

追ってきた影がそちらに向いた瞬間。



ぱん、と小さな破裂音。

白い煙がふわりと広がり、視界が一瞬だけ曇る。


「えっ……!」


相手が戸惑ったその瞬間、

朔は私の前に立ち、腕を伸ばして距離を取らせた。


「羽瑠、下がって。」


煙の向こうで、誰かが咳き込む気配がする。


朔は迷いなく動き、

相手の腕を掴んで地面に押さえつけた――

す、すごい。


「大丈夫、もう動けないようにしてある。」


朔の声は落ち着いていて、

その冷静さに、逆に私の心臓が早鐘を打つ。


煙が薄れ、

倒れた影の輪郭がゆっくりと浮かび上がる。


「……やっぱり、及川だ。」


朔が静かに言った。


私は息を呑む。


あのパン屋の、

いつも優しそうに笑っていたおじさんが――

どうして。


胸の奥が、ぞわりと冷たくなる。


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