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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第8章:セミの音を聞く間もなく
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第1節:印は○かレ点か統一して欲しい

先輩とダニー、そしてケルベロスとお別れをした翌日。僕と沖田先輩はバスに揺られている。

英証行きのバスの中で、佐倉さんに会う際の贈り物の内容を相談しているのだが。


「お嬢様っていつも何を貰ってるのかな」


「超高級品ですよね」


「安心院君は家がお金持ちだし、そういうの詳しいんじゃない」


「それが、贈り物は父への物がほとんどなんですよ。年頃の女性への贈り物に

ついては無知です」


「ん~。私なら魔法に役立つ本とか、道具が嬉しいけど。

 萌香さんは、自分の魔法に自信が無いみたいだったし」


「1つしか異空間を作れないとしても、総合戦の時みたいに複数を移動できる訳ですし。

 単独を装って集団で攻めるとか、使い用はいくらでもあるのに」


「・・・」


ポカンと口を開けたまま沖田先輩は数秒固まってしまった。

理由はよくある、知らなかった1面を見たとかそんなだった。


「安心院君って、魔法の使い方とか考えるの得意なんだね」


「一応幼い時から、教育は受けていますから。戦闘とか相手の魔法の使い道から、次の手を予測するとかはそれなりにできます」


本当にそれなりだけど。


「・・・もっと前から、安心院君と一緒に魔法の勉強したかった」


沖田先輩はため息をつくように言葉を漏らす。僕というより、魔力の知識がある人という意味なのは分かってる。それでも、先輩の言葉に嬉しさを感じる自分がいる。


「まあ、入学当初から先輩と追いかけっこの日々でしたし、一緒に勉強するのは

 難しかったと思いますよ」


「そっか。じゃあ今後なら、私が卒業するまで手伝ってくれる?」


「分かりました」


お互いの話し方が、どこか緩和した気がする。バスが学園の商業施設エリアバス停に到着し、話し合いの結果、ちょっと良い紅茶と魔具の両方をプレゼントする事にした。一族の忍具を使うため、魔力系の道具屋に行くのは初めてだから少しワクワクした。予想通りあるエリアを境に、暗いというか闇のオーラを放つ店が数件並んでいる。店主によって品のラインナップが異なるらしいため、どこが良いのか分からなかったけど、沖田先輩の行きつけの店を訪れた。


「これなんかどうかな」


沖田先輩が選んだのは杖。杖の用途は様々だが、選んだのは近距離でないと発動できない魔法を、遠距離で発動させる用。沖田先輩のは身の丈ほどある大杖だが、これは片手で持てるサイズ。杖に詳しいのだろうか。


「異空間を発動させた場所以外で解除できるし、便利じゃない?」


「良いですね。沖田先輩の杖もここで買ったんですか?」


「うん。魔法をドーム状に発動できる効果があるから、範囲の入った動物を操作できるの」


なるほど。交流会の時に見た大杖の先端は、ドーム状のガラス細工のようなものが装飾されていた。360度に魔法を展開できる仕組みなら、沖田先輩は佐倉さん同様、戦闘とは異なる素質を持っている。杖をプレゼント用に包んで欲しいと頼んだら「うちはオシャレな日用品店じゃない」。と断れた。まあ、後で包み直せばいいかと会計を済ませ、次の目的地に向かう。


「問題は次ですね」


「うん。慎重に選ばないと」


洋風な外装の紅茶店に入ると、さっそく帰りたくなる。オシャレという語彙力しかない自分を恨みたくなるほど、店内は見事にオシャレだった。そしていくつもの紅茶の香りが交差する。気分が悪くなる事はなく、むしろ心が落ち着く。ずっといたいと思えるが、客もまた上品な人ばかりで、場違いな気がするため直ぐに帰りたくなる。


「うーん。いっぱいあって分からないや」


どれにしようかと2人で悩んでいると、明るい店内に不気味なオーラを感知する。


「ヒッヒ。これとこれと、あとこれを」


どこかで会った事あるような、目が隠れるほど長い前髪をした女の子が、一番隅の方にある魔術用茶葉コーナーで品を選んでいる。・・・てか、なんであんな怖い品置いてるんだよ。


「花子さん」


「おや、これはこれは、沖田さん。こんにちは。

 それと・・・あの薬は役に立ちましたか」


「薬?え~っと、あ、あー!」


思い出した。前に先輩と楓と食堂で朝食を食べたときに会った人。

何か訳の分からない薬渡されたのすっかり忘れてた。


「2人とも知り合いだったんだ。薬って何の事?」


「知り合いというか、食堂で会っただけで」


「ご挨拶がまだでしたね。私、田中花子と申します。魔力クラス3年生です。

 安心院殿に渡したのは、失恋薬です。飲めば失恋した気持ちになれます」


「安心院君・・・何に使うつもりだったの。」


「いやいやいや。いきなり渡されたんです。頼んだ訳ではありません。

 何に使うのかなんて、こっちが教えて欲しいです」


「好きな人に飲ませれば、失恋して落ち込みます。そこで貴方が優しく言い寄れば、相手は貴方にイチコロです」


「んな恐ろしい薬どうして作った」


「私の恋の魔薬は定評があるのですよ。あの時も、高西さんに惚れ薬を依頼されまして」


高西という名前に、どこか聞き覚えがあると思い必死で記憶を探った。確か公募行事当選者

だったな。3クラスの親睦を深めるのを建前に、彼氏を作ったんだった。そうか、この田中

先輩に惚れ薬を頼んで、完成したから公募行事は他クラスと合同の内容にしたんだ。


「お役に立たなかったら、別の物と交換しますよ」


「・・・そうだ!花子さん、自分に自信を持てる魔薬とかない?」


「一時的で良いならありますぞ。こちらです」


カバンから明るい黄色の液体が入った小瓶を取り出し、僕が貰った小瓶と交換する。


「では、私はこれで」


背丈より長い服を引きずりながら、田中先輩は去った。

この薬は佐倉さんに合うかもしれない。けれど・・・。


「薬って、喜びますかね」


「安心院君にだよ」


「僕に?」


「今ここで飲んで、自信がある紅茶を選ぶの」


「あー、なるほど。良い案ですね。では」


見た目通り、レモン味のした薬が喉元を通っていくのが分かる。

徐々に自信が漲る。今なら、何でもできそう!!


「ちょっとあっちのコーナー見てきます!」


「こら、走っちゃダメだよ」


数ある棚から、何故か1つの棚に吸い込まれるように足が進んだ。

名前も香りも値段も、確認することないまま会計を済ませ薬が切れた後、領収書から

10万円の数字を目にして発狂した。


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