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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第8章:セミの音を聞く間もなく
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第2節:日本でレモネードはどこで飲めるの

買い物の翌日、再び僕と沖田先輩はバスに揺られる。


「すいません。立て続けにお願いを聞いてもらって」


「いいよ。私も窈窕には1度行ってみたかったし」


昨晩に母から連絡があり、佐倉さんとの面会の許可を取ってくれた。ただし男性1人での入校は禁止のため、最低1人の女性の同行者が必要だった。女子の知り合いは、まあ、0ではない。ただ佐倉さんに会う理由を知るのは沖田先輩のみなので、再び頼むと了承してくれた。


「すっごい。お城みたい!」


英証、窈窕は山奥の世俗から隔離された位置に校舎を構えている。

うちの学校は広大な敷地を確保するのが目的だけど、窈窕の場合は生徒を不用意に外部の人間と接触させない事が目的らしい。エンジンが止まる音の数秒後、僕は手足と目の拘束具を外してもらう。


「魔力D-の何を警戒してるんだか」


「そこまで警戒しなくても良いと思うけど」


窈窕専用のバスが来ると、乗る前に手堅く衣服と荷物を検査された。

武器の一切を取り上げられ、魔力系の人間だかから、魔法封じの拘束具に加え目を拘束された。一行女性の沖田先輩は、金属探知機のみで簡単に乗れた。


「拘束されてた安心院君と話すの、ふふ、ごめん。面白かった」


「これどっちにしろ、沖田先輩と話していなかったら精神おかしくなってましたよ」


「ふふ。行こっか」


門をくぐると、美しい庭園が視界に映る。奥ゆかしい光景を楽しむ前に、可憐な声に名前を呼ばれる。


「随分と早い再会です事。香織くん」


声の主は、先刻同じ戦場の地に立った武力A+の剣士、升園百合さんだった。


「ですね。百合さん」


「そちらは、私の命の恩人である」


「お、沖田美津希です。命の恩人と言われる事は何も」


「貴女が薬師丸先生を連れてきてくださらなければ、私は今ここにいません。

 お礼を伝えず申し訳ありません」


「いえいえいえ!助かったならそれで」


「さて、挨拶も済んだ事ですし、百合さんがここにいる理由は監視ですか」


「ええ。招待された客人ではなく、面会を希望する者はこうして監視を付けるのが規則です。香織くんが来た理由は大方把握していますが、私を通してくだされば手間は省けたのに」


「いやー、百合さんと佐倉さんの関係が分かりませんし、自分の事なので自分が申し立てるのが筋かと」


「そうですか。立派ですね。では、ご案内いたします」


城の中へと案内され、歴史ある建造物や功績を紹介してもらった。ちょっとした校内見学を

楽しんだ後、面会室で佐倉さんが来るのを待つ。・・・再び手足を拘束された状態で。


「・・・ちょっと調べたけど、ここに監視カメラも盗聴器も無いみたいだよ」


「さいですか。流石にプライベートまで完全介入しないみたいですね」


ノックの音がして、礼儀ある作法の下、華やかなドレスを纏い、艶やかな青髪が魅力的な

佐倉さんが現れる。


「お久しぶりでございます。安心院様、沖田様」


あまりに上品な佇まいに、僕らは硬直した。


「できれば、そのー、もうちょい普通にしてもらえませんかね。堅苦しいの苦手で」


「本当?あー疲れた。こういうの私も苦手なのよ」


一気にフラットな話し方になった。まあ、こっちの方が話しやすいからありがたい。


「こちら、安心院君からのプレゼントです」


「僕と沖田先輩と選びました」


「杖・・・日本製ね。材料はヤマブキ、遠距離仕様。私の魔法と関係あるの?」


「異空間を別の場所で発動したり、解除できたりします」


「使う機会があるか分からないけど、ありがと。

 もう1つはお茶かしら・・・ってこれうちの会社が作ってるやつじゃん。

 他のが良かった」


「ちょ、ちょっと安心院君、確認しなかったの。」


「そんな事言われても、薬で選びましたし」


「ま、いいわ。それより安心院が私に用だなんて、交流会の時の事?」


「はい。あの時・・・」


もう1つの魂に関する仔細は伏せながら、他言しないよう頼み込んだ。

魔力系は、自信の能力を秘匿にしたがる傾向にあるため、それを口実になんとか誤魔化した。


「あはは!そんな事を言うためにわざわざ来たんだ。別に言わないわよ。安心院が凄いのなんて周知の事実だし、今更私が話しても意味無いでしょ」


「あの能力に関しては、最高秘匿能力なんですよ」


「分かった分かった。それより大変だったでしょ、男の人がここに来るまでって目も手足も拘束されるって聞いたけど」


「それは・・・ふふ。一緒に来た私も、わら・・・。」


「笑いたいなら、笑っていいですよ」


「あははは!本当に面白かった。」


「ねえねえ。どんなだったの、聞かせて!」


沖田先輩と佐倉さんは談笑を始める。普段お堅い生活を強いられる佐倉さんにとって、今の

時間は理想とした学生らしい時間なのだろう。

30分間と指定された面会は、あっという間に終わり近づくと、唐突に佐倉さんは思いも

よらない提案をしだした。


「ねえ安心院、あんた跡取りは弟がするんでしょ。なら許嫁とかはいないのよね。」


「いませんけど、まさか・・・」


「建前上で良いから、結婚の会合をして欲しい」


「え!?」


「まあ、別に構いませんが。」


「良いの!?」


普段は大人しい沖田先輩が突っ込みキャラへと変わり果てる前に、窈窕は基本外出禁止で

あり、将来を考えた会合目的なら外出できる権限を使えるのを説明する。

奏と扇律さん以外で初めて、知り合いを招待する準備をしなければならなくなるが・・・。

お願いを聞いて貰ってる立場だし、winnwinnといこう。


「わ、私も安心院君の家行ってみたい」


「流石に佐倉さんと一緒では怪しまれるので、後日なら」


「やった!」


「時間ですよ」


百合さんの入室で、面会は終了となる。帰りは再び拘束され、隣で座る沖田先輩の笑い声の

鬱陶しさに耐えながら、帰宅の際にあの人と鉢合わせないための方法を考える。


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