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Fly*Flying*MoonLight  作者: あかし瑞穂
MoonLight*HoneyMoon
83/88

PM4:30 楓のおばあちゃんの家

 その家は、温かい雰囲気に包まれていた。

 壁にかけられた、大きなタぺストリー、木枠の窓に並べられた、ハーブ?のガラス瓶、どっしりとした木の家具。

 ……本当に中世の農家、に来たような、そんな感じだった。


 俺は思わず、ほっとため息をついた。そんな俺を見て、彼女がふふっと笑った。

「ちょっと落ち着かなかったでしょう? ここの村は特殊だから」

「え? そうなの?」

 楓がきょとんとした顔をした。


 ……そうか、楓にとって、この村は『普通』に感じるのか。


「……すみません、どうも場違いな気がして……」

 勧めてくれた椅子に座りながら、俺は本音を明かした。楓が隣に座る。


 彼女が隣の台所に行き、トレイを運んできた。

「そう感じるのが普通よ? あの人もここに来た時、同じような事言ってたわ」

 ……あの人。楓の『おじいちゃん』か。


 俺と楓の前に、木の器とスプーンが置かれた。中に入っているのは……。


「魔法のスープ、ね!」

 楓がうれしそうに叫ぶ。

「さあ、召し上がれ。疲れたでしょう?」

「「……いただきます」」

 俺と楓は、スープを一口飲んだ。

「美味しい! やっぱりおばあちゃんのスープは最高!」

 食欲もあまりなかった楓が、嬉しそうに食べてる。

 ……心に沁みる味。温かさが骨まで伝わってくるような。

 彼女はにこにこ笑いながら、楓を愛おしそうに見ている。


 ……なんだろう。この気持ちは。


 楓が、ここで生き生きすればする程……罪悪感? 焦り?

 訳のわからない感情が、喉にせりあがってくる……。

 俺は、楓と彼女の会話を聞きながら、黙々とスープを平らげた。


 ふーっと楓が息を吐いた。

「美味しかったー!!」

 くすくすと彼女が笑う。

「まあ、大袈裟ね。あなたもこのスープ、作れるじゃない」

「でも、おばあちゃんが作ったのとは違うの!」

 ……楓が、甘えてる。

 まだ見た事のない表情。小さい子が母親に駄々をこねているような。

 ……胸の奥が、ちくり、とした。


 彼女が俺を見て、ふっと微笑んだ。

 ……みんな見抜かれている、そんな気がした。

 彼女が席を立ち、食器を片づけ始めた。俺も立ち上がろうとしたが、お客様は座ってて、と止められた。

「ねえ、和也さん?」

 楓が俺を見る。

「ん?」

「……おばあちゃん、素敵でしょう?」

「……そうだな」

 この家に溢れてる優しさは、俺たちが住んでいる館、と同じ。全てを受け止めてくれるような、そんな安らぎに満ちている。

 ……それは、全て、彼女の力、だ。

「ありがとう、和也さん。私、おばあちゃんに会いたかったんです」

「……そうか……」

 楓の嬉しそうな顔。それが見れただけで……良かった、と思える。


「……楓、和也さん」

 彼女が、何かを手に持って、また戻ってきた。


 ……四角い陶器の、写真立て?


「……ねえ、楓。あなたの両親は、あなたがまだ小さい頃に亡くなってしまって、写真もほとんどない、って言ってたでしょう?」

「う、うん……」

「これはね、あなたが生まれた時の写真。大事に持っていたのだけれど……もう、あなたに渡してもいいと思うわ」

 写真立てを受け取った楓が、びっくりしたような顔をした。


 ……俺も横から覗く。


(……え!?)

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