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Fly*Flying*MoonLight  作者: あかし瑞穂
MoonLight*Short*Story
61/88

マリーSideのStory3

「……あら、楓。すごいパンフレットの量ね」

『これ、みんな受けようと思ってるの』

 楓がパンフレットを広げながら言った。

『短大の就活の先生も、十社やニ十社落ちたくらいで文句言いなさんな~!って……』


 まだまだ就職難が続いているようね。

「楓はどんな仕事をしたいの?」

『えーっと……』

 少し考えながら、楓が言う。

『自分でバリバリ仕事するよりも、誰かをサポートする方が向いてると思うから、事務職がいいなって……』


『できれば、ここから通うのに便利な会社がいいの。この家、結構手入れが大変だから、できるだけ家にいる時間が取れる会社がいいな』

「そう……」

 水晶玉の向こうで、楓がまたいろいろと資料を見てる。


 ……あら?


「ねえ、楓? あなたが今、手に持ってるパンフレットは?」

『これ?』

 グリーンをベースにした、センスのいいデザイン。

『ここの社長さんって、まだ二十代なんだって。大学在学中に立ち上げた、ネット通販が大ヒットして、今の会社の基礎になったって……』


 ……S・I・コーポレーション。


『ここなら、うちからも近いし、結構いいかなって……』



 ――これだ。



 ……楓の未来に映った男の子。あの子はここにいる。

 私は、ゆっくりと楓に言った。

「ねえ、楓? この会社、あなたに向いてると思うわよ?」

『そうなの? おばあちゃん』

「まあ、履歴書出してみなさいな。きっといい結果がでると思うわ」

『うん、そうする! おばあちゃんの未来予知ってすごく当たるものね!』

 楓が笑いながら答えた。


***


『おばあちゃん! 内定もらったわ!』

 興奮した声が水晶玉から響く。

「そう、良かったわねえ」

 私はにっこりと微笑んだ。

『おばあちゃんの未来予知ってすごいわね! もう十五社落ちてたから、だめかもって思ったんだけど……』

 ふふっと笑みがこぼれた。

 ……私の『読み』が正しければ、多分楓はノーチェックで合格したはず。


 何故なら……

 ……あの男の子、は楓に会いたがっていたから。


(ここから先は、当人同士の問題ね……)


「おめでとう、楓。来年からは社会人ね」

『ありがとう、おばあちゃん。私、一生懸命働くね』

 おばあちゃんから教わった、ハーブの化粧品とかも作って売るけど、と楓が付け足した。

「きっと、この会社でいい事があると思うわよ?」

『本当? おばあちゃんがそう言ってくれるなんて、すっごく楽しみ!』

 楓がうれしそうに笑った。


 

 ……ねえ、あなた。

 どうやら、私たちの宝物は、運命の交差点に差し掛かったようですよ?


 後は……二人がどう動くか、どう思うか、によるのでしょうけど。


 ……私のおせっかいも、ここまでね。


 私は笑いながら、楓に言った。

「大丈夫よ、楓。あなたは、あの人と私の自慢の孫なんだから」

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