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Fly*Flying*MoonLight  作者: あかし瑞穂
次の日
11/88

AM6:00 食堂

「……いい匂い、だな」

 きっかり六時に和也さんが現れた。薄いブルーのワイシャツに、黒っぽいスラックス。第二ボタンまで外してるから、くだけた感じがした。


「そこのテーブルにどうぞ。洋食ですけど……」

 和也さんが椅子に座る。焼け立てのパンにマーガリン、ミネストローネ、サラダを置いた。

「飲み物はコーヒーでいいですか?」

 和也さんが頷いた。

「……ブラックで頼む」

 こぽこぽ……とコーヒーをカップに入れて、和也さんの右手に置く。

 

 和也さんの向かいの椅子に座って、

「……いただきます」

と手を合わせた。和也さんも手を合わせてる。


 パンをちぎって、一口食べた和也さんが目を見開いた。

「……美味いな、これ」

「……ありがとうございます。ここの庭で採れたハーブ入りのパンなんです」

 私もパンをかじる。ほんのり甘くて、やわらかい。噛めば噛むほど、味に深みが増すパンだ。


「それから、このスープは、おばあちゃん直伝の『魔法のスープ』なんです」

 和也さんが、じっとスープを見た。

「ミネストローネですけど……隠し味があるんです」

 銀のスプーンで、和也さんが一口、具沢山のスープを食べた。

「……」

「私が病気をしたり、元気がない時に、いつもこのスープを作ってくれてたんです」

「……」

「『これは魔法のスープよ。飲むと元気になるの』っていうのが、祖母の口癖でした」

 ……和也さんは黙ったまま、だ。

ふっと顔をあげると……和也さんの目が少し、潤んでいるような、気がした。


「……和也さん?」

 和也さんは、右手でちょっと目頭を押さえて、こう言った。

「……少し、湯気が目にしみただけだ。確かに、これも美味い」

 私もスープを食べて、サラダをパンにはさんでサンドウィッチ風にした。

(うん、こうして食べてもおいしいなあ……)

さすが、おばあちゃんの庭。ハーブも野菜も、栄養満点ですごくおいしくできる。


 和也さんは黙々と食べてる。


(……よく考えると、変な光景なのよね……)

――まさか、自分の会社の社長と、この館で、朝ごはん一緒に食べることになろうとは。


 ……耳を澄ます。警告音は何も聞こえない。

(……やっぱり、この人、館に認められてる)

 同じ血筋ってわけでもないのに、そんな事あるのかなあ。あとで、おばあちゃんに聞いてみよう。


 そんな事を思いながら、私も朝ごはんを味わった。

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