↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/10

【04】 説教と「浮遊物」の烙印

今度は係員がやってきて

爽香を叱りつけた。


係員「デビューして3節目でもうフライングか、お前は何を考えて走っているんだ! 自分のことしか考えてないんだろう! 養成所でフライング事故がどんなに重大な罪か習わなかったのか?」


しばらく沈黙が続いた。


係員「習わなかったか? と聞いているんだ」


爽香「習いました」


爽香が小さく答えた。


係員「えっ? 聞こえない!」


爽香「習いました!!!」


爽香が大声で言った。


係員「あれが見えないのか?」


係員が壁に貼ってある紙を指さした。

そこには『今日も無事故完走』と書かれていた。


係員「あれが見えないのか!!!」


係員が今度は大声で怒鳴りつけた。


爽香「見えます!!!」


爽香も大声で答えた。


係員「お前はあれも見えないぐらいだから、大時計も見えないんだよ!」


爽香の目に涙が溜まってきた。


係員「フライングしたらまずお客様に迷惑がかかる。返還金作業で事務に支障をきたす。そして何より売上がなくなったらこの仕組み、この組織が崩壊してしまうんだよ。関係者への給与、お前達の賞金、学校関係・福祉関係への寄付金、誰が払うんだ。お前がフライングするたびに、お前が1千万円2千万円出してくれるのか? はぁっ?」


爽香は下を向いたまま

涙が床へと落ちた。


係員からの説教は

その後も延々と続いた。


説教が終わり通路を歩いていると

誰かが爽香の横を通り過ぎた。


その瞬間だった。


選手「フライングしたら浮遊物なんだよ。お前なんかさっさと消えろ」


と、罵声を浴びせられた。


そう言ったのは、

爽香がフライングしたレースで

2番手を走っていた男子レーサーだった。


爽香は、そのレーサーが手に持っていた

ヘルメットの色と模様でそのことに気付いた。


爽香(あたしは浮遊物か……)


爽香は呆然となった。

返す言葉もなく、

深く、深く落ち込んで行った。


爽香(そうか、あのヘルメットの振り方は『お前はフライングしたからコースアウトしろ』って意味だったんだ。2番手レーサーにとっては、フライングしたあたしが邪魔だものね。あたしが、どかないといけなかったんだ。もっともその前に『5号艇失格』の放送に気付き、自ら航走を外へと変えなくてはいけないのに。あたし、何やってんだろう……)


爽香(3節走ってすべて最下位、賞金ゼロ、おまけに周りのみんなに迷惑をかけて……、浮遊物かぁ~、ほんと、あたしは浮遊物なのかも知れない。ボートレーサーに向いてないのかな? 誰かが『浮き草稼業』と言ってたけれど『浮き草稼業』とはよく言ったものね。ボートレーサーになっていなければ、こんな辛いことを経験しなくて済んだのに)


目に涙が浮かんできた。

思わず爽香は上を見た。

その涙がこぼれ落ちないように。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。