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【四年生・七月】 第八話「西日の門とぬるめのお茶」
工場の空調設備が酷いことになっていて、汗ダクダクで仕事をする羽目になっている。
1時間に1回は水分補給に外に出ないとぶっ倒れちまう。俺のような多汗症には少々厳しい季節で、
薫風爽やかなんて言ってみたいものだ。
もっとも、梅雨が明けた分、不快指数はそれほどでもないし、砂漠で油田を掘っている作業員からすれば随分ましだろう。
蝉鳴きやまぬ道を、今日もきつかったと思いながら身体を引きずって帰ると、勝太郎がアパートの門に寄りかかって立っていた。
西日に照らされた門の、錆びた鉄の匂いが鼻をつく。
「お前、どうしたんだ? 天体観測にはまだ早いんじゃないのか?」
「なんだか急に寂しくなって、お父さんを待ってた」
珍妙なことを言う。
寂しいから親を外で待つという発想が、変わっているとは思ったが、疲労困憊の俺はそれ以上考えることもなく、
「そうか」
とだけ言ってなかに入る。
「ほら、早くぬるめのお茶を淹れろ。もう限界だ」
ひとっ風呂浴びて、扇風機の前に座り込む。
ようやく人間に戻った気がした。
ふと見ると、勝太郎が湯呑を持ったまま、まだ立っている。
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
そう言って、勝太郎はいつもの顔に戻った。
外では、まだ蝉だけが鳴いていた。




