第五話「一族の器用さと二番目の失敗」
確かに俺の子に似合わず、勝太郎は手先が器用で機転が利く。
もっとも、親父も昔は絵をやっていたし、日曜大工などは一通りこなしていた。
兄貴に至ってはさらに上を行く器用さで、しかも凝り性だった。
料理にハマれば調理師免許を取り、彫刻にハマれば観音菩薩を彫り上げるような男だった。
そう考えると、一族の中で俺だけが突出して不器用だった。
靴紐が結べるようになったのは中学に入ってからだし、折り鶴が折れるようになったのは30を過ぎてからだ。勝太郎の器用さや要領の良さは、どう考えてもお袋の血の方が濃い。
お袋は幼稚園の教師を長くやっていた人間で、幼児教育には一家言あった。
出来が良かろうが悪かろうが、とにかく褒めて育てる。そういうやり方だ。
その教育で失敗したのは、自分の二番目の子育てだけだ。
子供心にも色々教えられた記憶はあるが、あまりの不器用さに嫌気が差したのか、お袋は途中から何も言わなくなった。褒められた記憶もほとんどない。
ただ思うのは、あそこで踏ん張って教えられていたら、俺も勝太郎くらいには器用になっていたのかもしれないということだ。
結局のところ、子育てというのは難しい。
俺には厳しかったお袋だが、不思議なことに、孫の前では俺の悪口を一度も言わなかった。
親父もお袋も、勝太郎に俺の事を絶対に悪く言わなかった。
普段家にいなかった俺だが、それでも日本一の男だと褒めてくれていたようだ。
何の日本一かわからない。
親が亡くなってからそのことを知ると、申し訳なさに涙がこぼれる。




