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Dad Told Me  作者: 司馬少少
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第三十話「二枚のハンカチと男の精神」

勝太郎に「お父さん、お誕生日おめでとう」と言われ、プレゼントを渡された。

プレゼントと言っても、元を辿れば俺の金だ。ありがたみは薄いし、この歳になると誕生日など、残りの人生を逆算する日でしかないから、嬉しくも何ともない。


一応、形ばかりの礼を言って包みを開けると、なかからハンカチが2枚出てきた。

指先に触れる、少しゴワついた刺繍ししゅうの感触。

一枚には笑った太陽の刺繍に「ファイト」

もう一枚には笑った花に「ガッツ」

お前はどこまで俺を戦わせる気だ。


思わずにやりとしたが、それよりも刺繍の出来に驚いた。

いつの間に、ここまで器用になっていたのか。

編み物まで始めたらさすがに止めるが、手芸程度なら我慢してやる。

聞けば、大家の坂口の婆さんに手ほどきを受けたらしい。火炎瓶の作り方でも仕込まれたら一大事だが、刺繍ならば実害はあるまい。


正直なところ、余計な装飾のないハンカチの方が使いやすいのだが、そこは黙っておくことにした。

そのとき、ふと勝太郎の誕生日のことを思い出した。

あいつの誕生日は、俺と同じ日だ。


正確な出生日が分からなかったので、便宜上、俺の日に合わせただけなのだが、勝太郎は「偶然の一致ってあるんだね」と妙に喜んでいた。


「お前、何か欲しいものはあるか」

少し考えた末、勝太郎は言った。

「弟が欲しい」

「無理だ」

「じゃあ、妹でもいい」

「だから無理だ。俺一人で作れるわけがないだろう」


大体、ハンカチ2枚で兄弟を釣ろうという発想が図々(ずうずう)しい。

勝太郎がまた考え込み始めたので、まさか坂口の婆さんに交渉しに行くんじゃないだろうなと焦った。俺は年上好みだが、あそこまでいくと限度を超えている。

万が一、あちら様がその気にでもなったらどうするつもりだ。


結局「特にない」とのことだったので、俺はノートを1冊渡した。

「男の精神」と題し、俺が理想とする男の行動・思考・生活を書き連ねたものだ。

勝太郎はぱらぱらとめくってから、「ありがとう」と言った。

「うむ、しっかり読み込み、立派な男になるんだぞ」


それにしても親子揃って、金のかからない誕生日プレゼントだった。

勝太郎はその夜、「男の精神」を枕元に置いて寝た。

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