第二十九話「13人目の謎と特製キャンデー」
そして、この厄災は次の日も続いた。どこまでこの下らない行事は、俺の懐を痛めつけるつもりなのか。勝太郎が言うには、持ち帰ったチョコレートは俺の数えた通り12個なのだが、「勝っちゃんにあげた」と言い張る女子が13人も現れたというのだ。
久しぶりに大声を上げて叱った。
「誰から貰ったかぐらい、把握しておかないと駄目に決まっているだろう! 小学四年生にもなってそんなこともわからんのか」
「僕、机と靴箱に入ってたのを持ってきただけだから……本当にわからないんだ。名前も書いてなかったし。確実な人は二人しかいないんだよ」
大概面倒になってきたので、もうどうでもよくなったが、勝太郎は弱り切った顔で続けた。
「女の子同士で喧嘩が始まっちゃって……それで結論は、僕が悪いってことになったんだ」
人間関係を構築するはずの贈答品が、なぜ人間関係の秩序を崩壊させるのか。
しばらく考えていたが、事態が好転するわけでもなし、またベーカリー高田に買いに行かせた。
今度は馬鹿馬鹿しいので、ついて行かなかった。
俺も今度は油断せず、帰宅した勝太郎が買ってきたマシュマロを確認したが、一つだけマシュマロではなくキャンデーが混ざっている。
これはどういうわけかと聞けば、さおりちゃんが「みんなと同じじゃ嫌だ」と耳打ちしたから、彼女の分だけはキャンデーにしたという。
レシートを見ると、キャンデーの方が安い。
「さおりちゃんはお前を庇ってくれたんだろう。それなのに安いものを買ってくるとはどういう根性だ! あの子にはもっと高いキャンデーを買ってきてやれ。取り替えてもらうんだからレシート忘れるなよ」
俺は再度、財布から金を渡した。
本当に嫌になったが、勝太郎も相当懲りたろう。
まさかあいつ、苛められているんじゃないだろうな。
だとしたら相当、質が悪い。勝太郎本人だけでなく、親の俺までも陰鬱な気持ちにさせやがる。
二十世紀の苛めは、こんなに手は込んでいなかった。
俺は朝日新聞の投書欄に「下らない行事を学校に持ち込むのは如何なものか」と投稿するため、机の前に座った。本当に勝太郎は手のかかる、親不孝な子供だ。




