第二十二話「胡瓜(きゅうり)のメロンと無頼(ぶらい)のワンカートン」
勝太郎が「サンタクロースは、今年は何を持ってきてくれるのかな?」と言って、俺の顔を見た。
小学生にもなって何を言っているんだろう。
薄々感じてはいたが、こいつ、少し馬鹿なのかもしれん。
「金が無いから、サンタが今年はパスだと言っていた」
「そんなに高いものじゃないんだけどな。一応、頼むだけ頼んでみようと思うんだ」
「何が欲しいんだ?」
「手紙を書いて枕元に置いておくよ」
当然の経路の如くだらだらと話を続ける倅に苛々が募る。
「俺がサンタだからさっさと言え!」
ラジコンと言われたが即却下した。
「じゃあテレビ」
「金が無いと言っているだろう。それに、テレビからは子供の成長を阻害する有害な電波が出ているのを知らんのか!」
「じゃあ、メロン」
「胡瓜に砂糖を煮詰めたキャラメルを塗って食え」
がっかりした顔を見て、少しだけ可哀想になった。
「他に何か無いのか?」
「じゃあ、セブンスター・ワンカートン」
小学生の分際で、親の前で堂々と喫煙を宣言するとは。
早熟を通り越して無頼の域だ。
意趣返しだとすれば、相当に根性がねじ曲がっている。
俺は反射的に手を振り上げ、勝太郎の頭を「パチン」と小気味よい音を立てて張り飛ばした。
「煙草なんてどうするんだ!」
「いちいち叩かないでも、口で言えばわかるのに。野蛮だよ。煙草は父さんに売るのさ」
なるほど、そう来たか。
次の日、煙草をワンカートン買って、枕元に置いてやった。
しばらく節煙する日々が始まる。




