2/29
第二話「理解不能な足の裏」
大家の坂口の婆さんから『写ルンです』を借りた勝太郎は、なぜか俺ばかりを撮る。
最初の二、三枚はポーズを取っていたが、子供の遊びに付き合っている暇は無いので、
「タマ(猫)でも撮ってろ」
と言っているのに、図に乗って、
「足の裏を撮らせて」
と言い出す。
それから毎月二回、勝太郎は決まって俺の足の裏の写真を撮るようになった。
忘れたことは一度もない。
福永法源先生のようになりたいのだろうか。
親の俺でも倅の考えていることは理解できないのだから、学校の先生の苦労は並大抵のものではないのだろう。
俺にそっくりなら何の遠慮もしないのだが、
「男の子のような女の子に似ていますね」
と、賛辞か侮辱か分からんことを他人様から言われるくらい、倅は女房に顔がよく似ている。
ファインダー越しにこちらを見る勝太郎の瞳が、ふとした瞬間に女房のそれと重なり、俺は突き上げられるような居心地の悪さを感じる。
だから、なかなか叱りたくても叱れん。
確かに教育というものは、一筋縄ではいかん。




