【四年生・九月】 第十三話「運動会の知らせと大家さんの重箱」
ようやく猛暑も収まって過ごしやすい季節になったと喜んでいたら、勝太郎が運動会の知らせを持ってきた。
「この日、お父さん来れる?」
と言われたが、正直、他の生徒のご不兄と顔を合わせたくない。
親が原因で子供が苛められでもしたら、立つ瀬がない。
「その日は残念だがバイトがあるなあ」と婉曲に断ると、あからさまな落胆の顔を見せる。
「別に、クラス別の対抗リレーに、お前が代表で出るわけじゃないだろう?」
「出れば、お父さん来てくれるの?」
おいおい、お前。寝技を使って代表選手を代わってもらおうとするんじゃないだろうな。
余計なことを言うんじゃなかったと後悔し、俺は話をそらした。
「父兄が来られない場合、お弁当の時間はどうするんだ?」
「先生と一緒に食べるんだよ」
うーむ、それで構わんと思うが、一丁前にため息なんぞつきやがるから「ちょっと待ってろ」と言い捨てて外に出た。
こういうときは婆さんだ。
夕暮れの少し冷え始めた風に背中を押されるように、大家の部屋へ向かった。
最初は怪訝な顔をしていたが、「勝太郎の運動会に出席してくれませんか」と頼むと、散々もったいぶってから了承してくれた。
どうせ一年中暇であちこちの寄り合いに顔を出し、爪弾きにされているのだろうから、地元の祭りともいえる運動会に出て、子供が頑張っている姿を応援するほうが、本人にとってもどれだけましかわかるまい。
当日、いそいそと重箱を持って出かける婆さんと勝太郎を見送ってから、俺もバイトに出かけた。
夕方帰宅すると、勝太郎が婆さんの部屋で体操着を着替えもしないであれこれ喋っていて、色とりどりのリボンを誇らしげに見せてきた。




