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308.【丘の上の安息と守護者の労働】

戦闘の熱が引いたシーバブルに、重苦しい静寂と波の音だけが戻ってきた。アリスは自力で立つのがやっとの状態で、イーグルの左肩からは未だに血が滲み続けている。

「……アストラル・ノアのBARまで戻るのは、今の俺たちには骨が折れる。アリス、動けるか?」

「……ちょっと、膝が笑ってるッスね。力、使い果たしちゃったみたいで……」

 満身創痍の二人を見かねて、破片を握りしめたシスターが静かに声をかけた。

「せめて今夜だけでも、丘の上の教会で休んでいってください。そこなら水没を免れていますし、手当てのための薬草も備蓄があります」

 シスターの計らいにより、一行は街を見下ろす小高い丘へと移動した。

 急な坂道を、シスターがアリスの肩を貸し、シルクがイーグルの無事な方の腕を支えてゆっくりと登っていく。

 一方、眼下の街では――。

「……よし、そこだ。もっと奥まで瓦礫をどかせ」

 イーグルの非情な「指示」に従い、藍色のドラゴンが泥水の中で巨体を揺らしていた。

 ドラゴンはその強靭な前足で、倒壊した建物の柱を一本ずつ丁寧に抜き取り、溢れ出した海水を巨大な翼の羽ばたきで強引に沖へと押し戻していく。かつての伝説の守護者が、今は完全に「土木作業員」と化していた。

『……解せぬ。我は輝石を浄化し、世界の調和を保つために来たのであって、人間の街の復興まで協力する羽目になるとは……』

 ドラゴンが恨みがましく丘の上を仰ぎ見る。そこでは、教会のテラスで椅子に深く腰掛けたイーグルが、包帯を巻かれながら冷めた視線を投げ返していた。

「お前の『浄化の息』でトドメを刺したんだから、仕方ねぇだろ。文句があるなら、元の半壊状態まで巻き戻してから言え」

『……無茶を言うな』

「あー、クソ。肩が痛てぇ。シルク、悪いがもう少しきつく縛っておいてくれ」

 イーグルが悪態をつきながら顔を歪めると、シルクは困ったように微笑みながら、慣れない手つきで包帯を整えた。

夜の帳が下りるシーバブル。

月明かりに照らされた瓦礫の山で、唸り声を上げながら働くドラゴンの影と、教会の窓から漏れる温かな灯火が、奇妙な対照をなしていた。

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