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307.【壊滅の余波と浄化の代償】

爆轟が去り、静寂が街を包み込む中、アリスがゆっくりと目を開けた。崩れた瓦礫の隙間から差し込む光に目を細め、彼女は真っ先に周囲を見渡した。

「……妖精さんは? あの、うるさい光の粒はどこッスか?」

 その問いに、肩の傷を押さえたイーグルは何も答えず、ただ静かに視線を足元の濁った水面へと落とした。そこには、灰が溶け去った跡さえ残っていない。アリスはその表情だけで、全てを悟った。彼女は小さく唇を噛み締め、それ以上は何も聞かなかった。

 そこへ、水没した路地の奥から一人のシスターが、ふらつく足取りで現れた。彼女はこの街の教会で、イーグルたちの到着を待っていたはずの人物だった。

「ああ……女神ケトリアス様……」

 シスターは地面に散らばった、黒曜石の無惨な破片を涙ながらに拾い集めた。

「……洗脳されていた間も、意識はどこか遠くで繋がっていました。あなたが、この破片で私達を救ってくれたことも……」

 イーグルは鼻で笑い、水底に沈んでいた『藍色の輝石』を拾い上げた。女王の肉片がこびりつき、不気味に濁った光を放っている。

「おい、トカゲ。こいつを浄化しろ。肉片付きじゃBARには置けねぇ」

 ドラゴンの巨躯がイーグルの前に降り立つ。

『ふむ。浄化か……承知した。本来の輝きを戻してやろう』

 ドラゴンが深く息を吸い込み、輝石に向かって渾身の「浄化の吐息」を吹きかけた。

 ――ゴォォォォォオオオオンッ!!!

 それは浄化というより、物理的な暴風だった。輝石の汚れは一瞬で消し飛んだが、その余波で近くの半壊していた民家や積み重なった瓦礫までが、木の葉のように空方へ吹き飛ばされていく。

「……あ、やりすぎた」

 ドラゴンがバツが悪そうに首を竦める。

「……おい。街が半壊から『全壊』になったな。これ、直せんのか?」

 呆れ果てたイーグルの言葉に、シーバブルの住民たちは呆然と立ち尽くした。

『ううむ……、仕方ない。これを直す労力を、追加の「報酬」とするのでは駄目か?』

「はっ? テメェの息でトドメ刺したんだろうが。街の修復はテメェの不始末だ。報酬はまた別でキッチリ貰うぞ。……まずは、そのシスターに壊した女神像の慰謝料を払うのが先だな」

 夕闇の迫るシーバブル。守護者と何でも屋の、締まりのない、しかしどこか穏やかな交渉の声が、瓦礫の山に響き渡っていた。

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