306.【破裂の閃光と守護者の終焉】
急降下するドラゴンの背から、シルクが身を乗り出すようにして叫んだ。
「イーグルさん! これを使ってください!」
シルクの手から放り投げられたのは、彼女が大切に鞄の底にしまっていた最後の一つ――フェネカ特製の『破裂石』だった。放物線を描いて落ちてくる無骨な石の塊を、イーグルは負傷していない右腕で見事に掴み取る。
『ギ、ガァァァアアアッ!!』
女王の腹部の巨大な「口」に、藍色の魔力が極大まで圧縮される。周囲の海水が渦を巻き、全てを消し飛ばす断罪の光が放たれようとした、その刹那。
「……あばよ、女王。お望みの『輝き』をくれてやるぜ」
イーグルは渾身の力を込め、点火した破裂石を、大きく開かれた女王の腹部の暗黒へと叩き込んだ。
石は魔力の奔流が渦巻く喉奥へと吸い込まれ――直後、内側から凄まじい衝撃が爆発した。
――カァァァァァッッ!!!
耳を劈く爆音と共に、女王の腹部が内側から弾け飛ぶ。フェネカの試作品である破裂石の魔力暴走と、女王が溜め込んでいた極大の藍色の魔力が連鎖反応を起こしたのだ。
「グ、ガ……ッ!? あ、あぁぁぁ……ッ!!」
狂気に満ちた悲鳴を上げる間もなく、女王の三メートルを超える巨躯は、眩い閃光の中に飲み込まれていく。
絶縁の鱗も、強靭な二本の脚も、肘から生えた異形の腕も。内側から噴き出した破壊のエネルギーに耐えられるはずもなく、肉体は無数の肉片へと変わり、シーバブルの濁った海水の中へと四散していった。
爆風が収まり、静寂が戻る。
そこには、額の『藍色の輝石』だけが力なく水底へと沈んでいく光景と、肩で息をするイーグルの姿だけが残されていた。




