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302.【藍の狂乱と深淵の変貌】

親衛隊が無残な肉塊へと変えられていく様を、人魚の女王は信じられないものを見るかのように凝視していた。しかし、最側近たちが全滅した瞬間、彼女の瞳から理性が消え、ドス黒い渇望が燃え上がる。

「あぁ……、足りない。もっと……もっと力が……ッ!!」

 女王は震える手で、杖の頭に鎮座していた『藍色の輝石』をひったくると、それを自らの胸元へと強引に叩き込んだ。

 ――ドクンッ!!

 大気を震わせる不気味な鼓動。直後、彼女の体から藍色の魔力が奔流となって溢れ出し、周囲の海水を飲み込みながら膨張を始めた。

「魔力が、溢れ出してくる……ッ! あはははは!!」

 メキメキと嫌な音を立てて骨格が歪み、再構築されていく。

 美しかった女王の顔は見る影もなく、湿った鱗に覆われ、深海魚のアンコウを思わせる醜悪な大口へと裂けた。額には取り込んだ輝石が剥き出しのまま埋まり、どろりとした藍色の光を放っている。

 変貌は止まらない。

 体躯は一気に3メートルを超え、背中からは腐った膜のような翼が突き出し、魚の尾だった下半身は強靭なトカゲの如き二本足へと分かれた。丸太のように太くなった二本の腕。その肘からは、さらに補助的な別の腕が不気味に生い茂る。

「……ありゃあ、もう人魚じゃねぇな。ただの化け物だ」

 イーグルがリボルバーを構え直し、冷ややかに言い放つ。目の前に君臨したのは、海と陸の生物を悪趣味に継ぎ接ぎしたような、輝石の暴走が産んだ「深淵の怪物」だった。

「グォォォォォオオオンッ!!」

 女王だった怪物が、かつての歌声とは似ても似つかない、地響きのような雄叫びを上げる。その衝撃波だけで周囲の建物の窓ガラスが粉々に砕け散った。

「……関係、ない。お前だけは、殺す……!」

 2メートル超の巨躯となったアリスが、地を這うような低い声で応じる。

 復讐に燃えるオーガの闘争本能と、輝石に呑まれた人魚の狂気。

 水没したシーバブルの街で、規格外の「暴力」と「魔力」が真っ向から激突しようとしていた。

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