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冒険者の万華鏡  作者: 佐々木尽左
第34章 冒険者ギルドの手伝い

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冒険者ギルドの講習の契約

 魔物を引き寄せる体質を見せるため、ユウとトリスタンはアーロンとジェイクの2人と夜明けの森へと向かった。そこで実際にどのような体質なのかを披露したところ、実戦実習の教官としてやっていけるという目処が立つ。


 報酬が安いと言われたことでトリスタンは渋ったが、知り合いの話を聞いて後輩の役に立ちたいと思ったユウが説得して承知させた。これにより、冒険者ギルドの講習の仕事をすることになる。


 夕方、1日の魔物狩りを終えたユウたち4人は夜明けの森から出た。他の冒険者たちと同じように買取カウンターへと向かう。そうして魔物の討伐証明部位を換金した。その金銭を4分割する。


「結構狩ったとは思ったが、銅貨5枚か。4人で分けてこれだと全部で20枚分だな」


「講習をしてもらうときはもうちょい浅めの場所にしてもらう必要があるかな?」


 手のひらに載せた銅貨を見ながらアーロンが独りごちると、ジェイクが首を傾げた。それを見たユウが話しかける。


「徐々に入っていくから、ちょうど良いところで講習をすれば良いんじゃないかな」


「だな。その辺は任せるぜ!」


「ユウ、一応オレたちに引き受けるという約束はしたけど、ギルドと正式な契約を結ぶ必要があるから、明日受付カウンターで手続きをしてくれないか。さすがに口約束だけっていうのはね」


 ジェイクからの指示にユウはうなずいた。さすがに組織の仕事を個人同士の約束だけで任せるわけにはいかない。契約関係は結んでおく必要があった。


 言うべきことを伝え終わるとアーロンが声を上げる。


「よっしゃ、それじゃ今日はこれで終わりだな。解散だ!」


「あれ、飲みに行くんじゃないんですか?」


「オレとジェイクはこのあともうちょい仕事があるんだ。お前たちの手続き関係でな」


「なるほど。それはやってもらわないと困りますね」


「ということで、飲みに行くのはまた今度にしようぜ!」


 明るく振る舞うアーロンはジェイクに声をかけると冒険者ギルド城外支所の中に入って行った。それを見送ったユウとトリスタンも歩き始める。


 白い息を吐きながら2人は貧者の道へと入った。人の流れに乗ると雑談をしながら安酒場街を目指した。




 翌日、ユウとトリスタンは冒険者ギルド城外支所に向かった。冒険者ギルドの仕事を引き受けるための契約を結ぶためだ。


 城外支所の建物に入ると往来する冒険者たちの間を縫って進み、行列のない受付カウンターの前に立った。いつも通り頬杖を付いた受付係が目を向けてくる。


「おはようございます、レセップさん。アーロンとジェイクから冒険者ギルドの仕事をするための契約を結ぶように言われたので来ました」


「別にこんなの受けなくてもお前らならやっていけるだろうに」


「生活費の心配をしなくても良いという意味ならそうですけれど、ちょっと後輩の役に立ってみようかなって思ったんです。最近、知り合いと食べたときにそんな話になったんで」


「ご立派なことだな。他のものぐさな連中にも聞かせてやりてぇ言葉だ」


「人手不足だって聞いていましたけれど、もしかしてあまり求められていないんですか?」


「この冬に教導の希望者が急に増えたから必要なのは間違いねぇよ。ただ、こういう講習の講師や教官は大体引退したヤツや食えない連中がなるもんだからな。お前みたいにキラッキラな理由で引き受けるのは珍しいって話だ」


「場違いなわけですか、僕」


「まぁ、アーロンとジェイクから頼まれたってんなら断れないのも仕方ねぇがな」


「僕たちの場合、直接の知り合いに後輩と呼べる冒険者がいないから引き受けたというのもあるんですよ。クリフやエディたちは知り合いの面倒を見るために合同パーティを結成するって話していましたから」


「だから引き受けたのか。まぁいい、ちょっと待ってろ」


 立ち上がったレセップが踵を返した。それと同時にトリスタンがユウに声をかける。


「なんか、微妙な仕事っぽいな」


「城外支所の仕事なんだからそんなものじゃないかな。良い仕事があったら町の中の本部に取り上げられてると思うよ」


「それもそうか」


「ただ、昨日アーロンたちが言っていたけれど、必要な仕事なのは違いないよ。競争相手が多すぎると困るけれど、逆に少ないと魔物の間引き期間なんかに困るから」


「そのための人間は育てないといけないってことか」


「うん。駆け出しの頃は特に挫折したり潰れたりしやすいから注意が必要だと思う。僕はアーロンたちがいたから平気だったけれど、トリスタンはどうだったの?」


「あーうん、なかなかひどかったな。右も左もわからなかった状態だし。幸い、早い段階で相棒に出会えたから何とかなったが」


 そこまでしゃべったトリスタンが言葉を濁した。それでユウも思い出す。初めて出会ったときのことをだ。


 職場の奥へと姿を消していたレセップが戻って来た。2枚の羊皮紙を受付カウンターに置いてユウとトリスタンへと顔を向ける。


「それじゃ、説明するぞ。お前ら2人が今から契約するのは、初心者講習、戦闘講習、実戦実習の3つだ。アーロンとジェイクから頼まれたのは実戦実習だけだが、原則としてこの3つはひとまとめに契約することになっている」


「どうしてですか?」


「人にものを教えられないのに教官なんてできないからだ。だから、まずは初心者講習と戦闘講習をやって人に教えられることを証明しろ。実戦実習の教官はその後だ」


 受付カウンターを指で軽く叩きながらレセップが2人に説明を始めた。その話を聞いたユウは首を傾げる。初心者講習の説明がユウの記憶と異なるからだ。


 説明が一区切り付いたところでユウがレセップに疑問をぶつける。


「レセップさん、初心者講習ってもしかして、夜明けの森と獣の森で別々にあるんですか? そうなると、僕は獣の森の方の講習しか受けたことがないですけれど」


「あれ、ややこしいよな。今の初心者講習はほとんどが獣の森に関してのものばかりだ。貧民に関しては仲間から聞くから規則や罰則はまず知ってるんだが、町の中から出てきた連中はその辺の環境がまったくないからな」


「夜明けの森の方はどうなっているんですか?」


「よその町から流れ着いてきたパーティのためにある。この町出身の冒険者なら大抵先輩から話を聞くか、それとも先輩のパーティに入るから自然と規則を覚えられるからな。ただ、流れ着いた連中も冒険者だ、大抵は酒場で酒を奢ってその辺の連中に話を聞く。だから夜明けの森の初心者講習は開店休業状態なんだ」


「ということは、初心者講習で教えるのは獣の森についてですか?」


「今は事実上そうなる」


 うなずくレセップを見たユウはトリスタンに顔を向けた。この町出身ではないので獣の森で活動したことがない。


 微妙な表情のトリスタンがレセップに疑問をぶつける。


「俺は獣の森で活動したことはないぞ」


「知ってる。だから戦闘講習で頑張れ。そっちだったらできるだろ」


「ああ、それならいける。特に剣なら任せてくれ」


「だったらいい。流れとしてはジェイクに付いて初心者講習と戦闘講習を教え、その後にアーロンの下で駆け出しの連中の面倒を見る感じだな」


 おおよその流れは事前に聞いたとおりだったのでユウとトリスタンはうなずくだけだった。そうなると後は具体的な報酬額となる。


「さて、気になる報酬だが、初心者講習は1人1回銅貨2枚、戦闘講習は1人1回銅貨4枚、実戦実習は1人1日銅貨6枚だ。ただし、お前らはアーロンとジェイクの下で働くからこの半分になる。経費は冒険者ギルド負担するがな」


「おいおい、いくらなんでも安すぎないか?」


「これが普通なんだよ。去年までお前らが引き受けてた仕事の報酬額が異常なんだ」


「まぁそう言われるとそうなんだが、それにしたってなぁ」


「さっきも言ったが、この仕事は大体引退したヤツや食えない連中がなるもんなんだよ。現役で稼げてる連中がするもんじゃねぇ。そういうイケてるパーティってのは周りに後輩がいるもんだから、大抵は合同パーティを結成する」


「ああ、俺たちはそれができないな。後輩がいないから」


「ここで根付くつもりがあるなら、これを機会に後輩の知り合いを増やしておけ」


 ぶっきらぼうだが丁寧に説明されたトリスタンが口を閉じた。縦の繋がり、特に後輩との縁が薄いことを指摘されると反論できない。


 黙ったトリスタンを見たレセップがユウに顔を向ける。


「納得できたならこの書類に名前を書け。そして、明日の三の刻にここでジェイクと落ち合え」


「わかりました」


 説明を聞いて納得したユウは羊皮紙に自分の名前を書き込んだ。それを見たトリスタンも若干仕方なさそうな顔をしながら後に続く。


 2人は最近にしては珍しく普通の仕事をすることになった。

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