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冒険者の万華鏡  作者: 佐々木尽左
第34章 冒険者ギルドの手伝い

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体質はどの程度のものなのか

 新年を迎えて日が経つにつれ、冒険者たちは魔物狩りの日々へと戻っていった。大抵は金銭に余裕がなくなった順である。


 そんなある日の昼間、ユウは今日も酒場『昼間の飲兵衛亭』にやって来た。相変わらず店内は盛況だが、それも落ち着いてきている。テーブル席には空席がちらほらと目立った。


 さすがにもう知り合いのほとんどは夜明けの森に入っているので今出会うことはない。そのため、いつものようにカウンター席へと向かおうとした。


 ところが、その途中でテーブル席から声がかかる。


「お、ユウじゃねぇか! こっちに来いよ!」


「アーロン、ジェイクも。今日は森に入っていないんだね」


「オレは初心者講習と戦闘講習の担当で森には入ってないよ。アーロンは今日休みだ」


「2人でテーブル席を使っているんだ」


「どうせ席は空いてるんだ。構わんだろう、はは!」


 呼ばれたユウは通りかかった給仕女に料理と酒を頼んでから席に座った。この2人と席を共にするのは久しぶりだ。旅に出る前はそれこそ毎日一緒に生活していたが、再会してからはあまり会っていない。冒険者と職員という違いがあるので仕方ないが、それでも寂しく思ってしまうものだ。


 給仕女が運んできた料理と酒を目の前にしたユウは食事を始める。寒い外を歩いてきたので温かい料理が身に沁みた。手先の凍えも消えてゆく。


「ユウ、最近お前は何をしてたんだ? しばらく姿が見えなかったらしいが」


「中央に現地調査をしに行ってたんだよ、レセップさんの依頼で。それで秋から年末までこの町にいなかったんだ」


「そういうことか。それじゃ、今年はどうすんだ?」


「まだ何も決めていないよ。もうすぐレセップさんに仕事があるか聞きに行くけれど」


 食べながら受け答えをしていたユウはアーロンがジェイクに目を向けたことに気付いた。何か話があるのかと待ち構える。


 木製のジョッキを傾けたアーロンに変わってジェイクが声をかけてきた。いつもの調子でアーロンの代わりに口を開く。


「ユウは後輩や年少の冒険者を指導したことはあるかい?」


「ありますよ。駆け出しの冒険者や貧民街の子供にですけれど」


「それは都合がいい。実は今、冒険者ギルドで駆け出しの冒険者を指導できる教官が少なくて困ってるんだ。手伝ってくれないか?」


「ジェイクには僕の体質のことは言ってなかったっけ? 魔物を引き寄せる体質だから森の奥には入れないんだ。浅瀬でも頻繁に襲われるくらいなんだよ」


「それは知ってる。しかし、その頻繁に襲われるというのはどのくらいなんだ?」


「森の浅い場所を日帰りで、今なら1日銅貨7枚分くらいかな」


 返事を聞いたジェイクがアーロンと顔を見合わせた。今度はアーロンが尋ねてくる。


「それじゃひっきりなしに襲われてる感じか。飯を食ってる時間もねぇな」


「だから昼休みのときはもっと森の出口寄りに行くんだ」


「アーロン、どうする?」


「こりゃ実際に見てみる必要があるな。ユウ、お前のその体質、1回オレたちに見せてくれねぇか? その上で教官ができるか考えてぇんだ」


「それは構わないけれど、教官が不足しているって前から困っていたの?」


「先月辺りからだ。本来、冬場は稼ぎが少ねぇが、戦闘が楽でもあるから新人が冒険者として森に入る時期にちょうど良かった。ところが、今年は魔物が例年よりも多くてそんな駆け出しの死傷者が増えてるんだよ。それで実戦実習を受けてぇって連中が増えてな」


「なるほど、いきなり怪我をして引退なんて嫌だもんね」


「そういうこった」


「相棒のトリスタンと教官の話は相談することになるけれど、一緒に魔物狩りをするのはとりあえずできますよ」


「だったら、明日の三の刻に城外支所で落ち合おう。それから日帰りで森に行く」


「わかりました」


「よし、難しい話は終わりだ。これから飲むぞ!」


 明日の約束を取り決めたアーロンが嬉しそうに木製のジョッキを傾けた。空にすると給仕女に代わりを注文する。


 ただ昼食を食べに来ただけのユウは目を見開いた。




 翌朝、二の刻に目覚めたユウは夜明けの森へと向かう準備を進めた。前日のうちにトリスタンには事情を説明したところ、とりあえず日帰りの魔物狩りについては承知してくれる。実戦実習の教官の話はその後でということになった。


 日の出後に周囲が急速に明るくなると2人は宿を出る。路地から貧者の道へ、そして冒険者ギルド城外支所へと向かった。


 建物の前には既にアーロンとジェイクが立っているのを見てユウが驚く。


「アーロン、ジェイク、早いね」


「宿にいても暇だからな。ここで待つことにしたんだよ」


「ユウの体質がどんなものか早く見たいっていうのもあったけどね」


「ジェイクとは密輸組織のとき以来で、アーロンとは初めてだな、俺」


「そういやトリスタンとはそうだな! 頼むぜ!」


 何気なくつぶやいたトリスタンの言葉にアーロンが応じた。接点が少なかったのだ。


 4人揃うとユウを先頭に夜明けの森へと向かう。町から離れ、草原を歩き、森の手前で立ち止まって虫除けの水薬を塗った。


 準備ができるとユウが3人に話しかける。


「トリスタン、それじゃ先に行って。アーロンとジェイクはトリスタンについて行って」


「おう、それじゃ見せてもらうぜ!」


「昨日にあらましは聞いてるけど、いざ直前になるとやっぱり首を傾げてしまうな」


「ジェイク、見たらわかるんだから今更そんなこと言うなって」


 アーロンにたしなめられたジェイクが肩をすくめた。やり取りが終わるのを見計らったトリスタンが歩き始める。他の2人が後に続いた。


 ある程度離れたのを確認したユウは自分も歩き出す。自分の体質を見てもらうための最適な隊形を後方から見るのは何とも複雑な気持ちだった。いつか必ずこの体質を治すと改めて誓う。


 そんなユウの決意など知らない3人は森の中を進んでいた。魔物の数が増えたとはいえ、まだこの辺りでは緊張するほどではない。周囲に目を向けつつも楽な様子で歩いている。


「後は魔物が出てくるだけか。さて、どこから出てくるかだが」


「前方から、あれは犬鬼(コボルト)だな。3匹来たぞ」


「俺も確認した。2人とも、あいつらに道を空けてやってくれ」


 ジェイクが魔物を発見し、トリスタンが2人に指示を出し、アーロンが脇に移動した。アーロンとジェイクはさてどうなるのかと興味ありげに魔物へと目を向けている。


 急速に近づいてくる犬鬼(コボルト)3匹はほぼまっすぐに近づいて来た。普通なら待ち構えて攻撃するところだ。しかし、今回は3人とも魔物をみているだけで動かない。


 互いの間合いに入った。しかし犬鬼(コボルト)たちはトリスタンたちには目もくれずそのまま通り過ぎてゆく。そうしてユウに襲いかかった。


 魔物の後ろ姿を見送ったアーロンとジェイクは唖然とする。


「マジかよ。オレたちを無視していきやがった」


「これは、普通ならあり得ないなぁ」


「あ、終わった。ユウのところに行こう」


 未だに信じられないという様子のアーロンとジェイクを率いてトリスタンが来た道を引き返した。ユウは魔物の討伐証明部位を切り取って袋に入れている。


「アーロン、ジェイク、どうだった?」


「こいつぁ驚いた。本当に魔物がお前さんめがけて向かって行くんだな。しかも、周りなんぞまったく気にせずによ」


「ここまで引き寄せるとは思わなかったね。ひとつ質問だけど、森の浅い場所なら活動できるんだよね?」


「日帰りの範囲ならまだ安全かな」


「だったら、本当に冒険者になったばかりの新人を日帰りで教えるのはどうだろう? この辺りだったら森の出口に近いから何かあっても逃げられそうだし、それでいてユウが魔物をちょいちょい引き寄せてくれるなら訓練にもなる」


「なるほどな、ユウの体質を利用するわけか。冴えてるじゃねぇか、ジェイク」


「魔物が襲ってくる回数をある程度調整できるのなら質の高い訓練ができる。やりようによっては理想の狩り場を提供できるんだからな」


「確かにな!」


 2人で相談をしていたアーロンとジェイクが話をまとめにかかった。方針が決まるとアーロンがユウとトリスタンに顔を向ける。


「こっちの目処は付いた。ユウの体質をうまく利用すれば実戦実習はお前さんらでもできるぜ。ただ、報酬ははっきり言って安いぞ、お前らにとってはな」


「オレたちとしてはぜひやってもらいたいんだが、どうかな?」


「トリスタンはどう思う?」


「報酬が安いってのが引っかかるな」


 報酬面で渋るトリスタンに対し、ユウは最近知り合いと話をして後輩の役に立ちたいと思うようになったことを話した。幸い、懐は温かいので赤字にならなければ引き受けてみたいと説得する。


 ユウの心境を知ったトリスタンは考え込んだ。しかし、最後は若干難しい顔をしながらも承知してくれた。

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― 新着の感想 ―
またこの展開かあ 新キャラ登場で話が進むと期待したのに 結局ユウに目的目標がないから だらだら続いてるだけ 超スローでも何章かに一回は 盛り上がる展開が読みたい
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