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冒険者の万華鏡  作者: 佐々木尽左
第34章 冒険者ギルドの手伝い

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巡回パーティとして森へ

 森の巡回の仕事に関する契約を結んだ翌朝、ユウとトリスタンは夜明けの森へと向かう準備を進めた。いつも通り二の刻に起き、体を動かして温め、そして出発のときまで待つ。


 三の刻になると2人は宿を出る。路地から貧者の道へ、そして冒険者ギルド城外支所へと向かった。建物の北側の原っぱに巡回の仕事をする冒険者風の人々が集まっている。


 その中からユウはアーロンを探し出した。近づいて声をかける。


「おはよう、アーロン。今日も寒いね」


「3月にはなったがまだ真冬だな」


「ここに集まっている人って全員が職員なの?」


「いや、一部お前たちみたいな現役もいる。稼げなくて困ってる連中に声をかけたんだ」


「今って魔物がたくさん出るから冒険者は全体的に調子が良いんだよね?」


「何にでも例外はあるんだよ。能力に問題があるヤツもいるが、大体はメンバーが怪我か病気で抜けて人数が少なくなってるパーティだな」


「なるほど、それは仕方ないね」


「抜けたメンバーが復帰できるところはいいんだが、問題は代わりの人を探さにゃいけないところだな。長引くと今のメンバーの士気にも悪い影響が出ちまう」


「難しいなぁ」


「そうだな。その点、お前らはかなり変わってるぜ。2人だけで当たり前のように魔物狩りをするんだからな。普通は最低でも4人でするもんだぞ」


「うーん、そう言われてもなぁ」


 面白そうに言われたユウは困惑した。最初は1人で旅をしていて途中で2人に増えたということもあり、ユウにとってはこれが当たり前なのだ。大抵は2人で何とかなったものだし、足りなければ一時的に人を入れるかあるいは自分たちが別のパーティに入って解決していた。そのため、人数を増やそうという意識があまりない。たまに少なすぎるのではと思うことは確かにあるが。


 参加する他の現役冒険者の話をしながら3人が暇を潰していると、城外支所の建物から職員が2人出てきた。1人は羊皮紙を持ち、もう1人はたくさんの縄製のたすきを持っている。


 全員がその周囲に集まると、羊皮紙を持った職員が今日の割り当てを森の巡回をする者たちに告げていく。後にアーロンが語るところによると、夜明けの森は広いので大雑把にでも決めておく必要があるそうだ。できるだけ広い範囲を警邏するためである。


 担当範囲を告げられた者たちは大体2人から3人がひとまとまりで、もう1人の職員から縄製のたすきを受け取ってそれを肩からかけた。そうして森へと向かってゆく。


「次、アーロンの組! 森の際から真西に鐘1回分の一帯を巡回せよ!」


「よっしゃ! ユウ、トリスタン、行くぜ!」


 呼ばれたアーロンが元気に返事をすると別の職員から縄製のたすきを受け取った。それを肩からかけるとそのまま森へと向かう。その様子を見ていたユウとトリスタンも縄製のたすきを受け取るとアーロンに続いた。


 肩から縄製のたすきをかけたユウがアーロンに話しかける。


「鐘1回分の一帯ってあんまり奥じゃないよね。近くもないけれど」


「お前の体質を考えたらあの辺が限界だろうってことで、こっちから話を付けといたんだ」


「そんなこともできるんだ」


「できるだけ楽な所なんて意見はさすがに通らねぇが、事情があるんならある程度は考えてくれるのさ。奥に入りすぎて魔物ばっかり狩ってると巡回の意味がねぇからな」


 森の際で虫除けの水薬を塗った3人はそのまま中へと入った。一見すると魔物狩りのために入ったようにしか見えず、ユウもそう錯覚しそうなくらいいつも通りだ。違いは縄製のたすきをしているかどうかだけである。


 いつも通り森の奥へと入って行くと、ある程度の場所から魔物が襲ってきた。厳密にはユウを襲おうとしているのだが、アーロンもトリスタンも構うことなく片っ端から倒していく。そして、さっさと討伐証明部位をそぎ取って袋に入れた。


 3回目の小休止のときにトリスタンがアーロンに話しかける。


「もうそろそろ巡回する地域だよな?」


「ああそうだ。次からはぐるっとまわるぞ」


「これから毎日日帰りでこれを繰り返すっていうけど、1日にどのくらい諍いが見つかるものなんだ?」


「実はそう滅多に面倒事に出くわすことはないんだよな」


「そうなのか」


「この広い森の中で他人と出会うことがそもそも難しいだろ。それに、加害者側も馬鹿じゃねぇから目立つところでは襲わないもんだ。たまに見境のない馬鹿がやらかすがな」


「言われてみるとその通りだな。となると、何のために巡回なんてやっているんだ?」


「冒険者ギルドがいつでも見てるぞって示すためだ。領主が森に森番を入れるのと同じ理屈だぜ」


「なんだ、だったら魔物狩りのときとほとんど変わらないじゃないか」


「事実上そうなるな。実際はお前さんの言う通り、魔物狩りして帰って換金するだけの日の方が多い。ただ、オレたちみたいなのがいるってだけでも森の治安はましになるんだぜ」


 言い終えたアーロンが水袋に口を付けた。ユウとトリスタンのように悪さをする気のない者にとっては空気のような存在だが、ある種の者たちにとって森の巡回というのは地味に面倒な存在だったりする。そして、この巡回はそういった者たちのためにやっているのだ。


 休憩が終わると3人は森の巡回を再開する。普段の魔物狩りのときとは目的が違うだけでやることは変わらない。


 昼食後も引き続き3人は巡回を続けた。見かけるのは魔物ばかりで冒険者は1人も見かけない。本当に他の冒険者も森に入っているのかと疑ってしまうほどだ。


 あるときユウはふと自分の持つ袋に目を向けた。魔物狩りのときほどではないがなかなか膨らんでいる。ちょっとした収入になりそうだ。


 やがて昼下がりの休憩時にアーロンが他の2人に告げる。


「よし、そろそろ帰るか。今日はこのくらいにしておこうぜ」


「今から帰ると夕方だね」


「アーロン、この森の巡回の仕事って日帰りだけなのか? 何日か森に入る場合は?」


「あるぞ。今日はその担当はいなかったがな。せめて駆け出しのいる辺りまでは直接守ってやらねぇと。狙われるのはああいう新人が多いからな」


 冒険者稼業にある程度慣れてそれでいて稼げない連中が新人をよく狙うということだった。そのため、2泊未満までの地域は巡回範囲だと冒険者ギルド側も認識しているということだ。当然それよりも奥地で犯罪がなされる場合もあるが、夜明けの森すべてを巡回することは不可能である。よって、2泊以上奥へ行く場合は原則自己責任となった。


 そんな話を聞きながらユウとトリスタンはアーロンに率いられて帰路につく。日帰りである以上、森にはそう長居できないのだ。


 森の際へと近づくに従って魔物の襲撃は減っていく。そして、いよいよ原っぱが近くなってくると他の冒険者パーティをちらほらと見かけるようになった。


 先頭を歩いているアーロンが振り返って小声で2人に呼びかける。


「お前ら、その肩からかけたたすきを周りの連中に見せびらかせ」


「え、これをですか?」


「そうだ。オレたちがいつでも見回っているぞって知らせるんだ」


 呼びかけられたユウは思わずトリスタンと顔を見合わせたが、とりあえず言われた通りに目立つよう縄製のたすきを掛け直した。果たしてどの程度効果があるのだろうと内心で首を傾げる。


 いくつかの冒険者パーティの近くを通ったところ、大半が気にもとめていなかった。中には珍しげに縄を指差して仲間にあれが何であるか尋ねていた者もいたが、大抵はそのくらいの反応でしかない。


 しかし、ごくまれに苦々しげな目を向けてくる者もいた。ユウには理由はわからないが、過去に何かあったのかもしれないと推測する。


 森から出て原っぱを通り抜けた3人は解体場の買取カウンターに足を向けた。ここで魔物の討伐証明部位を換金する。


「おお、結構な額になったな! まるで現役の頃に戻ったみてぇだ!」


「こういうとき、ユウの体質って便利だよな」


「はは、ユウ様々だな!」


 にかっと笑ったアーロンがトリスタンに便乗した。からかわれたユウは困った表情を浮かべて黙る。何と言い返したらいいのかわからない。


 そこでユウは話題を変える。


「アーロン、このたすきってどうしたら良いのかな?」


「これな、職員だとそのまま裏まで持って行って片付けるんだが、冒険者だけの場合は受付カウンターに持って行けばいい。受付係に渡せば後は片付けてくれるぜ」


「それじゃ、今回はアーロンに渡せば良いんだね」


「そうだな。あいやちょっと待て。お前らが受付カウンターまで持って行け」


「どうしてなの?」


「レセップのヤツに渡せ。たまにはあいつを働かせろ」


 にたりと笑うアーロンをユウは呆然と見た。隣でトリスタンが笑っている。


 結局、2人はアーロンの言う通りにした。

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― 新着の感想 ―
祝1000話おめでとうございます! こんなに長く毎日更新されててとんでもなくすごいですw
他の人の感想を見て1000話だと気が付きましたがすごいですね おめでとうございます ユウも一応将来のことを考えていたことが今回やっと明らかになりましたね 今までそう言った描写が全くなかったので、読者…
1000話更新おめでとうございます
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