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幻姫と星空の国  作者: 立花柚月
間章
44/49

1

最近、エリカは同じような夢を繰り返し見る。その結末は、いつも同じだ。だから、夢がそれだと分かった瞬間、エリカはそこから逃げ出したくなる。しかし、そうはできないまま、夢はいつも同じ最後を迎える。起きた後に残るのは、一人で暗闇の中にいるような孤独感だけだ。


――夢の中には、いつもエリカの大切な人たちが現れる。亡くなったはずのジゼルや国王、そして、昔天文台で一緒に暮らしていた使用人たち…。出てくる人は、いつも異なっている。だが、共通しているのは、皆楽しそうで、エリカもとても幸せなことだ。周りにはたくさんの綺麗な花が植えられていて、そこはまるで花園のような場所だ。王宮でも天文台でもない、穏やかで幸福しか存在しない場所。そこには暖かな光が降り注ぎ、優しい雰囲気に包まれている。その場所で笑い声が途絶えることはない。

けれど、不意に周りの景色は一変する。花園はすべて枯れ果て茶色に変わり、差し込む光は徐々に暗闇へと変わって溶け込んでいく。そして、最後の最後に彼らは全員エリカの前から姿を消してしまう。「さようなら」という言葉だけを残して、エリカが手を伸ばしても彼らは無慈悲にいなくなる。一人ずつ消えていき後には何も残らないのだ。そこにエリカは一人で佇んでいる…。そこでいつも、目が覚める。そして、思い知らされるのだ。いや、思い出してしまうと言った方が正しいかもしれない。

――自分は、ずっと孤独な世界に存在していたのだと。


今日の朝も、そうだった。夢はいつも、エリカに冷たい事実を思い出させる。自分はいつも一人なのだと。きっと誰かとずっと一緒にいることはできないのだと…。そんな孤独と言う名の影が、エリカの心の中に落ちている。この夢は、まるでエリカに警告しているようだ。今はレオがいるが、港町に着いたらそこで終わりだと。この後も一緒にいられたら、という淡い希望を砕く。しかし、そう分かってはいても抱いてしまう期待を、エリカは捨てることができなかった。こんなに、誰かと一緒にいたい、と願うのは初めてだったから。そして、その気持ちの名前もエリカは既に知っていた。それは、紛れもない「恋」だった。だからこそ、どうすればいいのか分からない。そのせいで、エリカは最近、考え事をすることが必然的に多くなっていた。

「…エリカ、どうかしたのか?疲れたなら少し休もうか」

そう問われ、道を歩きながらも思考の沼に沈んでいたエリカははっと我に返った。どうやら、レオにもそのことに気付かれていたようだ。レオは心配そうに立ち止まる。エリカも釣られてそこで止まった。それほど、何か考え事をしていることが多いのだろう。しかし、今悩んでいることは、わがままのようなものだ。だから、言うわけにはいかない。エリカはそう思っていた。本来であれば、こうした願いを口にするのは許されることなのかもしれない。ただ、人との交流が今まで極端に少なかった少女は、自分の思いを口にすることを時折忘れかけていた。だから、エリカは首を振って曖昧に微笑み、別のことを言った。

「あ、いえ、大丈夫ですよ。ただ、港町に行った後自分がどうするか、何も考えていなくて」

一応、それも事実だ。嘘はついていない。港町に着いた後、クリスに会い、その後でエリカの力に関することを知っている人に会いに行くということは決まっているが、それ以外は全く何も決めていない。その後、どうするのか。港町に留まるのか、それともどこか別の町に行くのか…。そもそも、その後も反乱軍が追ってくる可能性は十分ある。彼らへの対策も考えなければならない。ただ、今のところ具体的な案が浮かんでいないのも事実だった。

「ああ…。確かに、僕もどうするのか結局決めていない。港町に行けるのはかなり先のことだと思っていたが、意外と早かったな。何とか追手を撒くこともできたし。ただ、港町に着いて僕がいなくなったとしても、別の人に警護してもらった方がいいんじゃないか?」

レオがそう提案したが、どういうところに行けばそういうことを頼めるのか、全く分からない。あまり外の世界に出たことがなかったため、エリカには未だに分からないことの方が多い。エリカがその辺りのこともどうしようかと考えていると、レオが更に提案した。

「何だったら、後任の人が見つかるまで僕がいてもいいが。…エリカがそれでもいいなら」

「…え、いいんですか?ご迷惑をおかけする期間が長くなってしまうことをレオさんが気にしないならば、是非お願いしたいですが……」

エリカは本気でそう言った。そうすれば、少しだけだがレオといられる時間がまた増える。そのことは、正直に嬉しい。彼と別れたくないと思っているのも事実だ。ただ、レオの負担が増えてしまうのではないかと心配していた。それに、このままだとレオに依存することになりそうで…、それが怖い。いつかはきっと、一人になるはずなのに。その時に得ることになるだろう喪失感を想像すると、とても怖い。今までも経験したはずなのに。そう思うと、急に心の中が冷えていくような…。そんな気がした。エリカは少しうつむいた。ずっと考えていたことを再び思う。

(いつかお別れするくらいなら、早くそうした方が良いのでしょうか?)

ソアラは、自分の気持ちに正直になった方がいい。と言っていた。だが、それはエリカにとっては難しい。信頼した相手が、今までのように離れていってしまうのは、とても辛いことだと、分かっているから…。もしも同じことがまた起こったら、きっとエリカはそれに耐えられない。気持ちが矛盾しているせいで、どうすればいいのか分からない。少しでも長く一緒にいたくて、でも、いなくなった時の喪失感が怖いから早くどこかに行ってほしくて…。矛盾しているこの二つの感情は、エリカにとっては、表裏一体のものだ。でも、どうすることもできないのも事実だった。この気持ちを、レオに伝えることはできない。しかし、何も手段を思いつかない。果たして、こういう時にどう対処すればいいのか…。そう考えていると、レオが答えた。

「それについては全く気にしていない。むしろ、こっちの力不足が申し訳ないくらいで…」

「そんなことないです!私にとって、レオさんは命の恩人です。レオさんがいなければ、私はここにたどり着かなかったでしょうから…。本当に感謝しています」

その言葉に、何故かレオは虚を突かれたような表情をした。その反応にエリカは逆にきょとんとした。何かおかしなことを言っただろうか、と考えてみたが、特に何も思いつかない。しかし、考えつかないままのエリカに、レオは嬉しそうに、どこか照れたような微笑みを浮かべた。

「そうか。……ありがとう」

その言葉と表情に、エリカは一瞬言葉に詰まった。何と言えばいいのか分からなくて…。でも、その瞬間、胸の辺りが温かくなったのは事実だ。エリカは思わず胸を抑えた。この感覚も、恐らく「恋」だった。それと同時に思う。やっぱり、離れたくない、と…。でも、これ以上迷惑をかけるわけにもいかない。取りあえず、レオが一緒にいてくれる時期は長くなった。その間に、どうにかして気持ちの整理をしなければならない…。しかし、本当にそれができるのかどうかはエリカにも自信がなかった。でも、今だけはそれを考えたくなくて、無理矢理笑った。

「そういえば、前にお姉様に聞いたのですが、お兄様も剣術が得意らしいですよ。もしかしたら、レオさんと話が合うかもしれません。残念ながら私はそういうのは全然知らないので…」

「そういえば、何回か練習場にいらっしゃったことがあった気がする。当時の騎士団長と互角に剣を交わしていて…、まるで二人はお互いの動きが分かっているようだった」

レオは懐かしそうにそう言った。そして、その後で何かを言いたそうにしていたが、ちょうどその時、夕方を告げる鐘が、どこかから聞こえてきた。このままでは、夜になる前に途中の町にたどり着くことができない。そう思った二人は、急いで道を歩き始めた。

のろのろですが、物語はどうにか進んでます…。

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