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ベネット遠征伝~女を汚す奴は、許さねぇ!~  作者: 神羅神楽
第八章 エラリー~苦闘!デスゲーム編~
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デスゲームの攻略法

最後のエラリーの推理パートも面白いので読んでみてください。

 答えが「ピラタス」でない……。

 一同は悶絶した。

 紙にメモをして、この文字列を並べるのにどれほど苦労したか。

 順番通りに並べるとき、一同は死の恐怖に耐えながら作業をしていたのである。


「うーん……やっぱり別の名前なんでしょうか……」

 エリザベスがもやもやしながらつぶやく。

「いえ、母音と子音の並び方を考慮すると、この並び順が一番しっくりきます。ウィッカムさん、どうでしょうか?」

「ふふふ。実は私は最初から分かっていたのであーる」

 ウィッカムは部屋を歩き回りながら、

「このユークリッド大陸には、異世界に転移し帰って来た人物が何人かいたそーな。その中のとある学者の文献によると、イスラエルという外国で、とある神の子、イエス・キリストという人物の福音とやらが、新約聖書という名の書物に記載されているらしーい。それによーると、イエスを殺したのは、『ポンティオ・ピラト』総督。そのピラトの綴りは『Pilatus』。向こうの国のラテン語と呼ばれる表記なのであーる。どういうわけかは分からぬが、全く同じなのであーる」

「分かってんなら早く言えよ!」

「なーに、あの男が自滅するのを見届けておきたかったのであーる。ところでベネット。私に作戦があるのであーるが?」

「作戦とはなんでしょう? ウィッカムさん?」

 エラリーは首を傾げる。

「なーに、ちょっとしたテクノロジーであーる。だが、私の賭けが成功すれば……」


「全員、助かるかもしれなーい」




──デスゲーム伯爵の部屋。

 豪勢な洋室で、きらびやかな金の刺繍の入った絨毯、高価なアンティーク。その中で優雅にペルシャ猫を抱きながらデスゲーム伯爵は座っていた。


 そして。

 ドアが開かれた。


「デスゲームクリアおめでとう、ウィッカム・コルネリア君」

「HAHAHA、なかなか面白いゲームだったのであーる」

「そこに座りたまえ」


 ウィッカムは対面側のソファに座った。


「どこでラテン語を習ったのであーるか? デスゲーム伯爵……もとい、『ピラト』?」

「その名前はよしてくれ」


 デスゲーム伯爵の本名。それは『ピラト』で正解だった。


「……吾輩はニホンという国に滞在して、聖書を研究していた時期があった。またニホンの文化に触れ、デスゲームという娯楽小説にはまり、吾輩の異能を自分で改築したのだ」

「……なるほど。で、私に支払われる成功報酬は幾らであーるか?」


「さあてねぇ……」


 ピラトは片手を机に付けると、黒い煙が立ち込めた。


「ここに手をおいて、吾輩に魂を売る支度をしたまえ。そうすればここから出られ、お前は何でも望みが叶う」

「ふふ……貴様、悪魔のギフテッドだったのであーるな?」


 するとウィッカムは突然無線機を出し、


「ベネット、やれ」

「!?」


 部屋にいくつかスリットが現れ、ピラトに向かって矢印が襲い掛かってきた。


「無駄だっ!」


 ピラトは宙返りし、機敏な動作でそれをかわしていった。

 しかし。


「がっ……!」


 彼の仮面に矢印がぶつかり、仮面が割れると、激しく出血した。


「しまった……吾輩は……仮面を外されると……!」


 辺りの風景は一変し、そこはただのジョーカーズ事務所と思しき場所に変わった。

 そして、ベネット、エリザべス、そしてエラリーの姿がそこにあった。


「ピラトよ。私の考えた天才的な攻略法を聞き給え。私は電波計測装置を使い、あのディスプレイの発信元をたどった。そしたら、ちょうどあの部屋の二階にあるのではないかと踏み、あの部屋とお前のいた部屋はまったく別の空間にあるわけではないと推測した。そこでレーダーをベネットに渡し、私の現在地をベネットに教え、そこからベネットの《ポインター LEVEL2》を使わせたのであーる」

「てめえの敗因は、仮面を外されると死ぬという、お笑い種の弱点だったが、まあてめえの異能は正直強力だ。だが戦えばはるかに弱いということは、もう分かってたんだよ。さて、ザコ仮面男。とっとと死ね」

「ぐああああっ!! くそぉぉぉぉぉ!! 姐さぁぁぁぁん!!」


 ベネットはポインターで仮面を完全に割り、デスゲーム伯爵、ピラトは死亡した。




 ベネットたちはエラリーを連れ、事務所にやってきた。

「……ほう、彼女が新しいシェルター入居希望者か」

 ダーシーがエラリーを見下ろす。コリンズ女史はエリザベスが帰ってきたことを歓喜し、抱き付いて頭をなでなでしている。

「私の異能は氷結異能だけでして……それより推理が得意ですかね……」

「じゃあ、昨日冷蔵庫にあったシュークリームを食べたのは誰か推理してくださいよ」

 コリンズ女史が無茶ブリをする。

「そうですね……ですがすごく目立つ証拠を見つけてしまいました……」

「なになに!? まさかチェアマンのほっぺにクリームがついてたとか!?」

「そんなベタな展開はないし、俺は食べてない」

「その手帳……やけに分厚くなってますね。相当使いこんだのでしょう」

 エラリーはコリンズ女史の席の手帳を指差した。

「ちょっと拝見させていただいても?」

「……いや、それはちょっと……?」

 エラリーはそれを奪い取るように開くと、

「コリンズさんは大変スタイルがいい。体重や食事の管理はきちっとなさっているはずです。ですからこのメモ帳に食事の記録や体重の記録が書かれていても不思議ではないと推理しました。そしてどうやら実際にそれらが書いてあったらしい。見てください。最終ページの食べたもの一覧に、『シュークリーム2個』とあります」

「……すいません、トイレ掃除でもなんでもやります」


 そうしてクローバーズの清掃係は、当面コリンズ女史が引き受けることになったらしい。


 第八章 完


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