三人の小学生と謎の紳士
実は、この章、数年前に俺が書いたジュブナイル小説が元ネタになってるんですね。没にしましたけど。
──日本、朝比奈第一小学校。
「桃介ー野球やろうぜー」
「おー、しっかしいつ見ても愛生ちゃんのおっぱいはいいなぁ」
瀬戸桃介、12歳はスケベな小学生。スポーツは得意だが、勉強はあまりできず、グラビア雑誌を眺めるのが趣味。これといった特技はない。
「弁当さっさと平らげるぞ竜一」
「え、俺も? ……俺塾の予習したいんだけど……」
「竜一く~ん、一緒にお弁当食べない?」
「……いや、だから塾の予習が……」
女子たちに囲まれ、そう言いながらウィダーインゼリーを飲むのは、宇佐竜一、12歳。早熟で身長が高く、ルックスも良く頭がいいので女子たちにモテている。有名私学を受験するらしい。
「竜一が困ってんでしょうが。散りなさいよ」
「ぎょっ、半沢さん……!?」
「ぎょって何よ。あたしはバケモンか」
「い……いえ……」
女子たちは一斉にその場を離れる。
半沢小夜。12歳。気の強い女子小学生。イケメンに目がない。竜一とはただの友だちでいるが。
「で? 桃介。あんたもあんたよ。竜一の勉強の邪魔したら迷惑でしょ」
「うるせーな小夜。息抜きも必要だよ。こんな勉強ばっかしてたら、缶詰になっちまうぞ」
「あんたは息抜きのし過ぎなのよ」
「いいんだよ、半沢さん……。でも桃介、悪い、あと二週間で模試なんだ」
「はー。ろくな大人にならねぇぜ?」
「あんたに言われちゃおしまいね」
……………………
──フランス、パリ。
「君の瞳に乾杯」
背の高いスーツを着たすらりとした青年紳士が、ホテルの一室でドレスを着た美しい女性とソファに腰かけ、シャンパンを入れたグラスをかちあわせ、談笑していた。
「事業の方はうまくいってるのかしら?」
「イギリスがEU離脱して以降、非常にやりづらくなっているよ。連中関税かけやがって、やりたい放題だ。俺様も今中国語を勉強している最中さ。アメリカは破綻していると聞いているし、そもそも俺様はアメリカに興味はない」
青年紳士は、ドレスを着た女性の肩に手を回し、
「だが、君の受注には応じるよ。ブラジャーのサイズもオーダーメイドだ」
「下品な人」
女性はクスクス笑う。
……………………
──ハルジオン図書館
ウィッカムは禁書庫に職員カードをスキャンして入り、オリジン・イヴについての文献を漁っていた。
そのとき、一冊の古びた本が置かれていたのに気づいた。
「……聖書の注釈書であーるか。かなり劣化しているーが」
ウィッカムは速読スキルで、本の内容を流し読みした。
内容はこうだ。
かつて神はオリジン・アダムという青年とオリジン・イヴという少女を作った。そしてイヴが原罪を犯したところで、イヴに永遠の美と不死身を与えた。さらには、ヴァルハラという異能をも──。
ここまではウィッカムも周知のことであった。問題は次からである。
ギフテッドの由来──。ユークリッド歴15年、オリジン・アダムが第一次革命戦争の宣戦布告を表明した。オリジン・アダムは機械兵を作り、アダム軍とオリジン・イヴはぶつかり合ったが、イヴのヴァルハラの前に多くのアダムの機械兵は壊された。そこで、神はアダムがイヴを凌辱するよう仕向けた。これにより、ギフテッドと呼ばれる異能を持つ子がイヴの子供達同士が結婚し、そのなかから次々と生まれた。オリジン・イヴはオリジン・アダムの性奴隷となり、次々とヴァルハラを生み、ついには自殺した。
ヴァルハラは神話的にも野蛮な血族とされ、ギフテッドたちに殺された。オリジン・イヴは5人のヴァルハラを産んだが、そのうち4人は殺され、1人はその4人のうちの1人と交わり汚れなき者とされている。神は彼女が産んだ子に異能を授けた。これがギフテッドの起源である。が、記録によれば、殺された4人のうちの1人のヴァルハラの亡骸は発見されていない。
「ふむ……興味深いであーるな」
ウィッカムは一度本を閉じ、外に煙草を吸いに行った。




