表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/66

40 攻防

 木こりの朝は早い。空が暗いうちから山に入る。


 山に入れば山の角度や高い木々が伸びているので、太陽が高くあがるまでなかなか明るくならず、薄暗い。


 日によれば濃い霧が出る。いつもの風景ががらりと様子を変える。


 熊や鹿などの大型動物が出没することもある。当然襲われることもある。木こりたちは、それらの者たちを殺すことなく追い返す。


 時には、山のどこかで命を落とした人間たちの霊がさまようこともある。


そういった霊たちは、木こりたちを積極的に襲おうとしているわけではないことが多いが、なかには生身の人間である木こりたちに恨みをはらそうとする霊もいる。


木こりたちは陰陽師の術を使う。術で霊たちを浄化するのだった。


 


 「百鬼夜行」


 青葉の君が乗った牛車の先頭から伝達が走った。北山はすぐに姫に注意を促す。


 牛車の周囲にいる侍従たちは、貴族の中で伝えられている百鬼夜行をやり過ごす方法を行う。


 動かず、息を殺す。声を出さない。百鬼夜行を見ない。


 肉の腐ったにおいを放ちながら、百鬼夜行がやってきた。背中がぞくっとするような、不気味な音も放っている。


 北山は、百鬼夜行がゆっくり牛車の周囲を通り過ぎていくのを足もとで確認した。


 うん、このまま通り過ぎていけ……。


 北山は静かにうつむいている。


 ざわり、ざわり、と人間をいらつかせるような雰囲気を出しながら百鬼夜行は通り過ぎていく……。


 とん、とん、とん……。


 牛車を突いている音。


 「!!」北山は耳に集中する。見てはいけない……。が、牛車には青葉の君が乗っている……!


 「いた、いた……」鬼がうれしそうな声を出す。ぎしり、重みがかかって牛車がきしむ音。


 北山は、そっと目を上げた。牛車を見る。


 牛車のすだれを持ち上げ、よじ登っている鬼が見えた。頭を牛車の中に突っ込んでいる……!!


 北山は、すばやく刀を抜いた。


 百鬼夜行が、いっせいに北山を見る。今すぐ百の鬼の餌食になってもおかしくない状況になった。


 それでも、北山は術を唱えながら、牛車に上っている鬼に切りかかる。


鬼に実体はないらしかった。刀が胴に当たったはずだが、空気を切っただけだった。


 刀では切れない……!


 北山は刀をおさめると、術を自分の両手にかけた。その手で鬼の後ろ髪を思い切りつかみ、引っ張る。


 鬼の首が後ろにる。


 よし、いける!


 北山は、鬼を引っ張った。引きはがされまいと鬼は、両手で牛車をつかんだ。牛車が鬼とともに大きく揺れ動いた。


 牛車の中からかすかな悲鳴が聞こえた。姫が声を出してしまったようだ。


 鬼たちの空気がパッと変わった。


 北山に集中していた鬼たちの目が牛車に向かう。


 「牛車をお守りしろ!!」侍従が叫んだ。


 すべての侍従たちがいっせいに牛車に飛びつく。侍従の体で牛車を取りかこむ。


 すべての侍従たちは、自分を犠牲にしてでも牛車を守るつもりだ。


 一瞬、北山の脳裏に侍従たちが鬼どもに食い殺される光景が浮かんだ。


 「……そうはさせない!!」北山が思い切り鬼を牛車から引き離した。


 牛車は大きく揺らいだが、侍従たちが全身で重い牛車を押さえる。侍従たちの顔や体から血管が浮き出ている。


 北山は自分の腕、足に術をかけた。


 大きな鬼姫を思い切り殴りつける。周囲にいる百鬼たちを殴り、蹴る。


 弱い鬼たちは殴られて消えた。強い鬼たちは北山に反撃する。隙を見て牛車を取り囲んでいる侍従に食いつこうとする。


 北山は集中攻撃を受けている牛車の周囲を飛び回り、鬼どもを殴り続ける。鬼は重い拳を受け、へしゃげ、すうっと消えていく。


侍従をも守ろうとする。鬼が隙を見てあちこちから攻撃をしかけてくる。


 追いつかない……!!


 「我らはよい、姫を守れ!」侍従が叫んだ。


 「しかし!」北山が言う間に鬼どもが牛車を取り囲んでいる侍従に食らいつた……が、弾き飛ばされた。


 「我らは、懐に式神様をいただいている……!しっかり牛車を守れ!!」


 侍従が叫んだ。


 「はい!!」


 ここからの北山は、人間とは思えない動きをした。


 小さな鬼、弱い鬼はどんどん消えていく。百鬼が数鬼まで減る。


 大きな鬼姫が立ちはだかった。残った鬼どもに命じ、北山を集中攻撃する。


 北山は防戦体制になる。だんだん押される。


 鬼どもは強い。


だが、……絶対、姫に到達させない……!


 北山は一心に戦った。が、牛車の方に押されていく……。


 鬼姫がにやっと笑った。


 一瞬、負け、という文字が北山の頭をよぎった。


 青葉の君が、死んでしまう……。


 世界が真っ暗になるのを感じた。


 それは、許せない。絶対、許せない……!!


 拳の使い過ぎで腕の力が入らなくなってきた。拳が痛すぎて感覚がなくなってきた。


 そのとき、金色の風が強く吹いた。


 北山にのしかかっていた重みがふと軽くなる。


 ???


 牛車の前には、数鬼いたが鬼姫残すのみとなっていた。


 鬼姫の前には、金色の虎が立ちはだかり、全身の毛を逆立てて牙をむいていた。


 虎は、鬼姫に飛びついていく。鬼姫は虎を払おうと手を振り回す。


 術を唱える声が響く。


 可武斗かぶとが術を唱えている。鬼姫の動きが鈍くなる。だが、止まらない。


 金色の虎、黄金こがねが鬼姫の首に噛みつき、鋭い爪を鬼姫の体に突き立てる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ