この作品の地球ってどんなところ?
「それで、色々聞きたいんですけど」
「どうしたよ、そんなに怖い顔して」
表情筋が凍ったようなメリナに視線を向ける。
ホテルの一室をあてがわれて休んでいるわけだが、メリナはずっと何かにおびえているようで動かない。
「さっきのあの美人さん……気配がしませんでした。センサーにも反応しない、人間じゃありません」
「あそこで話した通り、あれは宇宙怪獣の一種だな。無限増殖するし、位相空間にスペア用意して逃げるし、それを利用してワープするし、人にとりついてこっそりスペアを作る。そういう類だ」
クトゥルフ神話に准ずる神様連中ってのは基本的にそんな連中ばかりだ。
寿命が長いとかそういうレベルじゃない、殺したところで死なないようなのばかりだし、こうしてコミュニケーション可能なやつのが少数だ。
「それを、神様……?」
「天然物の神様がいるからな。土着というか、それこそこの惑星で人間が闊歩し始めた頃から見守ってきた奴ら。最古はどのくらいのレベルか知らないが、一応顔見知り程度の間柄なら8000年前から地球で生活しているってのはいたかな……名前思い出せねえけど」
長くも深くもない付き合いだったから忘れたが……地球は一歩裏を見ればそういうのがゴロゴロしている。
もう一歩踏み込めばあとは落ちるばかりで得られるものは無し、と聞いていたからそれ以上深くは探らなかったけどさ。
むしろ不自由をプレゼントされるよと言われたら誰でも手を引く。
「……アレが世間に認識されていない?」
「ごく一部の界隈では認知されているが、そういう次元じゃないのわかるだろ。真正面から火薬式の銃でどうにかできる相手じゃねえ。真正面じゃなくてもそんな玩具じゃ秒殺されるだけ。爆弾で吹っ飛ばそうと次の瞬間には肩組んでくるぞ」
「……その、天然ものっていうのは本当になんですか?」
「マジで知らねえから何も言えない。神様ってのは意外と身近にいるものなんだよ。特にこの国は多いな」
「他の国は?」
お、落ち着いてきたようだな。
思考回路はまだぐちゃぐちゃかもしれんけど、メンタルは立て直してきたっぽい。
「そうだなあ……神様がいなくなった国もあると聞いたことはある。ただ詳しくねえのよ、その辺。如何せん裏方面の話だったし。メリナだって連合の上層部が抱え込んでる闇の部分には詳しくないだろ?」
「まぁ……」
「あぁ、ただ言えるのは一つ。基本的に顕現できる……という言い方をされる神様連中はひと柱ずつだ。同時顕現が可能なのはさっきの化物くらいだな」
「という事は、数だけならたかが知れている?」
「この国じゃ八百万の神がいるっていう。八百万柱じゃなくて、それくらい沢山って意味」
「小さなコロニーが埋まる!」
見事な台パンだ、だが無意味だ。
「他の国や地方の神話でもそのくらい出てくる話はあるしなぁ……なんなら人間に敵対的な神様なんて吐いて捨てるほどいるぞ。それにどいつもこいつも単独でホワイトロマノフ並みの火力を持つ攻撃方法持ってる」
「未開惑星ですよね⁉ なんでこんな独自の発展してるんですか!」
「だから知らねえって。もしかしたら今のこの状況すら神様連中の手のひらの上かもしれねえんだ。……いや、一番ありえるか? アトランティクスに情報与えて追い払って、その上で国家群が危ないようになる位置に動かす……たしかイレギュラーで発生した依頼だったな。もしかしたら誰かが仕組んだ……いや、誰がとかどうやっては考えるだけ無駄だな……だとしたら何故を考えるべきだ。あの……なんかのアニメで……原作は小説か? そう、主人公が言ってた。ホワイダニットだ」
「えと、アナさん?」
「なぁ、例えばメリナがこの惑星に住む神様だとして俺達にコンタクト取る理由って何がある」
「え? えっと……科学力の発展のためのテコ入れとか、ですか?」
「まぁわかりやすい範疇だな。それ以外、もっと悪意のある内容ならどうだ」
「……あっ」
気付いたか。
さっき伊皿木女史が言っていた言葉、戦争の火種。
俺達という存在そのものが火種であり、それは何かの拍子で大火に変化しかねない代物だ。
それを呼び込んだ……どっちが本命かなんてどうでもいい。
他に本命があるかもしれないし、見当違いかもしれない。
けど、可能性が1%でもあるなら油断はできない。
「メリナ、常に警戒態勢で頼む。ノイマンとマリアにも通達、俺達の周囲を見張っててくれ。それと外交官連中は絶対にこっちによこすな。まだ安全が確保できていない。どうしてもと言うならこちらで用意した通信機でだ」
少なくとも俺達が持ち込んだ機器なら覗き見もできないだろう。
なんか知らのアクションがあってもおかしくない今、できる事と言ったら……。
「とりあえず当面は安全の確保か……メリナ、出るぞ」
「えと、どこへ行くんです?」
「このホテルはもう場所が割れてるかもしれねえからな。どっか他の場所に泊まるんだよ」
「はぁ……でも宿泊施設なんてそんなにあるもんですか?」
「ある。この街はそういうのが結構あるって聞くからな」
まぁ、ラブホなんだけど。
裏路地の入り組んだ所とかにあると聞いたからな、伊皿木女史に。
セクハラではない、美味いラーメン屋行ってメリナが目を輝かせている間に近づかない方がいい所を聞いておいた。
聞いた話では随分前になるが、この近くには反社がいたという。
今もその片鱗があるのが南方、歓楽街がある地域から一歩裏路地に入れば空気の変化が感じられるだろうとのことだった。
北側も東に向かって進めばそうなるらしいが……そっちは住宅街がメインだとかなんとか。
どちらにせよ、夜の治安はそこまで信用しない方がいいといわれたな。
だからこそ、今俺達が隠れるにはぴったりだ。




