伊皿木という女
マザーに頼み地球圏に飛ばしてもらい、現在火星にて待機している俺達。
ステルス機能を使って地球から観測できないようにしつつ、こっそり電波伸ばして地球側の情報を仕入れていた所に通信が飛んできた。
「意外と気付くの早いじゃないか。ハロー、ジャパニーズ」
「どちら様かな。こちらのデータでは火星から通信されていると出ているのだが」
「その通りだ。まぁ言うなれば宇宙人ってやつだよ、火星じゃなくてもっと遠い所のな」
ちなみに火星に解き放たれたゴキブリではないぞと付け加える事で笑いを取ろうとして失敗した。
通話の相手は短髪の美人さん、ウルフカットっていうのかなあれ。
黒髪黒目で切れ長の視線が印象的なお嬢さんと言った感じだ。
「まずインベーダー、まぁ敵対勢力じゃないってのは確約するから安心してくれ。それと見た目と言語から日本人扱いしたが、日本でいいかな?」
「よくご存じのようだ。この短期間で調べたのならばたいした情報収集能力だと言わせていただきたい」
ふぅむ、威圧的というか外交的じゃない口調は警戒からかな?
それともこの人個人の性格からか……。
「まぁ落ち着けよお姉さん。マジで俺達に敵意は無い、望むならこちらの土産を持参して握手をする用意だってある。例えばVRマシンだったり、大抵の病気には効くワクチンや病気抑制やら生活習慣病を防いでくれるナノマシンなんかをな」
「随分と魅力的な物を持っているようだけど、見返りに何が欲しい」
話が早くて助かる。
「ヘリウム3、そちらがまだ採掘まで何世紀かかかるであろう木星の資源だ。つっても全部よこせとは言わんよ。ちゃんと貿易しようぜって話でな、俺達は採掘するけどその際に金を払うよと言っている」
「信用できん。少なくとも外からこそこそ嗅ぎまわってる連中はな」
「それはそうだ。だからそっちに顔を出してもいいか、今お伺いを立てている」
「……上司の許可が出た。こちらが見えているならタブレットに表示しているポイントに来ていただけるだろうか。無論、市民にはバレないように」
「こいつは……昭和記念公園? たしか多摩地区にある……なんどかテレビで見たぞ。あそこだいぶ人が多いはずだが」
「あそこの地下には立川駐屯地に繋がる秘密通路がある。そして立川駐屯地だけではなく自衛隊の集まる場所全てには何かしらの通路が用意されているのだ」
「それで民間人にばれないように来いってのは、なかなか面倒な注文だな。まぁいい、その程度やってみせなきゃ信用してもらえないだろうからな。しかしいいのか? 軍事機密だろそれ」
「構わない。国家公安委員会の一員として上官の許可も得たし、外務大臣と防衛大臣の許可も得ている。なにより、その気になればそちらが隠している巨大な何かをぶつけるだけで日本という国家は完全に地図から消え去るからな」
「はははっ、バレてたか。流石というべきだな」
アトラス級にもステルスを仕掛けていたのだが、流石にデカいからなあ。
バレる時は一発でばれるわな。
逆にアロアニマ達は気付かれてないはず。
隠れる事に関しては超一流だから。
あいつら確か赤外線やら電波やらを可視光線として視認する事ができるって話だ。
それもオンオフ切り替えできるとか。
だからよほどのことがなければばれない。
「手土産に何が欲しい? ナノマシンでもワクチンでも、あぁ核分裂抑制機でもいいぞ」
「どれも魅力的だがまずは交渉からだ」
「なるほど、毒入りかもしれない餌には喰いつかない」
「それと人数を制限させてもらう。最大で二人だ」
二人か……なら俺とメリナが行くべきだな。
外交官を選べばどこそこを贔屓していると言われかねない。
そういう意味じゃクルーであり、元連合の組織図に組み込まれていたメリナは立場的に問題ない。
ノイマンはそもそもここから得られるデータだけで満足しているし、日本のゲームや漫画、アニメに夢中になっている。
マリアは兵器関連のデータ収集にご執心の様子、実在する物だけじゃなく過去の遺物や娯楽作品に出てくる架空兵器まで。
外交官は街頭カメラの映像や言語学について語り合っているな。
宗教に関してもちょいちょい話題に出るからそれぞれ好みが分かれているのだろう。
「よし、時間指定は?」
「そちらが決めてくれ。こちらはいつでも構わない」
「そうか、なら」
メリナに目配せをして、ホワイトロマノフを動かす。
ワープ航法で地球ギリギリに接近してからスカイダイビングの要領で専用のスーツを身に纏って大気圏に飛び込み、ポイントの近くでエアジェットを噴射する。
ステルス明細なので誰かに見られる心配も無し、エアジェットはそもそも空気を放出しているだけだから目に見えない。
そして都合がいい事に今は夜間のようで公園内には誰もいなかった。
人がいたらもうちょい対処法を変えていたんだが……まぁ結果よし。
「着いたぞ。迎えを頼む」
「既に」
振り返ると気配のない、ウルフカットの女が立っていた。
こいつ……公安って言ってたし裏を知ってるとは思ってたが、もしかして裏側そのものか?
「初めましてだな。アナスタシア、と名乗っておく。こっちはメリナだ」
「伊皿木弓子よ。歓迎できるかはわからないけど、ひとまずはよろしく」
握手をしてから秘密通路とやらに案内してもらう事になった。
さてさて、俺達の行動は逐一記録がとられているが……どういう方向で話が進むかな。
設定上「化け物になろうオンライン」の半世紀くらい前の話だと思ってください。
特に相互関係はないけど、知ってるとニヤリとできる程度。
ついでに化け物になろうオンラインのスピンオフというか、別主人公別ゲー同一世界の作品を投稿しました。
よかったらそっちも見てね!




