出発!
こうして地球への旅立ちの日が来たのだが、ルディと直営のアロアニマ10機、そしてホワイトロマノフは土産物でぎっちりになっていた。
いや、流石にモデルはあった方がいいだろうという事で宇宙船の中でもグレードの低いのと高いのそれぞれ用意する事になったんだよ。
それをばらして持参する事になった。
ついでに1機戦艦急をマリアが操舵して、コロニーサイズのアトラス級というのをノイマンが操舵している。
そっちも土産物でぎちぎちになっているので相当な量と言える。
具体的に言うなら中小国家の予算が吹っ飛ぶくらいの金額がかかってるし、連合としても結構な出費だという。
それでも用意できたのは、まぁ俺のポケットマネーも含んでいるからだな。
実際アトラス級なら一括で買えるくらいの金額は持っていた。
だが持て余していたのだ。
宇宙は娯楽が多いんだが、その分危険も多い。
結果的に没頭するような趣味にはハマらずに、読書程度に収まっていたから出費が押さえられていた。
あとベッドの上から動かなくてもいい娯楽で、なおかつみんなとわいわいできるのがそのくらいだったともいえる。
VRは面白かったけど、少し遊んでたら宇宙海賊の接近警報聞いて飛び出して、それから遊んでない。
ゲームしててリアルで死にましたは地球でもあった事件だけど洒落にならんからな。
あとメリナが拗ねたので携帯ゲームでポチポチ遊ぶ程度に収まったのである。
実際メリナの欲求解消の翌日とか足腰がまともに動かんからこのくらいでちょうどいいというのもあって、結局俺の財布は潤っていく一方だった。
金を一ところに留めるのは良くないというが、ぶっちゃけ電子マネーオンリーの世界でそれはあまり当てはまらんようだ。
なにせ計算機の上で数字がパカパカ変わるだけだからな。
0が万にも億にもなるような状況じゃ貨幣価値とか信用創造というのがあてにならなくなってくる。
金銭だけは統一された電子マネーだから、国が違っても両替とかで面倒なことしないで済むのがいいよね。
「で、ぶっちゃけ聞きますけど……今回の外交、どのくらい成功すると思います?」
「連合含めて繋がりができれば御の字、データの1割でも回収出来たら成功と思っているんだろうよ。その上で答えるなら向こうの想像より100倍の対価が帰ってくる」
「そんなに?」
「元々連合の目的はヘリウム3だ。それの採取目途が立つなら十分お釣りがくると考えているだろう。だが相手が悪い。ヘリウム3が大したことないと思える程度の情報をぶん投げる事ができる」
「……聞く限り、相当アレな国だと思うんですけど」
「そうだな、俺も歴史を思い返してみるとやべー事やってた国だと思う」
戦国時代とか鎌倉時代とか人間蠱毒みたいなもんだったしな。
寝ても覚めても戦の事ばかりだったし、それが落ち着いてからも刃傷沙汰はしょっちゅうあった。
その裏にいた奴が誰かとか、オカルト的な方面が云々とかは引っこ抜いても現地の人間が嬉々として殺し合いしてた国だ。
それが近代化したら海外と戦争になって、負けたと思ったら今度は経済的にのし上がって技術大国になりました。
周辺諸国からしたらふざけんなと言いたくなるだろうけど……刀の製法とか考えるだけでも技術は凄かったんだよな。
なんかの撮影で銃弾ぶった切れる刀が100万円もしないと知った時はやばいとしか言えなくなった。
「まぁ、頭のネジは吹っ飛んでるが技術の進歩はそこそこの速度だ。そこにカンフル剤ぶち込みに行くだけだから大事にはなるけど、連合に砂かけるような事にはならんよ」
「だといいんですけど……」
「食い物を粗末にする、国の象徴を無下にする、神域で馬鹿なことをする、これらだけがタブーだ。もっとマナー的な部分を言えばキリがないが、道端で踊らないとか勝手に人の家に入らないみたいな当たり前を守っていれば大丈夫だ」
「それは……普通の事では?」
「いや、こっちじゃ宗教ってほとんど廃れてるだろ。そういう意味じゃ神域がどういうものか理解しにくいだろうしな」
宇宙に進出した人類は神の存在まで科学に落とし込んだ。
まぁ端的に言えば水槽の中の脳とか、世界5分前創造説とか、そっち方面に「上位存在はいる、神と呼称できる上位の人類である」という内容で。
だから神社とか寺、教会みたいなのはほとんど存在しないが、一方で精霊信仰とか付喪神信仰みたいな物を大切にしようねというのは残っているのだ。
これは単純に物資が足りてない国家もあるからという理由だけどな。
「国の象徴っていうのは?」
「あー、帝国で言うところの皇帝? 実際には権力はないんだが神の子孫って扱いで国のトップに立ち続けてる。無下にされてたというわけじゃないけど、権力の象徴程度でしかなかった時代もあるし、本当に神みたいに崇められてた時代もある。そういう相手」
天皇陛下に関しては俺の貧弱なボキャブラリーで勝たれる事は少ない。
その辺の理解がない相手になってくるとな……ローマ法王とかわかるならもうちょい話しやすかったんだが。
「国と宗教のトップと思っておけばいいよ」
「なるほど、じゃあ食べ物は? 粗末にすると言っても色々ありますよね」
「食い物で遊ぶな、注文したら残さず食え、地面に叩きつけて踏みつけるような真似したら殺すぞ」
「……それ、アナさんの意見ですか?」
「いや、国民全体の意志みたいなもん。SNSで食い物投げ捨ててみな、3秒で炎上するぞ」
「やるわけないですよ。そしてやりたくもないです。何が好きで炎上したがるんですか」
「目立ちたくて炎上する輩はいるぞ。ネットの発達に人間の精神性が追い付いていないから。三大欲求に承認欲が追加されそうだなと思ってるよ俺は」
「あぁ……まぁ、うちのクルーなら大丈夫だと思いますけど」
「外交官はどうかねぇ」
一応今回は外交官を数人連れてきている。
連合から5人、ヘパイストスから2人、ベルセルクから1人だ。
合計8人だが、こいつらにはデータで注意事項を送ってある。
意外とベルセルクは神域に関しては納得してたし、ヘパイストスは象徴に関して理解を示していた。
ただ連合は……なんというか、複数の惑星国家が集まったという事もあって反応がまちまちだったんだよな。
ただみんな食い物に関しては首をかしげていた。
満腹で食えないならいいじゃない、という意見が外交官全員の意見だったが、そもそも食えない量を頼むんじゃねえよと言って理解させた。
それでも「現地のこと知るためなら多めに注文したい」と言い張ってたのを殴り飛ばして理解させたけど……なにも起こらないといいな。
なにせ宇宙の法則が乱れかねないオカルトがいるから。
というか俺みたいな浅瀬でちゃぷちゃぷオカルトの塊見てた人間でもやばいと思っているんだ。
政治的にかかわるとなったらどんな深みに落とされるかわかったもんじゃないから、俺も覚悟を決めていこう。




