フラグは積み重ねるもの
目が覚めて、コックピットに向かいながら頭を抱える。
さて、どうしたものか……。
「おはようございます、アナさん。随分お悩みのようですが?」
「あぁ、めっちゃ悩んでる。疲れてる脳みそでももう少し酷使するべきだったなと」
「というと、地球という惑星への旅についてですか?」
「そうだ」
安請け合いしすぎた、というのが本音である。
万が一の可能性に賭けるしかないとはいえ、それでも確率的に考えたら……まぁ俺の知ってる地球である可能性が上だよなぁ。
いや、計算の仕様がないんだけど、少なくとも普通に平和な地球という可能性なんてありえないと警鐘がね……。
「えーと、どんな惑星ですか?」
「地表の7割だか8割が海水、塩水の惑星で残った土地で人類が生存している。骨董品みたいな兵器で戦争しているというのが表向き」
「表向き?」
「裏でオカルトというか、こっちで言うならサイキック的な能力で権力牛耳ってる奴らがいる。そいつらの気まぐれで戦争になったり、あるいは仲間割れで宗教紛争になったりする」
「……あの、流石に信じられないんですが。サイキックだってまだまだ研究途上ですよ? それを表立っていないとはいえ使いますか?」
「いや、あえて例えるならサイキックってだけだ。例えばそうだな……俺がナノマシン入れる前にメリナと格闘戦した事あっただろ」
「あー、はい。懐かしいですね。あの模擬戦」
「あれが見世物、プロレスとかそういう世界のやり方」
「……私の記憶違いじゃなければ首から上吹き飛ばすような蹴りとか飛んできてましたけど」
あー、やったなぁ。
首を吹っ飛ばすんじゃなく首から上を消し飛ばすような蹴り。
「あれ、一般的な護身術の延長」
「護身術で殺しの技があるのはどうなんです?」
「そう思うだろ。コロニーで石を投げて誰かのカバンに入るくらいの確率でアレが護身術にしかならない相手がいるんだよ」
「……結構多くないですか?」
「割合的には100人に1人」
「うわぁ……」
俺が知る限りだと、格闘技とかの舞台には出てこない。
兵士になることも無い。
ただそういう職業についた後で、そういう人間やめました的な事してくる奴はちょいちょいいた。
何故か俺もその中に含まれていたらしいが、正直な所一般人に毛が生えた程度だと思う。
ナノマシンあってようやく人間卒業初級くらいじゃないかね。
メリナは技術こそないけど、パワーだけ見れば人間卒業中級かな。
アンドロイドのマリアやEFのノイマンで初段ってところだ。
「強さ比べで上位の連中ならマリアを片手であしらえる。殺しても死なない、首から上消し飛ばしても再生する。そんな連中がゴロゴロいる」
「……今から胃が痛くなってきました」
「安心しろ、俺も胃と頭が痛くて吐き気がする」
「反物質砲、効きますかね」
「惑星は吹っ飛ばせても人間卒業検定書所有者は宇宙遊泳くらいすると思うぞ。まぁ俺の知ってる地球とパラレルの可能性がある。あってくれ」
「ついに祈り始めた……」
「まぁ真面目な話するなら科学力の一点は先を行ってるから交渉はできるはずだ。こっちから刺激しなければ向こうだって無体なことはしないだろうし、接触があったとしてもそこまで面倒ごとにはならない。あとは餌を上手くちらつかせて、喧嘩を売らない事だな」
「……マリアとノイマンに言い聞かせておきます」
「そうしてくれ」
あの二人はなぁ、短気というか……思想からして直情的なんだよ。
ノイマンなんかは未知か古めかしいというべきかわからん技術を見て飛びつくだろうし、マリアは好戦的な性格だからいざとなったら殴り飛ばせばいいやくらいにしか考えて無さそう。
お前めっちゃ金かけた人工知能に知性宿ってる?
蛮族インストールしてない?
「ここまでくると興味本位と怖いもの見たさがあるんですが……その人間卒業の最上位ってどんな人です?」
「俺も具体的なことは知らないが……あー、あそこにでっかいビルあるよな」
連合の惑星上にいる俺達、モニター越しに見えるデカいビルを指さす。
「あぁ、省庁が入っている建物です。耐震性はもちろん隕石が直撃しても無傷という触れ込みですね」
「あのくらいなら包丁一本で輪切りにする」
「……今からキャンセル、無理ですかね」
「俺もそうしたいけどさ……蛮族みたいな連中いかせてみな。宇宙滅びるぞ」
「……勝手知ったるアナさんが最適ですね」
「だな……」
ため息が重なった。




