第34話 エルンストの推理
姉妹の優しい抱擁を見つめながら、彩斗はあれが本来のスララとアルシエルの姿なのだと思った。
姉のことが大好きな妹と、妹を優しく見守る姉。集落の元々の生活で、ベリアルさえ現れなければ、二人はきっと穏やかな生活を送っていた。
スララはいつも笑顔を浮かべていて、アルシエルがそれを暖かく包み込む。時にふざけて子供に返ることもあるだろう。喧嘩もすることもあるのかもしれない。けれど最後は、笑って触れ合って、姉妹の絆を深めていく――。
「良かったね。スララ……本当に良かった……」
思わず彩斗から、涙がにじみ出る。
今まで越えてきた激しい闘技の苦労が、憂いが、報われたように感じ、胸がいっぱいになる。
甘えた声でスララが「お姉ちゃん、お姉ちゃん」とささやけば、アルシエルが「ああ、お前は大事な妹だ」と愛おしさのたっぷり込もった声で抱き締める。
いつまでも、彼女らを見ていたかった。
幸福なひと時を、心ゆくまで堪能していたかった。
けれど暖かな時間は――いつまでも続かない。
隠れていた闇の存在は未だ健在で、この瞬間がひと時の平穏であることを忘れてはならない。
「――彩斗、少しいいであるか。こちらへ来てほしいである」
それまでずっと思索にふけっていたエルンストが、静かに口を開いた。
「え、あ、はい」
怪訝な表情で、彩斗は少し離れた彼の方へ行く。
エルンストは神妙な顔つきをしていた。これほど真面目な表情を見せていたのは今までになく、自然と、彩斗も釣られてしまう。
強張った顔の彩斗の前で、エルンストはポケットからガラス管を取り出した。
「……それは?」
エルンストの取り出したのは薄紅色の液体だった。透明感があり、いくつかの気泡が浮かんでいる。エルンストが軽く振ってみせれば、ガラス管の中で薄紅色の液体がちゃぷりと音を立てる。
エルンストは、彩斗の問いには直接答えず、
「彩斗、さっき君はスララに押し倒されて肘を擦りむいたであるな」
途端に、彩斗はスララの胸の感触を思い出して赤くなる。
「え、お、押し倒されたなんて……あ、本当だ、擦りむいてますね」
自分の肘を確認してみれば、確かに擦りむいた痕がある。硬い床で擦った右肘から、じわりと血が滲んでいた。
「これが……何か?」
「その血を少し、このガラス管の中へ垂らしてほしいのである」
「……?」
なお怪訝な表情のままの彼に、エルンストはガラス管を差し出した。
意図が掴めないが、彩斗は言われた通り、紅い雫を垂らしてみせた。
二人の様子に、スララとアルシエルも抱擁を止めて視線を寄せる。四人の見つめる中、ガラス管の液体と彩斗の血が交じり合う。
「ふむ……」
ガラス管の中の液体は、彩斗の血に触れて色が変色していった。薄紅色だった液体は、深い闇のような色になり、およそ五秒経った後にまた薄紅色に戻っていく。
「なるほど、なるほど」
「……それが、どうしたんですか」
よくわからない、という顔はエルンスト以外の全員の共通だ。しかしエルンストはその質問へ即座に答えることなく、表情をやや険しくさせると、声を張り上げる。
「まず、皆に断っておきたい。これからワタシが言うことは、極めて重大かつ、衝撃的な内容を含んだものである。話の腰を折らず、最後まで聞いてほしい」
改まった彼の言葉に、全員が怪訝な顔をして顔を見合わせた。
そういえばエルンストは、先ほどのパズル勝負のとき、半分上の空だった。
いや、そればかりではない。もっと前、シャノンが本を取りに行く以前から、彼は極端に口数が減っていた。
「……あの、いったい、何について話すつもりですか?」
「質問に答えよう。誰が、ベリアルなのか――その疑問についての解答である」
「え――」
緊張が皆の中で走り抜けた。それぞれが電撃でも受けたかのように硬直する。
「ベリアルは、じつに巧妙に我々を欺き続けた。我々は少しも疑問を抱くことなく、彼の手のひらの中で踊らされていた。ワタシも、つい先ほどまで、気が付かなかったほどである。見事だと言う他はない」
エルンストは続けた。
「事態はなかなかに深刻である。おそらくは真実に気づける可能性は低かったと思われる。しかしいくつかの偶然と幸運が、ワタシを真実に近づけた。ベリアルは、極めてワタシたちと近いところにいたのだ」
謎めいた言い方に一同は焦れる。それをエルンストも感じていた。彼は坂を駆け上がるように、真実を次々と語っていく。
「ベリアルは当初、アルシエル・ゲームの開催を知って、おそらくはすぐにアルシエルを殺そうと考えたであろう。そもそもが、己が考案したベリアル・ゲームの模倣。ガーゴイルに囲まれて、牢屋での窮屈な生活を送らされ、他のペアと同じく長い闘技の戦いを強いられることを、屈辱だと思わないはずがない。召喚された当初は、かの魔神は殺意を抱いていた」
彼の話は続く。
「しかしベリアルは考えを改めた。楽しい余興を思いついたからである。アルシエルは殺す。それは変わらない。しかし普通に倒してしまったのではつまらない。何か、工夫を凝らしてから殺した方が、愉悦を得られると考えた。そのために演技をすることを決めたのである」
「まさか……そんな」
背筋が泡立つような感覚が、彩斗たちに訪れる。
「ベリアルはとある少女とペアになった。ベリアルはわざとゲームに怯えたフリをし、不安がり、恐怖に震えるフリをし続けた。その結果、ペアの少女はベリアルが苦しそうな時も、不安そうな時も、怖がる演技をしていた時も、彼のためにいつも隣で声をかけ続けていった。ベリアルは内心で、それをあざ笑っていたのである」
「……」
固唾を呑む皆にエルンストは硬い声音で語る。
「ベリアルは演技をしながら、闘技で勝利を収めていった。凶悪な殺人鬼や巨人との戦い。老獪な犬や稀代の人形師との激闘。ぎりぎりながらも勝利を収める一生懸命な姿は、その演技は、絶妙だったと言う他はない。誰も彼もが、まさか彼をベリアルだとは考えなかった。彼はいつでも大人しい性格を演じ、柔らかい物腰をし、巧みに少女を、私を、アルシエルを、その他全てのペアを欺いていた。彼にとっては演技など造作もない。闘技に勝つことも容易なことだ。何しろ彼は自在に変身する術を持ち、過去にはエレアントの全ての村や町を襲撃し、大戦でも人と魔物の軍勢を蹴散らしたのだから。ベリアルはアルシエル・ゲームの中で、最も弱そうな人間を演じつつ、密かに笑っていたのである」
寒気がスララとアルシエルの体を包み込む。
エルンストが一度目を瞑り、硬い声音で続ける。
「さて。ここまで言えば自ずと解答が得られよう。ベリアルはどこにいるのか。誰で、何をしていたのか。皆を欺き続け、影で笑い、アルシエルが隙を見せるのを今か今かと待ち構えていた、稀代の魔神は、ずばり――」
エルンストの伸ばした指が、視線が、『彼』を指し示す。
「――彩斗。君が魔神ベリアルである。間違いはあるか?」
愕然とした視線がスララとアルシエルから発せられる。誰よりも弱く、無害だった少年へ、三つの視線が集中する。
「……え?」
はじめ、少年は呆けたような声を出しただけだった。しかしスララの視線を受け、アルシエルに見つめられ、エルンストの強い眼差しを受けて、小さく笑い始めた。
「はは、嫌ですよ、エルンストさん。そんなわけないじゃないですか。ボクが、ベリアル? 冗談にしてもやり過ぎです。ほら、スララもアルシエルも固まってるじゃないですか」
エルンストは身じろぎもせず、じっと少年を凝視している。
「いやいや、違いますよ。違いますって。どうしてそんな眼で見るんですか。やめてください。ボクは、ベリアルじゃありません。それは本当のことです」
「では聞こう。闘技の最中、なぜ君は、他の者より長く、ゲヘナを放射できるのであるか?」
沈黙が一瞬降りる。
「……はあ。なぜと言われても困ります。そもそもボクは、自分が長くゲヘナを出せるなんて、今知りました」
「ワタシはこれまでの闘技を全て観察していたのである。たまに君やスララ、フレスベルグと会話しながらも、目だけはずっと闘技へ注いでいた。その上で言おう。闘技中に、三度まで撃てるゲヘナ――これは一回につき、最大で四・七秒まで放つことができるのである」
エルンストは、右の手首の腕輪を掲げてみせた。
「誰もが四・七秒以上はゲヘナを出せてはいなかった。何かの拍子で、それより短く撃つことはあっても、最長時間は変わらなかった。ワタシも先のアルシエルとの闘技中、ゲヘナを三発撃った。だが四・七秒より長くは出せなかった。これは、絶対の限界なのである。闘技の切り札に相応しい、短くもなく、長くもない、絶妙な放射時間。その限界を超えられる例外はただ一人。ゲヘナの本来の使い手、魔神ベリアル。つまりは――彩斗、君である」
エルンストの重心がわずかに変えられた。それは、いつでも機敏に動ける態勢。
「君は夜津木・サイクロプス戦のときは、ゲヘナを最大で三・九秒まで出した。そこまではいい。普通である。しかし次のガルム・マルギット戦のときは、倍近い、九・二秒も出していた。明らかな異常。ワタシはそのとき、思わず動転して、夢でも見たと思ったほどだ」
徐々にエルンストの眼が、険しくなっていく。
「続くアルシエル戦の時では、七秒間のゲヘナを出していた。これでも十分に異常である。彩斗、なぜ君は他より長くゲヘナが出せる? この異常をどう説明する? 理由を聞いてみたいであるな」
海の底を思わせる静けさの後、彩斗の口に浮かんだのは苦笑の形。
「えっと……わかりません。答えようがないです。ボクは、いつも必死でゲヘナを撃っただけなんです」
その口調に不自然さはない。
ごく普通で、いつもの彩斗だ。
しかしエルンストは、あくまで彼から視線を外さない。
「もう一つ、おかしな点がある」
片手で科学器具を掲げる。
「キミにはさっき、肘の血をガラス管に垂らしてもらった。その結果、液体は深い闇のような色になった」
「そうですね。意味はよくわかりませんでしたけど」
振り返って、エルンストはアルシエルへと問いかける。
「アルシエル、この世界の魔法陣とは、術者の血液によるもので合っているであるか?」
「……ああ、そうだ。例えばゲームの開始と終了を司る、そこの魔法陣は、ベリアルの血でできている。それに魔力を込め、魔法陣を発動させていたが……まさか」
「つまりである。そのベリアルの血でできた魔法陣と、いま彩斗から貰った血液が同じものならば、両者はベリアルという証明になるな」
「……まさか、でも、そんな。まさか……彼が本当に……」
「確かめればわかるのである」
うろたえるアルシエルの目の前で、エルンストが薄紅色の液体の入ったガラス管を掲げる。それを皆にわかりやすいように見せつける。
「この液体は血液に反応し、血液ごとにそれぞれ違う色を放つ習性を持っている。いま、その証拠に、ワタシの血を二回に分けて反応させてみよう。同じ人物なら、何度でも同じ色に変色するのである」
歯で人差し指を軽く切って、エルンストは紅い雫をガラス管に滴らせる。
液体は間もなく変色する。一回目と二回目、どちらも薄紅色から、濃い目の灰色に変わっていった。そして数秒後に元に戻っていく
「ワタシの場合は、反応したら濃い灰色になるのであるな。……念のため、誰か一人、同じ実験をしてみるであるか?」
全員がその必要はないと首を横に振った。
「では本番といこう。この液体を、魔法陣に垂らしてみる。そのときに出た色が、さっき採取した、彩斗の血液と同じ反応であるならば――両者は同一人物。つまりは魔神ベリアルということになるのである」
「……彩斗」
スララが不安そうに少年を見た。しかし彼は無表情でエルンストを見つめるのみ。
液体が、魔法陣へと垂らされる。
彩斗がさっき採取された血液は、『深い闇の色』になった。
もしもそれと同じ変色をすれば、確定だ。
果たして魔法陣は――『深い闇の色』に変化した。
「同じだ! 捕まえるのである!」
「待って! エルンスト、待ってっ!」
二つの激しい声が轟いた。
片方はエルンストで、片方はスララ。
白衣の裏地から短剣を取り出して、彩斗に飛びかかろうとしたエルンストを、スララが塞ぐように立ちはだかった。
「結論は出たである。そこを退くのだ、スララ」
「待って。少し待って、エルンスト」
両手を広げて、困った顔をしてスララは彩斗を庇う。
「なぜであるか? 検証して出た色は同じであった。ベリアルの描いた魔法陣と、彩斗から採取した血液は、どちらも濃い闇のような色。彩斗は――魔神ベリアルであった。全ての元凶、アルシエルの復讐の対象、残虐なベリアル・ゲームの考案者。恐るべき魔神は、ワタシたちのすぐ近くにいたのである」
「でも……そんなはず、彩斗はわたしと、ずっと一緒にここまで……」
「ゲヘナの異常な放出時間。血液の調査での一致。どちらか片方だけなら、ワタシも確信は得られないである。しかし両方が揃っている。彩斗がベリアルだと答えは出ている。スララ、そこを退くのである」
「で、でも、おかしいよ~。彩斗は最初の頃、ずっと脅えてた。このゲームに本気で怖さを感じてたんだよ。わたし、わかるよ。いつもそばにいたんだもの。彩斗は、絶対に、ベリアルじゃない」
「そこに確固たる根拠はあるか? ゲヘナの異常時間をどう説明する。血液の結果は? どう考える?」
「それは……でも、彩斗がベリアルなんてこと……」
「埒が明かないであるな。――アルシエルっ!」
エルンストの怒鳴り声に、びくりと彼女は反応した。
「あなたはこの中で唯一、ベリアルと直接会ったことがある。村に襲撃してきたベリアルと、彩斗の気配はどうであるか? どこか似ていないであるか? この無害そうな少年の奥底に、残虐な魔神の気配が全くないと、言い切れるであるか?」
「それは……」
アルシエルは一度口ごもったが、すぐに思い返したように言った。
「確かに……違和感はあった。この少年が、偶然に助けられたとはいえ、無事に二回も闘技を切り抜けられるのかと、少しは疑った。私との闘技のときも、全ての攻撃は、かすっただけだ。エルンストへの攻撃は直撃したのに、『なぜか』彩斗は、かすっただけで済んだ。まさか……まさか……」
彩斗が口を開く。
「それは違います。ボクがかすり傷なのは、アルシエルさんが、心の底では戦いを拒否していて、直撃を避けたいと思っていたからです。さっき、ボクはそう言いました」
エルンストが首を振って否定する。
「だが、それはワタシに対しても同じでないとおかしいである。アルシエルはワタシに対しては、攻撃を『直撃』させた。我々に本気で攻撃を当てる意思がなかったのなら、彩斗にはかすり傷で、ワタシへは直撃というのは、矛盾しているである」
「それは……でも、それは……。違うんです、エルンストさん、ボクは違う。ベリアルではないです――」
刃の煌めきが、彩斗の胴体へと迫っていった。
エルンストが短剣を投擲したのだ。しかし、スララが咄嗟にリコリスで盾を作り、受け流す。
「退くのである! スララっ!」
「で、できないよ~。わたし、彩斗を信じたいよ。彩斗は敵じゃない。ベリアルなんかじゃないよ」
「退かなければ力づくで君を行動不能にするのである。ベリアルの策略にはまるわけにはいかない。いま、我々は全ての元凶を倒せる立場にある。最大にして唯一の好機を得ている」
「待って、エルンスト。もう少し考えさせて。彩斗は……彩斗はわたしの、パートナーだよっ」
「ゲヘナの異常と血液の一致。この事実がある限り彩斗はベリアルである。退け、退くのだ、スララ! 共に最後の闘技を乗り越えた同士を、傷つけたくはない!」
「もっと調べれば何かわかるかもしれないよ。だから待って、エルンスト、今はやめて」
「エルンストさん! ボクは、ベリアルじゃありません。人間です。及川彩斗です!」
「フレスベルグっ!」
エルンストは、大音響で叫びを上げた。
「千里眼で見ているであろう! スララと彩斗を、攻撃せよっ!」
『――わかった』
迷いの時間は、ほんの一瞬。猛烈な風の弾丸が、彩斗の背中へ直撃した。
部屋の入り口から飛び込んできたそれは、一瞬で彩斗を打ちのめし彼を転倒させ、さらに第二波、第三波と立て続けに放たれ、彼を部屋の隅にまで吹き飛ばす。
「彩斗っ!」
助け起こそうとしたスララだが風の弾丸を受けて弾き飛ばされる。リコリスの鎧は衝撃までは殺せない。風が走る。音速の弾丸となって襲いかかる。
短い悲鳴が上がった。
彩斗とスララは部屋のそれぞれ反対側まで、引き離された。
『あんまり気分良くない。早く終わらせて』
風のルーンの力によって声を届けさせ、フレスベルグが不満を口にする。
「……ワタシとて、好きでやっているわけではないである。先の闘技が終わるまで、彩斗は味方だと思っていた。しかし共に戦って、間近で彼の異常性を目にして、よく考えてみた結果――導かれる答えは、これしかないのである」
複雑そうな表情をして、エルンストは続けた。
「他にどんな説明ができる? ゲヘナの異常と血液の説明を覆せるであるか? 他にこれを否定できる材料が、一つでもあるか? ――何でもいい。彩斗、スララ、アルシエル、フレスベルグ、どんな些細な証拠でも構わない。彩斗がベリアルではない証拠があれば、ワタシは止めるのである。誰か、彩斗がベリアルでないと、証明できるのであるか?」
沈黙が部屋中を包み込む。
誰も、エルンストの導き出した結論を覆すことができなかった。彩斗はベリアルであり、全ての元凶。それはもう覆せない事実となって彼らに伸し掛かっていた。
「やはり、反論できないか。それならば災いは滅ぼすべきであるな」
エルンストがポケットから複数のガラス管を取り出す。
「ワタシとフレスベルグだけで魔神ベリアルを討滅できるかは不明だが、やるだけやってみるしかないであるな」
『同感。久々に命をかけた戦いになる。面倒を超えて苦痛』
フレスベルグは続けた。
『でも魔神ベリアルは倒す。じゃないと終わらないし。安心して帰れないのは嫌。フレスベルグは元の世界に帰りたい。いつまでもゲームに巻き込まれたままなんて、冗談じゃない』
呻き声を上げて彩斗は彼らを見る。スララも立ち上がろうとするが、突風を受けて壁際に釘付けにされる。
エルンストがガラス管の中身をぶちまける。深緑色の液体が霧状に変化し、床に、パズルのピースに、次々と染みこんでは棄科学の支配下に置かれていく。
螺旋を描き、無数のピースがエルンストの騎士のごとく踊り回る。号令をかければ、それだけでピースは超速の弾丸となり、彩斗を貫くだろう。
エルンストは、わずかだけ瞑目して腕を振り上げた。
フレスベルグが力を集中させる。特大の暴風を生み出すべく、浅い呼吸音が空間に渡る。
「敵を/穿――」
しかし、その直後。




