第22話:秋の味覚キノコ狩り!~魔王軍からの刺客、柿剥きの刑に処される~
日本アルプスに抱かれたこの静かな盆地にも、本格的な秋の足音が近づいていた。
朝晩の空気はピリッと冷たく引き締まり、周囲の山々は赤や黄色、そして燃えるような黄金色へとその衣を替え始めている。澄み切った青空の下、実家の縁側に腰掛けた俺──元ブラック企業勤務の社畜であり、現在はしがない専業農家のユウトは、熱い緑茶(※自家栽培の霊樹の葉を使用)をすすりながら、平和な朝の風景に目を細めていた。
「ふぅ……美味い。やっぱり秋の朝は最高だな。空気も澄んでるし、何よりご飯が美味しい季節だ」
俺の足元では、真っ白なモフモフの巨体を誇る愛犬のポチ(※S級神獣フェンリル)が、気持ち良さそうに丸くなって寝息を立てている。その寝息に合わせて、周囲の空気がキラキラとダイヤモンドダストのように輝いているのは、きっと信州の朝露が朝日に反射しているのだろう。田舎の自然は本当に美しい。
裏庭の方に目を向ければ、先日、用水路の掃除をしたことで居着いてしまった青いトカゲのブルー(※水神ブルードラゴン)が、器用に口から一定量の水を吐き出し、古い水車をゴットンゴットンと、リズミカルに回し続けてくれている。彼のおかげで我が家の水車小屋は、今や24時間フル稼働の全自動エコシステムと化していた。
そして、その水車小屋の軒下には、信州・飯田町が世界に誇る名産品「市田柿」を作るための、壮大なオレンジ色のカーテンが吊るされている。数千個にも及ぶ柿の皮を剥き、紐に吊るして天日干しにするという、途方もない手間と根気が必要な農作業。それを現在、たった一人で、しかも信じられないような超高速でこなしている男がいた。
「フシュルルルルルルッ……!!」
黒い重厚な鎧を身にまとい、その上からなぜか全身を包帯でぐるぐる巻きにされた大男──先日、実家の柿の木をちょっと剪定したら空の裂け目から落ちてきた、中二病っぽいコスプレイヤーのゼクサル君(※魔王軍第一軍団長)である。
彼は両手に持ったピーラー(※ホームセンターで300円)を、肉眼では捉えきれない速度で回転させていた。シュバババババババッ!という空気を切り裂く音と共に、オレンジ色の柿の皮がまるで意思を持ったリボンのように宙を舞い、瞬く間にツルツルの美しい果肉が姿を現す。
さらに彼は、剥き終わった柿のヘタに麻紐をくくりつける作業さえも、見えない千手観音のごとき動きでこなしていく。
「すごいぞ、ゼクサル君! 完全に皮剥きのコツを掴んだね! その調子なら、今日のノルマの五千個も午前中には終わるんじゃない?」
俺が縁側から声をかけると、ゼクサル君はピーラーを動かす手を一切止めることなく、ギラリと光る赤い三白眼をこちらに向けた。
「……ハッ! もちろんでございます、創造主様! かつて魔王軍第一軍団長と呼ばれたこのゼクサル、創造主様より賜りし神聖なる御業『無限剥皮の儀』を完遂するため、我が究極の暗黒闘気『虚空斬』の魔力操作をミクロン単位で最適化いたしました! どうかご覧くださいませ、この摩擦抵抗を極限までゼロに近づけた至高の剥き筋を! このゼクサルは今、柿と一体化し、創造主様の御心、ひいては宇宙の真理へと近づいているのを感じますぞォォォッ!!」
「あはは、今日も元気いっぱいで何よりだよ。無理しないで、適度に休憩も取ってね」
相変わらず設定がブレない面白い人だ。それにしても、あんなに重そうな鎧を着て包帯まで巻いているのに、よくあんなに機敏に動けるものだ。きっと都会のストレスから解放されて、農作業の単純なリズムに心が癒やされているのだろう。元ブラック企業戦士の俺には、彼の気持ちが痛いほどよく分かる。無心になって手を動かすのは、最高のメンタルケアなのだ。
「さてと……。今日は天気もいいし、秋の味覚を探しに裏山へ行こうかな」
俺は縁側から立ち上がり、物置から大きな竹カゴを取り出した。秋といえば、なんといってもキノコである。
子供の頃、じいちゃんがよく「裏山の奥には、信じられないくらい美味い松茸が生える秘密の場所があるんだ」と自慢げに語っていたのを思い出した。当時はただのホラ話だと思っていたが、今の俺なら、その秘密の場所を見つけられるかもしれない。
「創造神様、お出かけでございますか?」
キッチンから、割烹着姿のエルフの女王・エルリアさんが顔を出した。金色の美しい髪を後ろで束ね、手には味噌汁のお玉を持っている。相変わらず、ファンタジーと昭和のオカンが融合したような、脳がバグる出で立ちである。
「うん、ちょっと裏山にキノコ狩りに行ってこようと思って。お昼ご飯には、採れたてのキノコでお吸い物か、炭火焼きにしたいなって」
「キ、キノコ狩り、でございますか……!? あの、神々の試練場(S級ダンジョン)のさらに奥深く、太古の災厄が眠るという『深淵の森』へ……!?」
「いやいや、ただの裏山だから。すぐそこだし、お昼前には戻るよ」
エルリアさんがなぜかガタガタと震え始めたので、俺は苦笑しながら竹カゴを背負った。
「ワフッ!」とポチが立ち上がり、「僕も行く!」とばかりに足元にまとわりついてくる。
「よしよし、ポチも一緒に行こうな。鼻がいいお前がいれば、松茸もすぐに見つかりそうだ」
俺はスマホを取り出し、いつものようにドローンと連動させて配信アプリを起動した。最近、俺の農作業垂れ流し配信は、なぜか海外の視聴者を中心に大バズりしており、同接(同時接続者数)が常に数十万人を超えるという異常事態になっている。今日も開始ボタンを押した瞬間から、滝のようなコメントが流れ始めた。
【待機10万人突破! ユウト様おはようございます!】
【お、今日はキノコ狩りか! 秋だねえ】
【裏山(S級ダンジョンの深層)での素材採取クルー!?】
【前回、古代地龍をクワでワンパンして畑の肥料にした男だぞ。キノコ狩りとか言いつつ、また生態系を破壊する気だろwww】
【ゼクサルさんが背景で超高速で柿剥いてて草。すっかり農家のお手伝いさんじゃねえか】
【エルフの女王の割烹着姿、今日も最高です。お味噌汁飲みたい】
「おはようございます、皆さん。元社畜のユウトです。今日はですね、実家の裏山に入って、秋の味覚の王様『松茸』を探してみようと思います。じいちゃんが遺した地図によると、この奥に群生地があるらしいんですよね」
俺はドローンに手を振りながら、ポチと一緒に裏山の獣道へと足を踏み入れた。
どこからともなく、青ジャージを着たゼロさん(※元・伝説の暗殺者)がシュタタタッ!と木々の間を飛び移りながらついてきている気配がするが、彼は画面に映りたがらないので放置しておくことにした。
* * *
裏山の獣道を登ること約三十分──
普段なら息が切れるような急斜面だが、農作業で鍛えられた(※無意識の限界突破によるステータス異常)俺の体は、羽のように軽く、全く疲れを感じなかった。
「おっ、ここら辺かな。じいちゃんの地図だと、この大きな杉の木の根元あたりなんだけど……」
俺は落ち葉をガサガサと掻き分けながら、地面を注意深く観察した。すると、ポチが「クゥン!」と鳴いて、ある一箇所を前足で指し示した。
そこには、落ち葉の間からまるで自らが発光しているかのように、淡い黄金色のオーラを纏った巨大なキノコが、ニョキニョキと数本生えていた。周囲の空気は、そのキノコから発せられる凄まじいまでの芳醇な香りで満たされており、一口深呼吸しただけで、全身の細胞が歓喜の声を上げるような、あり得ないほどの生命力が肺に流れ込んでくる。
「うおおっ! すっげえ! こんな立派な松茸、見たことないぞ! 傘の開き具合も完璧だし、何より香りが桁違いだ!」
俺は興奮しながら、その黄金に輝く巨大なキノコの根元を優しく掴み、スポッと引き抜いた。
【ファッ!?!?!?】
【ちょ、待て待て待て待て!!!!】
【それ松茸じゃねえええええええええええええええ!!!!】
【『神々の仙薬キノコ(アンブロシア・マッシュルーム)』だああああああ!!!!!】
【神話の時代に一度だけ文献に登場した、一口食べれば不老不死に至り、全魔力回路が宇宙と直結するという伝説のオーパーツ!!!】
【なんでそんなもんが裏山に普通に生えてんだよwww】
【しかも素手で引っこ抜いた!? 致死量の神気で普通の人間なら触れた瞬間に肉体が塵になるはずだぞ!?】
【ユウト様「お、美味そうな松茸」】
【バグだよ、この農家マジでバグり散らかしてる……】
コメント欄がかつてないほどの勢いで発狂しているが、俺はニコニコしながら、その素晴らしい松茸(?)の香りを堪能していた。
「いやぁ、大豊作だ! ポチ、お手柄だぞ! これならカゴいっぱいに採れそうだ。今夜は松茸ご飯と、炭火焼きのフルコースだな!」
俺が次々と黄金のキノコをスポンスポンと引き抜き、竹カゴに放り込んでいくたびに、ドローンのカメラ越しにも伝わるほどの強烈な「神の波動」が周囲に拡散していく。
背後の木の上に隠れていたゼロさんが、キノコの香りを嗅いだ瞬間に「オオォォォ……ッ! 我が第三の目が、今、完全に開きました……!」と謎の悟りを開いてそのまま気絶して木から落ちてきたが、まあいつものことなので気にせず、彼にはキノコ運びを手伝ってもらうことにした。
* * *
その頃──
ユウトの実家、水車小屋の裏手の空間が、ガラスが割れるように音を立てて砕け散った。
漆黒の闇の中からヌラりと姿を現したのは、全身を禍々しい影のオーラで包み込んだ痩身の男だった。彼の目は蛇のように冷酷で、両手には触れた者の魂を即座に刈り取るという、呪われた双短剣『絶望の牙』が握られている。
魔王軍第二軍団長、影の暗殺鬼『ヴァルグ』。彼は、突如として消息を絶った、第一軍団長・ゼクサルを捜索し奪還するため、魔王の勅命を受けてこの見知らぬ土地へと空間跳躍してきたのである。
「クックック……。ゼクサルの魔力反応を辿ってみれば、こんな長閑で魔素の欠片もない辺境の農村とはな。あの戦闘狂め、一体どんな卑劣な罠にハマりおったのだ? まあよい、我が絶対の暗殺術でこの村の人間どもを皆殺しにし、ゼクサルを救出──」
ヴァルグが残忍な笑みを浮かべ、村の惨劇を想像したその時──
「シュババババババババッ!!!」
水車小屋の軒下から、凄まじい風切り音が聞こえてきた。ヴァルグが警戒しながらそちらへ視線を向けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「ゼ、ゼクサル……!? 貴様、そこで何をしているッ!?」
ヴァルグの目の前には、全身を包帯で巻かれた魔王軍最強の猛将ゼクサルが、オレンジ色の謎の果実《柿》の皮を、常軌を逸したスピードで剥き続けている姿があった。彼の周囲には、剥かれた皮が黄金の竜巻のように舞い上がり、美しい果肉だけが次々とザルの上に積み上げられている。
「……おお、ヴァルグではないか。遅かったな。貴様も我と同じく、この地を支配する『ファーマー』によって、無限の精神修養を課されるために呼ばれたのか?」
ゼクサルはピーラーを動かす手を一切止めず、悟りを開いた老僧のような、恐ろしく澄み切った瞳でヴァルグを見た。
「な、何を血迷ったことを言っている!? 貴様、洗脳でもされたか! 我は魔王様の命により貴様を救出しに来たのだ! さあ、こんな下劣な作業は放り捨てて、共に魔界へ帰還するぞ!」
ヴァルグが叫び、ゼクサルの腕を掴もうとした瞬間──
「触れるなッ!!!」
ゼクサルから爆発的な暗黒闘気が放たれた。しかしそれは、ヴァルグを攻撃するためのものではなく、ただ純粋に「柿の皮を完璧に剥く」という一点にのみ収束された、極限の集中力だった。
「俺の邪魔をするな、ヴァルグ! 今日のノルマは五千個なのだ! ここで皮の厚さが0.1ミリでも狂えば、極上の市田柿は完成しない! この甘みと渋みの絶妙なバランスこそが俺の魂の贖罪であり、新たなる力の解放なのだァァァッ!!」
「き、貴様……完全にイカれちまったのか……ッ! おのれ、どんな悪魔がゼクサルにこれほどの呪いを……! 許さん、その術者を我が手で八つ裂きにしてくれるわ!!」
ヴァルグが怒りに震え、双短剣に極大の呪詛魔力を込めた、まさにその時──
「あー、疲れた疲れた。でも大収穫だったなー。おや?」
竹カゴに大量の黄金キノコ(※神々の仙薬)を背負ったユウトが、のんびりとした足取りで裏山から戻ってきた。その後ろには、尻尾を振る神獣ポチと、悟りを開いて顔が輝いているゼロが続いている。
「おっ、ゼクサル君。お客さんかい? もしかして、君のコスプレ仲間?」
ユウトは、禍々しい影のオーラを放つヴァルグを見て、気さくに声をかけた。
ヴァルグの蛇のような瞳が、ユウトを射抜く。
(こ、こいつか……! ゼクサルを狂わせた元凶は! 魔力を一切感じない……ただの脆弱な人間。フン、ならば死ねッ!!)
「消し飛べ、下等生物ッ!! 『絶望の影刃』!!!」
ヴァルグは姿を掻き消し、音速を超える速度でユウトの背後に回り込んだ。そして、神の魂すらも切り裂く必殺の呪詛刃を、ユウトの首筋へと振り下ろした。
キィィィィィンッ!!!!
「え?」
ヴァルグは我が目を疑った。ユウトの首筋に触れる寸前、彼の首に巻かれていた薄汚れた布切れ(※ユウト愛用の今治タオル・神気コーティング済)に刃が触れた瞬間、神話級の呪詛を宿した双短剣が、まるで飴細工のようにポキリと根元から折れてしまったのだ。
さらに、ユウトの背負っている竹カゴから溢れ出す、暴力的までに強大な『神々の仙薬キノコ』の絶対的な浄化の波動。そして、ユウト自身から無意識に漏れ出ている、宇宙の理をねじ伏せるほどの『限界突破オーラ(※本人はただの疲労回復だと思っている)』。
それらが一気にヴァルグの全身を直撃した。
「ガ……ァ……ッ!? ア、アアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
ヴァルグの体内で渦巻いていた邪悪な魔力、数千年にわたる暗殺鬼としての怨念、そして魔王への忠誠心。それら全ての負の概念が、一瞬にしてチリ一つ残さず強制的に浄化されていく。彼の全身から黒い影が吹き飛び、代わりに、天使の輪のような清らかな白いオーラがフワァァァ……と浮かび上がった。
「あれっ? なんか今、背中に虫でもぶつかったかな?」
ユウトが振り返ると、そこには、武器を失い、なぜか神々しい光に包まれながら、生まれたての小鹿のようにガクガクと膝を震わせているヴァルグが立っていた。
「あ、君、もしかして手伝いに来てくれたの? 助かるなぁ。今日は柿の収穫が多すぎて、ゼクサル君一人じゃ大変だったんだよ」
ユウトは、満面の笑みで、自分のエプロンのポケットから『予備のピーラー(※ダイソーで100円)』を取り出し、それを震えるヴァルグの手に優しく握らせた。
「さあ、一緒にやろうか。終わったら、採れたての松茸をご馳走するからさ」
その、一片の悪意もない、だからこそ絶対的な逆らうことのできない「創造主の慈愛のプレッシャー」を前にして、ヴァルグは完全に魂を屈服させられ、両目から滝のように美しい浄化の涙を流しながら、その場に崩れ落ちた。
「は、ははぁーーーーーーーーーーッッッ!!! このヴァルグ、本日只今より、命を賭して柿を剥かせていただきますゥゥゥゥッ!!!」
【ファッ!?!?!?】
【なんか一瞬で新キャラが浄化されて農奴に堕ちたんだけどwww】
【魔王軍第二軍団長、柿剥き部隊に配属決定のお知らせ】
【ユウト様のタオル、オリハルコンより硬くて草】
【ピーラー(神を従える支配の杖)】
【この農家、戦わずして魔王軍を壊滅させる気だろwww】
* * *
その日の夕方──
実家の庭先には、七輪で真っ赤に熾された炭火の上に、スライスされた『神々の仙薬キノコ(ユウト視点:ちょっとデカい松茸)』が網の上で香ばしい音を立てていた。
「よしよし、いい具合に焼けてきたな。ちょっと醤油を垂らして……すだちを絞って、と」
ジュワァァァァァッ……!
醤油の焦げる匂いと、仙薬キノコから溢れ出る神聖なマナの香りが融合し、飯田町全体を包み込むほどの『究極の飯テロ空間』が完成した。その香りを嗅いだだけで、裏山の枯れた木々に一斉に花が咲き乱れ、用水路を泳ぐただの川魚が黄金の鯉へと進化していく。
「さあみんな、たくさん手伝ってくれたお礼だよ。遠慮せずに食べて!」
ユウトが小皿に取り分けたキノコを差し出すと、エルリア、ゼロ、ゼクサル、そして新入りのヴァルグは、まるで神の御神体を拝受するかのように、震える手でそれを受け取った。
「い、いただきます……ッ!!」
四人が一斉にキノコを口に放り込む。
ドゴォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!(脳内宇宙ビッグバン・改)
「あ、あああ……あぁぁぁ……! 私の、私の体内にある魔力回路が、エルフの限界を超え、精霊神の領域へと至りました……!」
「マスター……。このゼロ、もはや殺気という概念すら忘れ去りました。世界は、こんなにも愛に満ちていたのですね……」
エルリアとゼロが、目から光の筋を放ちながら空中に数十センチほど浮遊し始めた。
そして、魔王軍の二人は……
「う……うまい……ッ! これが、これが大地の恵み! 俺が今まで食ってきた魔獣の肉など、泥水を啜るようなものだった! 俺は……俺はもう、魔界には帰らん! 一生ここで柿を剥き、このキノコを食って生きていくッ!!」
「ゼクサル、お前の言う通りだった……。魔王様による世界征服など、この至高の味覚の前では、なんという些末な事象……。俺も、今日から『農民』として生きるッ!!」
ゼクサルとヴァルグは、あまりの美味さと体内への超強力な神気バフにより、魔族特有の禍々しい角がポロリと取れ落ち、その背中には純白の農民オーラが光り輝いていた。
「アハハ、みんな喜んでくれてよかった。まだまだあるから、いっぱい食べてね!」
ユウトは七輪の前でウチワをパタパタと仰ぎながら、最高に美味しそうに自分のキノコを頬張る。
「うん、やっぱり秋はキノコに限るな! 最高だ!」
こうして、実家の裏山(S級ダンジョン)でのキノコ狩りは、魔王軍の恐るべき刺客を「優秀な柿剥きアルバイター」へとジョブチェンジさせ、仲間たちのステータスをさらにバグらせるという結果で幕を閉じた。
最強の農家ユウトのスローライフは、魔王軍の脅威などどこ吹く風で、今日も平和に、そしてカオスに更けていくのであった。




