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クビになった元社畜、実家の裏山(S級ダンジョン)を草刈り機で掃除したら世界最強の配信者としてバズる  作者: 蜜柑 あめ


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16/20

第15話:裏山の温泉(※世界を癒す霊泉)を掘り当ててしまった

「ふぅー……。やっぱり夏の農作業は汗をかくよなぁ」




ジリジリと照りつける真夏の太陽の下、俺は首に巻いたタオルで顔の汗を拭いながら、麦茶を一気に飲み干した。




俺の目の前には、先日『魔王の迷宮』を草むしり(物理的制圧)した結果誕生した、超巨大・全自動ガラス温室がそびえ立っている。温室の中では、伝説の暗殺者・ゼロさんが、ものすごい手際で巨大カボチャの収穫を手伝ってくれていた。




「マスター・ユウト! こちらの区画の収穫、および害虫(※S級魔族)の駆除が完了いたしました! 次はどの畝うねの雑草を抜きましょうか!?」




ゼロさんは、俺のお下がりのジャージを汗で泥だらけにしながら、目をキラキラさせて敬礼してきた。かつて裏社会を震え上がらせた『影の死神』の面影はどこへやら、今ではすっかり「真面目で働き者の農家の青年」にしか見えない。彼のおかげで、農作業の効率は劇的に上がっていた。




「ありがとう、ゼロさん。とりあえず午前中の作業はこれくらいにして、お昼休憩にしようか。あんまり根詰めると熱中症になっちゃうし」




「御意!! マスターのお気遣い、五臓六腑に染み渡ります!」




俺はクワを肩に担ぎ、実家の縁側へと戻ってきた。縁側では、エルフの女王と近衛騎士団長が、うちわをパタパタと仰ぎながらスイカ(※普通のスーパーで買ったやつ)を食べて涼んでいた。




「お帰りなさいませ、創造神様。今日もまた、この聖地農園に新たな生命の息吹をもたらされたのですね」




「アハハ、ただの野菜作りだよ。でもやっぱり汗かくと、大きなお風呂にゆっくり浸かりたくなるなぁ」




俺が何気なく呟くと、エルフの女王が首を傾げた。




「お風呂、ですか? でしたら、すぐにお湯を沸かすように手配いたしますが……」




「いや、家のお風呂もいいんだけどさ。なんかこう、足をグッと伸ばせて、大自然の風を感じられるような露天風呂に入りたくてさ。ほら、温泉とか行きたいじゃない?」




俺は裏山の方へと視線を向けた。俺の実家の裏山は、先日俺が『スイカ割り(※魔王の卵粉砕)』をした時の衝撃波で、真っ二つに割れたままになっている。あの割れ目のあたり、なんだか地熱が高そうだし、もしかしたら温泉でも湧くんじゃないだろうか。




「よし、決めた! 午後から裏山で温泉を掘ってみよう!」




「……は?」




俺の突然の宣言に、エルフたちがぽかんと口を開けた。




「お、温泉を掘る……? そ、創造神様、温泉とは何十年もかけて専門の機械で地中深くを掘削し、ようやく湧き出すかどうかの代物です。それを今日の午後から……?」




「うん。うちのお爺ちゃんも言ってたんだよね。『この山には昔から、ええお湯が眠っとる気がする』って。俺の勘もそんな気がするんだ」




俺は物置から、使い古された一本の『スコップ』を取り出した。ホームセンターで千円くらいで売っている、ごく普通の鉄製スコップだ。




しかし、俺がそれを手にした瞬間、エルフたちとゼロさんは「ヒッ!」と短く息を呑んで後退りした。




(あ、あのスコップに……またしても創造神様の『限界突破オーラ』が収束していく……!)




(ただの鉄の板が、星の地殻すらも容易く貫通する『星砕きの神器』へと強制進化しているぞ……!)




「よーし、ポチ! ちょっと一緒に裏山行くぞー!」




俺が声をかけると、犬小屋で昼寝をしていたS級神獣フェンリルのポチが、ワンッ!と元気よく飛び出してきた。ポチは俺の意図を察したのか、真っ二つに割れた裏山の谷間へと駆け出し、ある地点でクルクルと回りながら地面を掘る仕草を見せた。




「ここ掘れワンワン、ってやつだな。よし、お前の鼻を信じるぞ!」




俺はポチが示した場所に立ち、スコップを構えた。そして、元ブラック企業で培った『絶対に今日中に仕事を終わらせる(=温泉を掘り当てる)という強靭な意志』を全開にして、スコップを足でグッと踏み込んだ。




ズドドドドドドドォォォォォンッ!!!!!




「うおっ!?」




俺がスコップの刃を地面に数センチ突き刺した、まさにその瞬間だった。地面が激しく揺れ、スコップの先端から放たれた極大の物理的貫通力が、地殻を、マントルを、そして星の中心核付近までを一瞬にして穿うがったのだ。




直後、大地が割れるような轟音と共に、凄まじい勢いの『水柱』が天高く噴き上がった。




ゴバァァァァァァァァァァァァッ!!!!!




「わーお! 一発で出た! すっげえ勢いだな!」




俺は吹き上がる水飛沫を浴びながら歓声を上げた。湧き出したお湯は、普通の温泉のような濁りや硫黄の匂いは一切なく、まるでダイヤモンドを溶かしたようにキラキラと輝く黄金色をしていた。そのお湯が空中で霧散し、周囲の木々に降り注ぐと、枯れかけていた古木が一瞬にして若葉を芽吹かせ、見たこともないような美しい花を一斉に咲かせ始めた。




「こ、これは……ッ!!」




後から様子を見に来たエルフの女王たちが、噴き上がる黄金の温泉を見て、腰を抜かしてその場にへたり込んだ。




「し、信じられない……! これは、神話に記されし『生命の根源スーパー・エリクサー』の源泉……!! 死者すらも蘇らせ、老いた細胞を神の領域にまで新生させるという、幻の霊泉ではないですか!!」




「そんな馬鹿な……。この霊泉は、星の核コアのさらに奥深く、神々ですら到達不可能な次元の狭間にしか存在しないはず。それをあの安物のスコップで、たった一掘りで引き当ててしまったというのか……!?」




エルフたちとゼロさんは、黄金のしぶきを浴びただけで、ステータスが狂ったように上昇していくのを感じ、恐怖と歓喜のあまりガタガタと震え出した。




「おっ、ちょうどいい温度だ! 肌触りもトロッとしてて最高だな。よし、お湯が逃げないうちに、急いでお風呂を作ろう!」




俺は周囲に転がっていた手頃な岩(※数日前の衝撃で削り出された超高純度のオリハルコンやミスリルの原石)をホイホイと持ち上げ、湧き出し口の周りに円形に並べていった。数十トンはある岩を、発泡スチロールのように軽々と並べていく俺の姿に、エルフたちはもはやツッコむ気力すら失い、ただ拝むように手を合わせている。




「よし、即席の『特製・大自然露天風呂』の完成だ! いやー、我ながらいい出来栄えだな」




ものの五分で、直径十メートルほどの立派な岩風呂が完成した。黄金色に輝くお湯がなみなみと満たされ、湯けむりが心地よく立ち昇っている。俺は早速服を脱いでタオル一枚になり、ざぶんと一番風呂に飛び込んだ。




「あぁ〜〜〜……。極楽極楽……」




思わず、親父くさい声が漏れてしまう。お湯の温度は完璧。肌に吸い付くようなとろみがあり、浸かっているだけで体の芯から疲労がスゥーッと抜けていくのがわかる。(※実際には、疲労回復どころか、細胞レベルで次元を超越する『超神化』が起きているのだが、俺のステータスは元々限界突破してカンスト状態なので、「なんか肩こりが治った気がする」程度の体感しかなかった)




「おーい! みんなも入ってみなよ! すっごく気持ちいいぞー!」




俺が声をかけると、エルフたちとゼロさんは、まるで神の御前に進み出るような緊張した面持ちで、恐る恐る露天風呂へと近づいてきた。そして、足先だけをお湯に浸けた瞬間──




「「「…………ッッッ!!!?」」」




彼らの目から、ブワッと大粒の涙が溢れ出した。




「あ、ああ……! なんという心地よさ……。我が身に蓄積されていた数百年の疲労と呪いが、一瞬にして洗い流されていく……!」




女王の肌は、赤ん坊のように透き通るような白さを取り戻し、背中からは淡い光の羽のようなオーラが立ち昇り始めた。




「マスター……! 俺の体にあった、暗殺者時代の無数の傷跡や、失われたはずの左眼の視力までが……! 完全に再生していく……! これは、奇跡だ……!」




ゼロさんはお湯に顔をつけ、むせび泣きながら神ユウトに感謝の祈りを捧げていた。ポチに至っては、犬かきで黄金のお湯を泳ぎ回り、嬉しさのあまり、キュウゥゥゥン!と遠吠えを上げている。




「いやー、みんな喜んでくれてよかったよ。やっぱり日本人なら、でっかいお風呂に入らないとね」




俺が鼻歌交じりに手足を伸ばしていると、突然、露天風呂の上空の空間が、ガラスが割れるようにパリンッと音を立てて砕け散った。




***




「──なんという神聖にして強大な波動……! 星の核より湧き出る奇跡の霊泉が、こんな下界に顕現しているだと!?」




砕けた空間の向こう側から、神々しい後光を背負った集団が姿を現した。純白の翼を生やした『天界の戦神』と、見目麗しい『美と豊穣の女神』、そして、聖王国の最高位に君臨する『大聖女マリア』をはじめとする、伝説の存在たちである。




彼らは、次元を超えて放たれた霊泉のエリクサー波動を感知し、その源を突き止めるべく、慌てて天界や聖王国からテレポートしてきたのだ。




「おお……! 見よ、あの黄金に輝く湯を! あれこそ我ら神々にのみ許された至高の霊泉!」




「しかも、周囲の岩は全てオリハルコンの特級品……。なんという贅沢な湯船だ。この地を、天界の新たな直轄リゾート地として接収しよう!」




戦神が傲慢に言い放ち、女神や聖女たちもそれに同意するように頷いた。彼らにとって、下界の人間など取るに足らない存在である。この奇跡の温泉を独占し、己の力と美貌を永遠のものにしようと企んでいた。




「おい、そこの下等な人間ども! 直ちにその湯から出て──」




戦神が、露天風呂に浸かっている俺に向かって威圧的な声をかけようとした。しかし次の瞬間、戦神の言葉は恐怖によって凍りついた。




(な……なんだ……!? あの、湯の中央で暢気にタオルを頭に乗せている男は……!?)




戦神の目に映ったのは、黄金の霊泉の中心で「ふい〜」と息を吐いている、一人の平凡な青年の姿だった。だが、その青年から無意識に漏れ出ている『プレッシャー(限界突破オーラ)』は、天界の最高神である戦神すらも、虫ケラのようにひねり潰せるほどの絶対的な暴力性と神威を孕んでいたのである。




(ひ、ヒィィィィッ!? な、なんだあのバケモノは!? あの霊泉のエリクサー波動すら、あの男のオーラのほんのおこぼれに過ぎないというのか!?)




美の女神も大聖女マリアも、俺の姿を見た瞬間に全身の血の気が引き、ガタガタと歯を鳴らして震え出した。




「ん? なんだ、上の方に浮いてる人たちは?」




俺は頭に乗せていたタオルを取り、上空を見上げた。真っ白な服を着た、外国のモデルさんのような綺麗な人たちが、なぜか空中に浮かんで固まっている。




「あー、もしかして、温泉の噂を聞きつけて来たお客さん? それとも、そういうコスプレ集団?」




俺が声をかけると、神々と聖女はビクゥッ!と飛び上がり、そのまま重力を無視して地面に墜落し、俺のいる露天風呂の縁に猛烈な勢いで土下座した。




「ははぁーーーーッ!! し、失礼いたしましたァァァァッ!! 我ら、この至高の霊泉の噂を聞きつけ、ぜひ一度、おこぼれに預かりたいと這はい蹲つくばってきた、卑小なる観光客でございます!!」




戦神が、先ほどの傲慢さはどこへやら、涙と鼻水を流しながら必死に取り繕った。




「なんだ、やっぱりお客さんか! いいよいいよ、お風呂はみんなで入った方が楽しいし。広いから適当に入ってよ」




俺が笑顔で許可を出すと、神々と聖女たちは「あ、ありがとうございますゥゥ!」と泣き喚きながら、慌てて服を脱ぎ捨て(光の粒子となって服が消滅した)、湯船の端っこの方に縮こまるようにして入ってきた。




「あっ、でもお風呂にはルールがあるからね」




俺が指を立てて言うと、神々はハッ!と姿勢を正した。




(神の戒律……! ここで意に沿わぬ行動をとれば、一瞬で魂ごと消し飛ばされる!)




「まずは入る前に、ちゃんと『かけ湯』をして体の汗を流すこと! それから、湯船の中で暴れたり泳いだりしないこと! ……あ、ポチは犬だから特別ね。あと一番大事なのは、タオルを絶対にお湯の中に入れないこと! これはマナーだからね」




俺が日本のスーパー銭湯で培った『絶対の入浴ルール』を告げると、神々と大聖女は、この世の真理を説かれた修行僧のように、深く深く平伏した。




「おおお……! なんという慈悲深く、そして完璧な戒律……! 湯を清らかに保つための『かけ湯』、秩序を守るための『静寂』、そして、神聖な湯を穢さぬための『タオル禁止令』……!」




「命に代えましても! この神のルール入浴マナー、我ら天界の絶対法として永遠に守り抜くことを誓います!!」




彼らは、まるで儀式のように丁寧にお湯を体にかけてから、身を縮こまらせて黄金の湯に浸かった。




「……あぁっ……!!」




美の女神と大聖女マリアが、お湯に触れた瞬間、あまりの気持ちよさと神聖な波動に、恍惚の表情を浮かべて声を漏らした。天界のどんな神の湯よりも、この日本の田舎の裏山に湧いた温泉の方が、数億倍も極上だったのだ。




「いやー、外国のお客さんにも喜んでもらえてよかった。温泉って国境を越えるんだなぁ」




俺は、天界の神々や伝説の聖女たちと肩を並べて(彼らは俺から半径三メートル以内には恐縮して近づけなかったが)、のんびりと黄金のお湯を満喫した。




「よし!お風呂上がりにはやっぱり冷たい牛乳か、温泉卵だよな。明日は温室の端っこで、ニワトリでも飼ってみようかな」




こうして、俺が適当に掘り当てた裏山の温泉は、天界の神々や世界中の聖女たちが、厳しい『入浴マナー(ユウトの定めたルール)』を死に物狂いで守りながらお忍びで通う、宇宙最高峰の超・高級リゾート温泉として定着してしまったのである。




しかし、その圧倒的な効能と神威の事実を、俺は相変わらず「田舎のお湯は肌にいいなぁ」と呑気に勘違いしたまま、最高に平和な温泉スローライフを満喫していくのだった。

次回、第16話「トラクターのエンジンを直したら、時空間を越える神造戦車になったんだが」


村の長老から「トラクターの調子が悪いから直してくれ」と頼まれたユウト。ドライバー一本で適当に修理した結果、トラクターは亜光速で移動し、次元の壁すら耕す『時空農機具』へと進化してしまう!「うおっ、なんかこのトラクター、空飛んでない!? しかも過去に行けるボタンがあるぞ!」暴走するトラクターで、ユウトが歴史の教科書(神話時代)を勝手に耕しに行く!?最強農家のドライブ、どうぞお楽しみに!

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