表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クビになった元社畜、実家の裏山(S級ダンジョン)を草刈り機で掃除したら世界最強の配信者としてバズる  作者: 蜜柑 あめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/20

第14話 自治会の寄り合い(※世界最高峰のサミット)に強制参加させられたんだが

「よし、座布団の数はこれで足りるな。お茶の準備もオッケーだ」




よく晴れた休日の午後──


俺は実家の一番広い和室(十二畳)の掃除を終え、額の汗を拭った。




今日は月に一度の『自治会の寄り合い』の日だ。近所に住む長老のゲンさん(御年八十五歳の元気なお爺ちゃん)から、「今月はユウト君の家で寄り合いをやるから、場所を貸してくれんかね」と頼まれていたのである。限界集落に近いこの村の寄り合いといえば、お年寄りたちが集まってお茶をすすりながら、ゴミ出しのルールや農作業の愚痴を言い合うだけの、のんびりとしたイベントだ。




「しかし、ゲンさん、『今回はちょっと遠方からの参加者も多いから、広めに場所を取っておいてくれ』って言ってたけど……隣町の人でも来るのかな?」




俺が首を傾げていると、首にタオルを巻いたジャージ姿のゼロ(※伝説の暗殺者・現在はうちの住み込み農業バイト)が、お盆に乗せた湯呑みを運びながらやってきた。




「マスター・ユウト。お客様方にお出しする『特製ハーブティー(※世界樹の葉を煮出した神話級エリクサー)』の準備が整いました。……しかし、外の様子が少々騒がしいようですが」




「ん? もうみんな来たのかな」




俺は縁側の窓を開け、庭の方を覗き込んだ。そして、その光景に思わず目を丸くした。




「うわっ、なんだあれ!? 真っ黒な高級車がいっぱい停まってるぞ!」




俺の実家の前の細い農道に、どう見ても田舎には似つかわしくない、防弾ガラス仕様の超高級リムジンが何台も連なっていた。さらに、庭の空き地には、なぜか紫色の怪しい魔法陣のようなものが浮かび上がり、そこからマントを着たコスプレイヤーのような集団が次々と姿を現している。




「へえー、最近の自治会ってグローバルなんだなぁ。ゲンさん、もしかして外国人実習生でも受け入れたのかな?」




「…………(マスターは本当にアレを一般人だと思っているのか?)」




ゼロが何か言いたげな顔をしていたが、俺は気さくな笑顔を浮かべて、玄関へとお客様を迎えに出た。




***




その頃、ユウトの実家の庭先──




そこに集結した者たちは、全員がこの世の終わりを見るかのような絶望的な表情で、ガクガクと膝を震わせていた。




「O、Oh……。クレージー……。なんてクレージーな場所だ……」




アメリカ合衆国大統領・スミスは、ハンカチで滝のように流れる冷や汗を拭いながら呻いた。彼の隣には、世界最強の探索者たちを束ねる『国際ギルド連盟』の総帥・アーサーの姿もある。アーサーもまた、顔面を蒼白にして実家の庭を見渡していた。




「大統領……、報告は受けていましたが、これは想像を絶する……。あそこにある物干し竿の台座、先月日本海で討伐されたはずの『S級災害指定・リヴァイアサン』の頭蓋骨ですぞ……! それを、ただの重りとして使っているだと……!?」




「見ろ、あの裏庭の巨大なガラス温室を。あそこから放たれる魔力は、数千年前に封印された『大魔王』のものと完全に一致している……。だが、なぜその魔王の魔力が、トマトやキュウリを育てるための肥料として循環しているのだ……!?」




さらに、彼らの少し離れた場所では、




『ヒィィッ……! あ、あんな場所に我ら魔族が足を踏み入れれば、一瞬で浄化されてチリになってしまう……!』




魔界の支配者層である『魔王軍・四天王』の筆頭・ザガンが、マントを震わせて泣きそうになっていた。数日前に大魔王の卵が消滅した原因を探るべく、魔界から直接テレポートしてきた彼らだったが、到着した瞬間に悟ったのだ。この家には、大魔王すらも『ただのスイカ』として処理してしまう、規格外のバケモノ創造神が住んでいると。




人類のトップと魔界のトップ。本来なら殺し合うはずの彼らだったが、今は完全に「同じ恐怖を共有する被害者の会」として、奇妙な連帯感で結ばれていた。




「おーい! ユウト君、遅くなってすまんのう!」




そこへ、ポンポンポン……と呑気なエンジン音を響かせて、軽トラに乗った地元の長老・ゲンさんがやってきた。




「おお、みんなもう集まっとるんか! わざわざ遠いところからご苦労さん! ささ、ユウト君の家に入ろうや!」




ゲンさんは、アメリカ大統領だろうが魔界の四天王だろうが、「村の若い衆」くらいにしか思っていないのか、気さくに背中をバシバシと叩いて玄関へと促した。VIPたちは「ひぃっ!」と悲鳴を上げながらも、逆らうこともできず、ゾロゾロとユウトの家へと足を踏み入れたのだった。




***




「ささ、狭いところですが、適当に座ってくださいねー」




俺が和室で案内すると、黒スーツの外国人たち(大統領たち)と、マントを着たコスプレイヤー(魔族たち)が、なぜか全員、ガチガチに緊張した面持ちで畳の上に正座をした。十二畳の和室に、屈強な男たちがビシッと正座して並んでいる光景は、なかなかシュールだ。




「マスター、お茶をお持ちしました」




ゼロがお盆を持って現れ、見事な手つきで湯呑みを配っていく。




「ヒッ……!? あ、あの男……! 裏社会の伝説『影の死神』ではないか!? なぜ彼が、首にタオルを巻いてお茶汲みをしているのだ!?」




「ま、まさか、あの暗殺者ですら、この家ではただの下働きに過ぎないというのか……! なんという恐るべきヒエラルキー……!」




VIPたちがヒソヒソと悲鳴のような声を上げている。外人さんたち、正座に慣れてないから足が痺れちゃったのかな。




「えっと、自治会の寄り合いの前に、皆さんから『お供え物手土産』があるとか?」




俺が尋ねると、アメリカ大統領のスミスさんが、ビクッと肩を震わせて前に進み出た。そして、アタッシュケースをパカッと開けた。




「こ、こちら……! 我が国からの、せ、誠意でございます……! どうか、我が国にだけは防衛システム(※スプリンクラー)の狙いを定めないでいただきたく……ッ!」




ケースの中には、眩いほどに輝く『純金の延べ棒』がぎっしりと詰まっていた。




「うわぁ! これ、外国のコインチョコ!? すっごいリアルにできてるなぁ! 包装紙がキラキラだ!」




俺は感心して、延べ棒を一本手に取り、コンコンと叩いてみた。




「へぇー、重さもずっしりしてる。ゲンさん、後で村の子供たちに配りましょうよ」




「おお、そりゃええな。外国のチョコレートは珍しいでな」




「チ、チョコレート……!? 国家予算の数%に匹敵する純金インゴット百キロ分を、駄菓子扱いだと……!?」




大統領が白目を剥いて卒倒しかけた。




続いて、魔界四天王のザガンが、震える手で『漆黒の水晶玉』を差し出した。




「こ、こちらは魔界の深淵より採掘された『絶望の魔晶石』……。我ら魔族の、絶対の恭順の証としてお納めください……ッ!」




「おっ、綺麗なガラス玉ですね! ちょうど文鎮を探してたんです。回覧板が風で飛ばないようにするのにピッタリだ!」




俺が魔晶石を畳の上にドンッと置くと、世界を滅ぼすほどの呪いが込められていたはずの水晶が、俺のオーラに触れて「ピュイッ」という間抜けな音と共に、完全に浄化されてただの綺麗なガラス玉になってしまった。




『ヒィィィィッ!? 魔界の至宝が、一瞬でただの文鎮にィィィ!?』




ザガンが畳に頭を擦り付けてガクガクと震え出した。




「みなさん、面白いお土産をありがとうございます。それじゃ、そろそろ寄り合いの議題に入りましょうか」




俺がそう言うと、和室の空気が一気に張り詰めた。世界各国のトップと魔界のトップ。彼らにとってこの話し合いは、『地球の存亡を懸けた世界最高峰のサミット』に他ならない。創造神ユウトの口から、どのような恐るべき新ルールが制定されるのか。全員が固唾を呑んで見守る中、俺はホワイトボードの前に立った。




「えー、まずは第一の議題。『ゴミ出しのルール』についてです」




俺がホワイトボードにマジックで文字を書くと、VIPたちがビクッと身をすくめた。




(ゴ、ゴミ出し……!? それはつまり、この神にとって不要な存在(国家や種族)の『処分方法』についての通達か!?)




(ついに人類の選別が始まるというのか……!)




「最近、指定日以外にゴミを出したり、燃えるゴミの中にプラスチックを混ぜて燃やしたりする人がいて困ってるんですよね」




俺は困った顔で皆を見渡した。




「ゴミはちゃんと分別して、決められた日に出さないとダメです。無差別に全部まとめて燃やそうとするのは、絶対にやめてくださいね。空気が汚れちゃうんで」




その瞬間、大統領とアーサー総帥が、信じられないものを見るような顔で顔を見合わせた。




(む、無差別に燃やすのはやめろ……? それはつまり、「無差別な核兵器の使用」や「大規模魔法による焦土作戦」を明確に禁ずるということか!?)




(神は、我々の愚かな戦争を戒めておられるのだ……! 対象をしっかりと分別(見極め)し、無益な破壊を止めよと……!)




「イ、イエス・サー!! 肝に銘じます!! 我が国は直ちに、全ての戦略兵器の無差別使用プログラムを凍結いたします!!」




大統領が涙を流しながら敬礼した。




「え? 兵器? ……まあ、スプレー缶とか爆発すると危ないから、ちゃんと穴を開けてから捨ててねってことです。分かってくれてよかった」




俺はニコニコと頷き、次の議題に移った。




「第二の議題。『夜の騒音問題』についてです」




俺がそう言った瞬間、今度は魔界四天王のザガンが「ビクゥッ!」と跳ね上がった。




「昨日の夜中、うちの屋根の上を、ものすごい音を立てて飛んでいく何かがいたんですよ。飛行機か、でかい鳥か分からないけど……。夜中はみんな寝てるんだから、あんまりうるさくされると困ります」




俺はため息をつきながら、手元にあった『ハエ叩き(※限界突破オーラにより神を殺す魔剣へと進化中)』をパンパンと手のひらに打ち付けた。




「次にああいううるさいのが来たら、さすがに俺も怒りますよ。このハエ叩きで、空から叩き落としちゃうかもしれませんからね。気をつけてくださいね」




『ヒギィッ!?』




ザガンが短い悲鳴を上げて白目を剥いた。昨晩、ユウトの家を上空から偵察するために、魔界から『超音速の魔竜』を派遣していたのは彼らだった。




(あ、あんな恐るべきハエ叩きで撃墜されたら、魔竜どころか魔界そのものが叩き割られる……! 絶対不可侵! 上空一万メートル以内は絶対不可侵領域だ!!)




「あ、我々も! 我が国の最新鋭ステルス爆撃機も、今後一切、この地域の半径一千キロ以内には近づけさせません!!」




大統領も必死に同調する。




「アハハ、そこまで気にしなくてもいいですよ。夜中だけ静かにしてくれれば。じゃあ、今日の話し合いはこれで終わりですね」




俺は満足げに頷き、最後に一枚のバインダーを取り出した。




「それじゃ、最後にこの『回覧板』にサインをお願いします。自治会のルールを確認しましたっていう証明みたいなものですから。あ、次の人の家に三日以内に回してくださいね」




俺がバインダーを差し出すと、VIPたちは震える手でペンを受け取った。




(こ、これが……神との絶対的な血の契約不可侵条約……!)




(三日以内に全国家にこの条約を承認させろという意味だな!? もし遅れれば、この地球がスイカのようにカチ割られる……ッ!)




スミス大統領、アーサー総帥、そして魔界のザガンが、それぞれの国の最高権力者のサインと印璽いんじを、ただの『町内会回覧板』の印鑑欄に震えながら押していった。




「よし、全員確認しましたね! いやー、今年の自治会はスムーズに決まってよかったよかった!」




俺が満面の笑みで拍手をすると、長老のゲンさんも「ほうほう、みんな素直でええ子たちじゃのう」とニコニコとお茶をすすった。




こうして、地球と魔界の運命を左右する『飯田条約(※ゴミ分別と夜間騒音禁止)』は、一介の農家の和室にて、コインチョコ(金塊)をかじりながら平和裏に締結されたのである。




「さて、寄り合いも終わったし、夕飯の買い出しにでも行くかな!」




俺がのんびりと立ち上がると、VIPたちは「ははぁーーーッ!!」と畳に額を擦り付け、感謝と畏怖の涙を流しながら、それぞれの国へと全速力で帰還していった。




「最近の外国の人は、礼儀正しくていいなぁ」




世界規模のサミットを無自覚に仕切り、絶対的な平和を強要(?)してしまった俺だったが、当の本人は『今日もご近所付き合いを頑張った』くらいの認識で、夕暮れのスーパーへとママチャリを走らせるのだった。

次回、第15話「裏山の温泉(※世界を癒す霊泉)を掘り当ててしまった」


農作業の疲れを癒やすため、裏山で温泉を掘ることにしたユウト。しかし、彼がスコップで一掘りした場所から湧き出したのは、死者すら蘇るという『神話級の霊泉(スーパー・エリクサーの源泉)』だった!

「おお、いいお湯だな〜! 肌がツルツルになる!」ただの露天風呂を作ったつもりが、世界中の神々や聖女がお忍びで通う超・高級リゾートになってしまう!?最強農家の温泉開発、どうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ