第七話 武器選び
案内された物置部屋の中には、いろいろな物が沢山積み上げられていたり、台座に置かれたりしていた。
何に使うのか分からない置物やグシャグシャの段ボールなども見られる。そんな物だらけの中をよく見れば、サフィナが朝に言っていた小さな加湿器もあった。棚部に聞くと「好きに持って行っていい」と言われたので、ブレイクと高峰は後で拝借することにした。
物置部屋の奥には、地下に通じる階段がある。その階段を降りていくと、広い場所へ出た。
外の明かりがなく、照明のみで照らされた地下には、沢山の武器や防具が並べられていた。
そしてもうひとつの部屋へ続く扉が四枚見えた。どこに繋がってるのか聞けば、三つは練習場だと言われた。あそこで武器の練習や稽古ができるようだ。
階段から一番遠い場所にある残りの一部屋はずっと施錠されており、棚部もあの部屋がなんなのか知らないようだった。
棚部はそれぞれの武器の説明をしていった。どの武器が合うか、それはその人次第だ。力のない者が重たい武器を持ってもまともに使えないように、自分に見合った武器を選ばないと自分が怪我をしてしまう。
視線をサフィナの方に向けると、桜音姉妹は同じ女性であるサフィナにいろいろ説明を受けているようだ。
ブレイクが悩んでいる中、徳札たちはなんの迷いもなく次々と武器を選んでいく。
徳札が選んだのはドスだ。彼の見た目もあって、ヤクザにしか見えないが、ブレイクは心の中にしまった。口に出したら怒られそうだ。白金は二丁の拳銃、高峰はナックルだ。二人も徳札と同じように、慣れた手付きで武器の確認をしている。
自分以外の男たちは、普段から武器などを使っているヤバイ人たちなのかもしれない……。そう考えると少し恐怖を感じたが、ハッカーの広岡以外はおそらく悪い人たちではないのだろうと、昨日今日でなんとなく知っているので、ブレイクは武器を選ぶことに集中した。
「困ったら拳銃が一番だぞ。相手に近付かなくていいからな。ただ、長期戦には少し不向きだ。拳銃で長期戦をするなら、白金みたいに武器がなくても、肉体で接近戦がいけるぐらいじゃないとな。心配なら拳銃と剣、または刀の両方を持って使い分けるのも有りだ。必要な時だけ拳銃を使うとかな。まぁそもそも、そんな長期戦になるほど戦うことはないと思うが、念のために考えておいて損はない」
迷っているブレイクに、棚部はそう提案をした。
ブレイクは貧弱ではない。昔は武道を習っていたし、運動も日々続けていた。隣にいる棚部ほどではないが、それなりに身長も筋肉もある。ブレイクは悩みながらも、先ほどの棚部の提案に乗り、歯車のような鍔が特徴的な一振の刀と、真っ黒な一丁の拳銃を手に取った。
「棚部さんの提案に乗らせてもらいますね。昔は剣道を習っていたので、普段は刀の方を使います。もし刀じゃ届かない場所でサフィナに何かあったら、その時に拳銃を使おうかと……」
「いいんじゃないか? 拳銃の撃ち方なら白金に教えてもらえばいいしな」
「警部の棚部さんは教えてくれないんですか?」
「俺が愛用してたのは回転式拳銃だ。ここにあるのは全部自動式拳銃だからな。それなら、俺よりあいつの方が詳しい」
「……これを聞いてもいいのか不安なんですが、あの三人って普通の人じゃないですよね? 裏社会とかに繋がって……」
ブレイクが最後まで言い終わる前に、何者かの発言によって割り込まれる。ブレイクは少し驚いて、全く気配のなかった背後を見る。
「彼らについてあまり詮索しない方がいいと思うよ。まぁ強いて言うなら、彼らは仲のいい幼馴染みで、そうするしかなかっただけ。とりあえず、よくわからないけど味方が強そうでラッキー! ぐらいの軽いことだけ考えとけばいい。世の中には知らなくていいこともあるからね」
そう言ったのは、いつのまにかブレイクと棚部の後ろにいた広岡だ。彼はノーザイとリビングで待機していたはずだ。ましてや誰かが入ってくるような音もしなかったし、背後の気配に気付けなかった。
そしてそれはブレイクだけではなく、棚部も広岡がいつ入ってきたのか気付いていなかったようだ。
「お前、いつ入ってきた」
「ついさっき。みんな武器でキャッキャッしてたから、全然気付かれなかった。それより武器選び終わった? もう昼過ぎだから、早く見て回った方がいいんじゃない。ノーザイくんずっとソワソワして待ってるよ」
「あぁ、わかった。全員選び終わったか?」
棚部の声に、全員が終わった事を伝える。
ブレイクが女性陣の方を見ると、サフィナは自分と似た鍔のある刀を持っており、百奈はダガーを、百花はスタンガンを持っていた。
地下から階段を上って物置部屋に到着し、そのまま廊下に出る。廊下には、窓を背もたれのようにして待っているノーザイがいた。
「お、みんな準備オッケーかな?」
早く行きたくて仕方ない。ノーザイの顔がそう言っている。そんなノーザイに待ったをかけた棚部は、コートの中から何かを取り出した。
「ちょっと待ってくれ。……これは無線機だ。今は手持ちが二つしかないから、これをブレイクと百奈に渡しておく。ノーザイとサフィナも持っているが、一応な」
渡されたのは小型の無線機だ。無線機だと最初に言われなければ、これはUSBメモリーなのでは? と聞きたくなるほど小さく細い。
横にある丸いボタンを押せば繋がると言われ、実際に使ってみる。棚部の持っている無線機から自分の声がちゃんと聞こえた。見た目が違うだけで、これはちゃんとブレイクがよく知る無線機と同じだった。
斜め後ろから「なぜ私には渡されないのか……」と言いたそうにしている徳札の強い視線を感じるが、ブレイクは気付かないふりをして無線機を上着の内ポケットにしまった。
「それじゃあ、さっき伝えた通りだ。本当は俺もついて行きたかったんだが……そうもいかなくてな。何かあったら、渡した無線機ですぐに連絡してくれ」
「はーい。よし、それじゃ行こうか!」
棚部に軽い返事をしたノーザイは、先頭に立ってみんなに後ろを付いてくるように言った。
玄関から出る際、棚部と広岡が見送りをしてくれた。ブレイクたちは、ウキウキと歩くノーザイについて行き、『デルテの館』を後にした。




