表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人外だらけの世界に飛ばされた人間様御一行の記録  作者: 南野


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/55

第二十五話 新たな仲間


 全員がそろいキュクローも無事回収した所で、キュクローを探しに行っていたノーザイたちに、彼らが居なかった時の事を説明をした。説明が終わった後、広岡ひろおか和凪かずなぎに話し掛ける。

 彼の頭には小さくて白いキュクローが寝ており、ほのかに発光しているが、広岡ひろおかは特にそれを気にしてはいないようだった。


「思ったんだけど、植物や魚じゃ駄目なのかい?」

「へ? 植物と魚?」

「キミは肉以外、植物や魚も食べれるよね?」

「えぇ、お肉以外も食べれますけど、お肉を食べる機会の方が多いかと」


和凪かずなぎの答えに広岡ひろおかは少し悩む素振りをし、放り出すように手を和凪かずなぎへ向けて話す。


「愛しているから食べる。キミは今までもずっとそうしてきた、それをすぐにやめるのはきっと難しい。ジュジュさんと慣れていくまでは、愛情を持って植物や魚を育てて食えばいいんじゃない? 植物なら代替肉だいたいにくにもできるし」


代替肉だいたいにくという単語に、和凪かずなぎは頭に疑問符を浮かべる。


「だ、代替肉だいたいにく? なんですかそれ」

「大豆とかの植物を使って、肉に近い食べ物を作れるんだよ」


 広岡ひろおかのざっとした説明にサフィナが手をポンと叩き、そういう物があると思い出したようだ。和凪かずなぎは感心した顔をした。


「あぁ、ありますね。そういうの」

「そんなのがあるんですね」


 広岡ひろおかは続けて和凪かずなぎに問いかける。


「自分で手塩に掛けて育てないと、愛とはいえない。それは植物や魚にも適応されないの?」


目をパチクリさせた後、悩むというより困惑こんわくという表情で和凪かずなぎは答えた。


「そ、れは、分かりません。考えたこともなかった。自分でいちから作って育てるのが当たり前だったから、既にあるものをわたくしが代わりに育てる事はなくて……」


うつむいて悩む和凪かずなぎに対して、ノーザイが軽い声で提案ていあんする。


「ダメ元でもやってみたら?」

「そうだね、もし無理そうだったらまた考えればいい。植物や魚でもキミの愛が適応されるならそれでいい。物は試しだよ」


ノーザイの言葉に広岡ひろおかも肯定する。

 そして、ずっと無言だったジュジュが和凪かずなぎの手を取り、ジュジュは優しい表情で和凪かずなぎに伝える。


「わたしも賛成です。君はまだ変われます。確かに食事と愛は両立するかもしれません。ですが、食事以外でも愛は両立します。食事の愛は植物や魚へ向けながら、食事以外の愛に慣れていきましょう。わたしは和凪かずなぎさんと一緒に、食事以外にも沢山表現することができる、いろいろな愛を知っていきたいんです」


 わたくしはまだ変われる……。教わった事だけを正解だと、真実だと信じて、他の事実から目をそむけてきた。

だって、正しい事だと思ってやってきた事が、全て間違いだった時が怖いから。自分が今までしてきた事の清算せいさんを取れる気がしないから。しかし、こうしてまた逃げてたら何も変われない。

ずっと手をにぎってくれているジュジュはきっと、そばわたくしと歩いてくれるのだろう。一人じゃ怖くて何も変われなかった。そんな弱虫なわたくしでも誰かと共に変われるのなら、わたくしは新たな一歩を踏み出せるかもしれない。

 和凪かずなぎはジュジュの手をにぎり返し、しっかりと目を合わせる。


「ジュジュ。わたくしはまだ変われますよね? ずっと食べて食べられるが、愛の全てだと思ってた。だって、お母様にそう教わったから。でも、違ったんですね」


 和凪かずなぎはキュクローたちを見る。キュクローはそれぞれの命があり、それぞれに考えや思いがあって行動している。

黒いキュクローはノーザイになついており、ノーザイもクロと名付けたキュクローを可愛がっている。あのような関係も、愛と呼べるのではないだろうか。

和凪かずなぎはもう覚悟を決めている。何もしないと変われない。今こそ、始めの一歩を踏み出す時なのだ。


「すぐには変われないでしょうが、わたくし頑張ってみます。わたくしが食べるために作ったキュクローたちが、みなさんのそばで幸せそうにしているのを見ると、きっとこれが本来のかたなんだろうなって……そう思えてきます」


 それぞれのキュクローがそれぞれの相手に近寄って、匂いをいだりじっと見詰みつめたり、既に体をあずけていたりしている。

和凪かずなぎはそんなキュクローたちの様子を見て、ラボに居た時よりも幸せそうだと感じた。


「キュクローたちはここに置いていきます。今の状態で一緒にいてはいけないと思うので。それに、キュクローも既に馴染なじんでるみたいですし」


和凪かずなぎはキュクローたちを愛おしそうに見詰めた。

 棚部たなべの足の上には赤色と水色のキュクローがうごうごしており、ソファーに座ったまま動けなくった棚部たなべがそのまま和凪かずなぎに質問をする。


「キュクローたちは何か食べるのか?」

「あぁ……キュクローは肉、魚、草、果物、野菜など、結構なんでも食べます。今度キュクローたちの食べれないリスト持ってきます。そこに記載されてなければ、なんでも食べれるので」


和凪かずなぎの答えに、近くにいたノーザイがクロと目を合わせながら話しかける。クロも同じようにノーザイを黒く真ん丸なまなこで、嬉しそうに見詰みつめる。


「そうなんだ。クロや他のキュクローって、好物とかも違うんだろうなぁ」

「キュ?」


クロの返事にノーザイは笑みを浮かべ、クロを抱えたまま頭をでる。クロは可愛らしい声で鳴きながら、ノーザイの手に頭をすりすりとこすり付けた。


 ブレイクの頭には欠伸あくびをしているだいだい色キュクローがおり、高峰たかみねの横には黄緑のキュクローが飛びながら高峰たかみねに頭突きをかましている。

高峰たかみねは一番体の大きい黄緑キュクローの頭突きを、手や腕で防御しながら話していた。


「飛べるの便利そうですね」

「さすがに僕ごと飛ぶのは難しいと思う。あと凄い頭突きしてくる、なにこいつ」

「猫じゃないですけど、猫の頭突きはある種の愛情表現らしいですよ」

「そうなのか……」


高峰たかみねは気付いていないようだが、黄緑のキュクローはとても楽しそうに頭突きをしている。ここの相性は悪くないのかもしれない。

 そんなことを思いながら、ブレイクは自分の頭にいるだいだい色のキュクローを持ち上げて下ろす。


「こいつがいると、オレンジとか蜜柑みかんが食べたくなるんですよね……。ちょっと困るかも」

柑橘類かんきつるい常備じょうびしとかないとな」


 二人がそんな会話をしている後ろでは、マトロポスと白金しろがねが青いキュクローを囲んでしゃがんでいた。青いキュクローは「キュゥ~……」と何か言っている様子だ。


「湿っててすまぬって言ってる」


 マトロポスの言葉に白金しろがねは大いに驚いた。

マトロポスは確かに獣耳を持っているが、まさかキュクローの言葉を理解できるとは思わなかったのだ。


「え! 言ってること分かるん!?」

「まぁ、なんとなくだけど」

「便利やなぁ、俺も聞き取れればええんやけど。……君は湿っててもええで、俺は気にせんよ」


白金しろがねは青いキュクローをぎゅっと抱き締める。青いキュクローに触れた部分の服が、じわじわ湿っていくが白金しろがねは気にしない。

抱き締められた青いキュクローは、ジト目で白金しろがねを見たあと、体を白金しろがねに思いっきりあずけた。


「キュッ……グルグルギュー」

「変なヤツだから、自分が隣にいてやろう。だってさ」

「ほへー、可愛いやっちゃなぁ」


白金しろがねかかえたまま、青いキュクローの頭をでる。青いキュクローは嬉しそうに鳴いていた。


 その横では枝葉えだはまみれの徳札とくさねと頭にたくさん花が付いてるサフィナに対して、少し興奮気味で目をキラキラさせているサントスがいた。


「この葉と花! 手に入れるのがとても難しい、貴重なものですよ! もしよろしければ頂くことは可能でしょうか?」

「え、どうぞ。私はそういうのにくわしくないので」


徳札とくさねは頭に付いた枝葉えだはいくつか取り、そのままサントスへ渡す。


「えっと、たぶん大丈夫だと思います」


そう言いながら、サフィナも散らばった花たちを集めて袋に入れ、徳札とくさねと同じようにサントスへ渡す。

 サントスは何度も「ありがとうございます」とお礼を言った。二人から頂いたこれらを使った薬ができたら、徳札とくさねとサフィナには今後試作品を提供ていきょうしてくれるらしい。


 キッチン近くにいる桜音さくらね姉妹にコーネダリスが近付いて話し掛ける。


「君たちは戦闘慣れしてないから、ビームがあると少しは安心になるネ。ビームは威嚇いかくとしても有効だヨ」


ビームという単語を聞き、百花ももかかかえている黄色のキュクローの口辺りを揉んでみる。


「ビーム……。どれぐらいの威力いりょくがあるんだろ……」


百花ももかに揉まれても、黄色のキュクローは特に反応せずされるがままだった。なんとなく眠そうな顔をしている気がする。


「ビームは見てみたいけど、あまり使わないに越したことはないわね」


百奈ももなは足元にいる紫のキュクローを気にしながら、困り眉でそうつぶやいた。


 リビングのソファーでは、座っている棚部たなべ広岡ひろおかが手前からのぞき込むようにして、何かを話していた。


「その子たちは一緒がいいみたいだね。暖かいのと冷たいのだから、隣にいると落ち着くのかも」

「それは構わんが、なぜ俺の足の上で固まって寝るんだ……?」

本貴もときさん大きいから、安心感あるんじゃない?」


棚部たなべの太股には赤色と水色のキュクローが、お互いうようにしてたたずんでいた。


「ていうか僕の頭にいるこの子、退けていいかな。ノーザイくんたちが連れてきてから、ずっとここにいるんだけど……」


 広岡ひろおかは頭の上で寝ていた、小さくて白いキュクローを右手で持ち上げた。それは、広岡ひろおかの右手に収まるほどの小ささだった。


「なんかこの子、めっちゃ小さくない?」


広岡ひろおかがキュクローのいる右手を胸辺りまで下ろしたその瞬間、ほのかに発光していただけのキュクローが真っ白に強く発光した。


「うわまぶし!? え、何? とりあえずもどそ……」


広岡ひろおか咄嗟とっさに目を閉じて頭の上に戻すと、光は弱まってほのかな光となり、白いキュクローはまた寝始めた。 


「サングラスがなかったら直視で死んでたな」


 棚部たなべは今、自分がサングラスをしていたことにこれほど感謝したことはないだろう。

 あまりのまぶしさに周りもビックリしていたようで、全員が広岡ひろおかの頭にいる、今はほのかな発光をして寝ているキュクローを見ていた。


 いろいろなキュクローと親睦しんぼくを深めているみんなをながめる。これで良かったのだと、和凪かずなぎはそう思った。

やはりあの子たちはわたくしの所にいるより、ここにいる方が幸せそうだ。

食べられる恐怖を、わたくしはまだ知らない。でも、キュクローのお陰で少し学べた。考えを改めるのも悪くない。すぐには難しいけど、いつかまたキュクローを作っても、食べたくならないようになれば……愛した者と共に歩める未来がくれば、それは成長したと言ってもいいだろう。

 そんな考えをしている時、クロと名付けられた黒いキュクローをかかえたノーザイが、和凪かずなぎに近付いて質問をした。


「そういえば、キュクローたちを探してる時に聞いたんだけど、ラボに人間がいるって本当?」

「えぇ、いますよ。でも彼、正気じゃないのでちゃんと話せるかどうか……」


 和凪かずなぎはラボにいる一人の研究員を思い出す。

彼は人間だが、和凪かずなぎがラボに研究員として配属した時から、正気ではなかった人間だ。その人間に対してラボの所長しょちょうは「危害を加えたりはしないから大丈夫」と言うだけだった。

実際、和凪かずなぎや他の研究員たちも危害を加えられたなどという事はなく、彼はとある一人の女性をお世話しているだけなのだ。


「大丈夫。俺はどんな人間でも気にしない。話すのが難しくても、とりあえず会って話がしてみたい」


 ノーザイの強い眼差しに、和凪かずなぎは折れる。

話は通じないが、別に悪い人ではないし、事前に所長しょちょうへ伝えておけば問題ないだろう。そう和凪かずなぎは思い、その人間の名前を教える。


「……彼の名前は松儀しょうぎ来威(くるい)。ウェンシー・エルランダという寝たきりの女性の面倒を見ています。松儀しょうぎさんとのまともな会話は難しいですけど、頑張ってください。あ、わたくしのラボまでの地図をお渡しますね」

「お、ありがとう。明日の予定は決まりだね」


 地図を貰ったノーザイは、ソファーにいる棚部たなべにニコニコとした顔を向ける。ノーザイの顔を見て、棚部たなべはふっと笑って答える。


「まぁ、正気じゃなくても、人間に会ってみるのはいいかもしれない」

「なら行くメンバー決めようよ、さすがに全員で行くのは邪魔になるだろうし」


 ノーザイはリビングにそろっている全員に聞くようにして言った。意外にも最初に返事をしたのは、黄色いキュクローをかかえた百花ももかだった。


「あの、あたしも行っていい? 最近外に出れてないから……」

「いいんじゃない? え、大丈夫だよね? ラボに狂暴きょうぼう凶悪きょうあくなバケモノとかいないよね?」


バケモノのジェスチャーをしながら、ノーザイは和凪かずなぎに聞いた。彼女は真顔のまま平坦へいたんな声で答える。


「そんなのいませんよ」

「じゃあ大丈夫だ。俺と百花ももかと……ブレイクとサフィナも来る?」


和凪かずなぎの答えにニコッと笑い、ノーザイはブレイクとサフィナの方を向く。

 突然名指さしされたサフィナはキョトンとした後、少し考えて同行することを選ぶ。

サフィナが行くという事で、ブレイクの頭には行かないという選択肢が消えた。


「え? あぁ、じゃあ行きます」

「サフィナが行くなら俺も行く」


ブレイクの言葉の後に、棚部たなべがノーザイの名前を呼び、念のため自分も一緒について行く事を伝えた。

ノーザイは手を広げて五という数字を和凪かずなぎに見せる。


「それじゃあ、五人で行くという事で!」

「はい、分かりました。所長しょちょうにお伝えしておきます。それでは、今日は大変おさわがせしました。いろいろ試してみようと思います。それと……キュクローたちの事、お願いしますね」


 和凪かずなぎはそう言いながら頭を下げた後、同じように軽く会釈えしゃくをしたジュジュと一緒に、手をつないでやかたから出ていく。

 そんな二人に、ノーザイがかかえているクロが小さな手を振り「キュッ!」と高い声で鳴いた。それはまるで「またね!」と言っているようだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ