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人外だらけの世界に飛ばされた人間様御一行の記録  作者: 南野


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第二十二話 謎の生き物


 まだ朝日が出始めたばかりの時間、玄関を開ける大きな音が『デルテのやかた』にひびわたる。

 その音を聞き付け、一階の図書室に居た広岡ひろおかが玄関に顔をのぞかせる。


「なになに? どうしたの……って、ノーザイくん?」


玄関にはうつむいたノーザイと、ノーザイにかかえられた、黒くて丸い謎の生き物がモゾモゾと動いていた。


「それは、なに……?」


 広岡ひろおかが近付いて見ようとした時、玄関を開ける音で起こされた人達や既に起床し二階に居た人達が数名、ぞろぞろと一階へ降りてきた。

そして広岡ひろおかの背後には、いつのまにかナイアーが立っていた。

 どうしたのかと数名が玄関へ到着した頃、ノーザイにかかえられまるまっていた、謎の生き物がモゾモゾと顔を出す。そしてその謎の生き物は、目の前にいた広岡ひろおかの背後にいるナイアーを直視した。

 その瞬間、猫が敵を見て毛を逆立てるように全身の毛がボワボワになり、謎の生き物は鼓膜こまくが破れそうなほど大きな声で悲鳴を上げた。


「ヒギュッ……!? ァ゛……ギュア゛ア゛アァアアアァァアアアアアアアア!?!?」


その悲鳴は、先程さきほどノーザイが玄関を開けた音より何倍も大きく、館中やかたじゅう反響はんきょうした。玄関に居るブレイク、サフィナ、棚部たなべ広岡ひろおか百花ももかの全員が咄嗟とっさに耳を押さえた。

 ノーザイは眉間みけんしわを寄せ、歯を食いしばりうるさそうにしているが、かかえている手を離すつもりはないようだ。ノーザイはナイアーに背を向け、悲鳴を上げる生き物から見えないようにするが、それは意味をなさない。

 そんな中、生き物が悲鳴を上げる原因となったているナイアーは何も気にしていない様子で、悲鳴に苦しんでいるみんなをニコニコと見つめていた。

 上階からはドンッ! ドシン、バタン! バタバタ……と、ベッドから落ちた音や扉を強く開ける音が聞こえ、階段をバタバタと降りて来る音が近付いてくる。


 まだ朝日が出たばかりだというのに、早朝からやかたに住む全員が玄関でそろうこととなった。



 ******



 とりあえずナイアーには席を外してもらい、なんとか悲鳴を止めた。今は広岡ひろおかがナイアーと一緒に、諸室しょしつで待機をすることになった。

 ようやく朝日が眩しくなってきた頃、リビングでは謎の生き物がタオルを巻き込みゴロゴロとくつろいでいる。こうして見ると見た目は違うが、ほとんど猫みたいなものだ。

 この謎の生き物を説明するなら、胴体どうたいがなく、まん丸な顔をした黒猫……という印象だ。顔から生えている手足はとても短く可愛らしい。

 そんな姿を全員で見ながら、棚部たなべがノーザイへ問いを投げる。


「それで? この生き物はどうしたんだ?」

「朝起きたら居た。でも何か怪我してるみたいでさ、一応俺なりにできる限りの事はしたけど、心配だからみんなにも確認して欲しくて……」


 ノーザイはその生き物を優しくでながら答えた。その生き物は今、もっとでろと言わんばかりに、ノーザイの手のひらにスリスリしたり頭突きをしたりしている。

 ノーザイは確か普通の一軒家いっけんやに住んでいた。そこに侵入したということは、その生き物はノーザイの家の近くで何かに巻き込まれてしまったのか、道を迷ったのかもしれない。

 ブレイクがそんなことを考えていると、百奈ももながノーザイとその生き物に近付く。


「良ければ私が診てみましょうか? 獣医ではないですけど、医療にたずさわってたので、何か役に立てるかもしれません」


 ノーザイは百奈ももなと一緒に黒い生き物を診てみるが、ノーザイの処置がしっかりしていたのか、特に目立つような傷はなかった。


「この子ってどこから来たんだろ。怪我してたから逃げてきたのかな……」


ノーザイが黒い生き物をでると、その生き物は嬉しそうにグルグルと音を鳴らし、もっとでろと手に頭突きをする。この黒い生き物はとてもノーザイになついているように見える。


「そもそも、これはなんの生物なんだ? 猫に近いが、胴体どうたいが猫じゃないしな。……ノーザイも知らないんだよな?」

「うん、知らない。この子について、町に行って聞いてみるのもいいかも」


 棚部たなべに聞かれた通り、ノーザイはこの生き物を知らない。ノーザイは今日初めて見たのだ。自分より町にいるみんなに聞いた方が、情報を集められそうだと思っている。

 そうして、猫のような生き物を囲んで可愛がりながら考えている時だった。

 チリンチリン、カンカン、とドアノッカーとベルの音が鳴る。

手のいていたブレイクが、棚部たなべに一言声を掛けてから玄関まで行き、重たい扉を開ける。


 扉の先には、目が隠れるほどの瓶底メガネに、長く黒い髪を三つ編みおさげでまとめ、長めの白衣を着ている女性が立っていた。彼女はブレイクに一礼し、メガネをクイッと上げハキハキとした声で挨拶をした。


「どうも、こんにちは。突然で申し訳ないんですが、ここに猫みたいな謎の生き物いたりしませんか?」

「あぁ、いますね。あれは……て、おいっ!」


 ブレイクの言葉を最後まで聞くことなく、その生き物がいると分かった瞬間、彼女は素早い動きでブレイクの間をすり抜けやかたの中へと侵入した。

 ブレイクはすぐに追い掛けるが遅かったようで、彼女はすでにリビングへと着いているみたいだ。到着したリビングからは、扉が閉まっているにも関わらず、彼女の喧騒けんそうがしっかりと聞こえた。


「ちょっと! どうして逃げるのですか!?」

「いやいや! それより君は誰やねん!?」


彼女のそんな声と白金しろがねの突っ込みが扉越とびらごしにひびく。

 ブレイクがリビングの扉を開けた瞬間、ブレイクの顔面にすごい勢いで例の生き物が直撃ちょくげきした。


 リビングから「あっ」というノーザイの声と「お兄ちゃん!?」というサフィナの声が聞こえたが、予測できずに突然来た衝撃しょうげきにブレイクは体勢を崩して後ろに倒れ、頭を強く打ち気絶した。


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