表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人外だらけの世界に飛ばされた人間様御一行の記録  作者: 南野


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/55

第二十話 器


 休憩をはさんだコーネダリスは、ソファーに座って腕と足を組んだまま、人差し指を立てて続きを話し出す。


「違和感っていうのはネ、サフィナちゃんの魔力は元からあるものじゃなくて、何者かによって意図的に増やされた、又は入れられた魔力っぽいんだヨ。そして、おそらくそれに耐えれる体にするために、人外にされたのかもしれない……って思ったのサ。人間より人外の方が貯蓄ちょちくできる魔力は多いからネ」

「なぜ、サフィナにそんなことをする必要が? 相手の意図が読めないんですけど……」


ブレイクの質問に、コーネダリスは険しい顔をして答える。そんなコーネダリスの顔に、ブレイクは嫌な予感がした。

 一人の人間に対してそこまでするのは、確実に何かをやろうとしているという事だ。その何かはきっとろくな物ではない。犯人はサフィナを人外にしてまで何をげようとしているのか、ブレイクには分からないし分かろうとも思わない。


「今の時点で可能性として上げられるのが、サフィナちゃんはうつわにされようとしてるんじゃない? って思うのサ」

うつわ?」


 ブレイクからすれば、うつわと聞いて良い感じはしない。うつわが大きいとか小さいなど以外で、あまり生きている相手に対して言う言葉ではないからだ。

 サフィナは空っぽではない。サフィナという人格があって、ブレイクの大事な妹という唯一無二の女の子だ。そんな彼女をうつわ、つまり入れ物として扱おうとしている相手がいる、それだけで嫌悪感をいだいてしまう。

 コーネダリスはブレイクの思いを感じているようだが、気にせず話を進める。


「なんて言うか、サフィナちゃんに近い誰かの魂、それを入れようとした形跡けいせきがあったのサ。上手く消してたみたいだけど、私の目は誤魔化せないヨ!」

「ちょっと待ってください、それってヤバイ事なんじゃ……」


 ブレイクは自分の考えていた最悪の事態が起こっていたことに、冷静ではいられない。

もしかしたら、あの大樹たいじゅでサフィナと再開した時に、見た目だけがサフィナで中身が別人の相手になっていた可能性があったのだ。

 サフィナも少しうつむいて、自分の胸に手を当てている。


「そうだネ。これは予想だけど、その魂を入れるために膨大ぼうだいな魔力が必要で、尚且なおか適正てきせいの高い人物じゃないといけなかった。そしてそれが、サフィナちゃんだった……って感じだと思ってるのサ。あくまでそうかもしれないってだけだから、確定ではないヨ」

「その魂って、誰の魂なのか分かってるんですか?」

「さすがにそこまでは分からなかったヨ。かろうじて分かったのは、サフィナちゃんに近い魂ってことぐらいサ。近いと言っても、ほんの少し気配が似てるってぐらいだヨ」


 気配が似てるとはどういう事だろうか。ブレイクは考えてみるが、よく分からない。しかし、近いという事はサフィナと何かしらの関係があるのか、たまたま性格や考え方が似ているのか……考えてみても今のブレイクでは明確な部分は分からない。

そんな中、広岡ひろおかが疑問を言葉にする。


「それともう一つ気になるのは、なんで本来の世界に帰ると心臓が止まるのかなんだよね。人外にされた際に、サフィナちゃんがこの世界から逃げられないよう、人外化と一緒にそういうまじないもかけてそうな気がする。それか、人外になったサフィナちゃんの種族の問題かな」


広岡ひろおかの疑問も分かる。

なぜ元の世界に戻っただけで、心臓が止まるのかも謎なのだ。サフィナについて少し分かっても、更に謎が増えていく。どう(どう)めぐりになっている情報に、ブレイクはもん(もん)と悩むことになる。

 コーネダリスは広岡ひろおかの最後の言葉を拾う。


「サフィナちゃんは、サントスに近いと思うヨ」


コーネダリスの言葉に、全員の視線がサントスに集まる。サントスは特に気にせず紅茶を飲んでいた。

 ブレイクはサントスとサフィナを見比べる。白目が黒くなっているところはサフィナと一緒だ。

しかし、それ以外に何か共通点があるかと言われると、それはない。サフィナにはツノが生えてるがサントスにはなく、二人とも耳はとがっているが形が少し違う。もしかして、似ているのは中身……体質の方なのかもしれないとブレイクは思った。


「……君たちがいた世界を、私はくわしく知らないんだヨ。だから絶対に同じとは言えないけど、一応説明するネ。サントスは魔力で生命を維持いじしてるのサ。つまり、魔力がないと死ぬってことネ。この世界は沢山の魔力が空気中に浮いてる。人間で言うところの酸素みたいなものだヨ。それが無くなる、又は数が減少すると、生命を維持いじするのが難しくなるネ」

「魔力の問題かぁ……。でも日本にも魔力は浮いてるからなぁ。そりゃまぁ、中東やヨーロッパに比べたら日本は少ないかもしれないけど、だからって一瞬で心臓が止まるのはおかしいよね」


そう言った広岡ひろおかに、コーネダリスはうなずく。


「そうだネ。だから私も君が言ってたおまじない……というよりのろいかな。それをかけられた可能性が一番高いと思うヨ」

のろい……」


 のろい。まじないとも読むが、確かにのろいの方が近いかもしれない。

そう思ったブレイクは更にサフィナが心配になる。大事な人にのろいをかけられたと言われ、はいそうですかで済ませることはできない。

 しかし、広岡ひろおかの言葉にブレイクは思考を変える。


憎悪ぞうおのあるのろいより、ここにいて欲しいっていうまじないに見えるけど、まぁどっちにせよ一緒か……」


 ブレイクは広岡ひろおかが呟いた言葉に少し納得した。もし相手の目的がサフィナに誰かの魂を入れることなら、そう簡単に死なせるような事はしないだろう。

しかし、元の世界に帰られると困る。だからあのようなやり方になった、その可能性もありえなくはない。実際そのせいで、サフィナは今すぐ元の世界に帰る事ができなくなっている。

 元の世界に帰らなければ、まずサフィナが死ぬことはないだろう。しかし、帰るためにはサフィナを人間に戻すか、そののろいを解く必要がある。

もっと調べなければいけないこと、これから何をするべきなのか、ブレイクは頭を悩ませる。


「考えないといけない事が沢山あると思うのサ。でも、あんまりネガティブになっちゃ駄目だヨ。心から暗くなると体にまで影響が出るからネ。お兄さんがしょげてちゃ、サフィナちゃんも心配しちゃうのサ」

「……あぁ」


 コーネダリスはブレイクにはげましの言葉を投げるが、今のブレイクには答える余裕よゆうがない。

 しっかりとした返事をしないブレイクをコーネダリスは気にしない。少し彼を心配そうに見つめた後、棚部たなべの方を向いて人差し指を立てる。


「それじゃあ、次は魔法陣にかんしてだネ」

「あの魔法陣について、なんか気になることでもあった?」


コーネダリスの魔法陣という言葉を聞いて、ノーザイは棚部たなべに問うが、それに返答したのは広岡ひろおかだった。


「僕たちが飛ばされて来た場所で、みんなが再会してワチャワチャしてた時あったでしょ? その後ろでちょっと魔法陣を調べてたんだけど、気になる事があってね」

「ふーん? 俺にはよく分からんけど」

「まぁ大したことじゃないよ。ちょっと確認したいだけだから、大勢で行かなくてもいいかな」


 広岡ひろおかがそう言って席を立つと、棚部たなべも席を立ってコートを羽織る。


「俺と広岡ひろおか、それとコーネダリスさんで調査に行く。お前らはここで待機しといてくれ」


棚部たなべが調査に行くメンバーを言うと、徳札とくさねが胸に手を当て乗り出す。その表情はとても必死に見えた。


「私もついて行っては駄目ですか?」

「悪いな、メンバーは固定だ」

「……分かりました」


誰が見ても分かるほど肩を下げてしょんぼりした徳札とくさねに、棚部たなべは「やかたを頼むぞ」と徳札とくさねの肩を優しく叩く。


「マトロポスとサントスはみんなと仲良くしててネ! みんなも二人に聞きたい事とかあったら、いろいろ聞いてみてもいいのサ! それじゃ行ってくるヨ」


 コーネダリスは手を振り、マトロポスやサントス、ノーザイや桜音さくらね姉妹も手を振り返して見送る。

 そんな後ろでは、サフィナの事を考えてうつむいているブレイクと、同行を拒否されしずんでいる徳札とくさねがおり、そこだけ空気が重くなっていた。

 サフィナはブレイクの隣で心配そうに何か話しており、白金しろがね高峰たかみね徳札とくさねなぐさめていた。しかし、徳札とくさねは「やかたを頼まれたんです。落ち込んでる場合ではありませんね!」と言って、急に元気になっていた。それを白金しろがね高峰たかみねは見慣れているのか、気にせず一緒にオーと拳を上げていた。


 そんな温度差の激しいリビングの扉を閉じて、コーネダリスは棚部たなべ広岡ひろおかの後を付いて行く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ