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人外だらけの世界に飛ばされた人間様御一行の記録  作者: 南野


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第十九話 魔法


 「こんにちは! コーネダリスさんだヨ! ご連絡ありがとうございます! てことでお邪魔するのサ!」


 元気な女の子の声がリビングに響く。突如とつじょ現れた緑色の大きな魔法陣から、魔女のような格好をした女の子が登場し、後から二人の男も出てきた。


「コーネダリスうるさい。いきなり大声で来たら相手さんびっくりしちゃうでしょ」

「どうも、遊びに来ました」


 突然現れた三人組に棚部たなべが何か言おうとする前に、女の子が元気に話し出した。


「おっと、みなさん勢揃せいぞろいだネ! 私を知らない人達がいるだろうから、自己紹介するのサ! 私はコーネダリス・ウィルチー。偉大な魔女ですヨ!」


そう紹介したのは、緑色の髪を後ろで三つ編みにしており、魔女帽子にローブ、片手にはかざりが沢山付いた大きめのほうきを持つ、緑色の目に白い星を宿やどした女の子だった。


「ほら、二人も自己紹介しないと駄目なのサ! じゃないと誰が誰か分からないヨ?」

「はいはい、分かったよ。僕はマトロポス・カルサーロ。コーネダリス(こいつ)の使い魔みたいなもの」


 コーネダリスにうながされ自己紹介を始めたのは、狼のような獣耳が付いた茶髪で褐色の男性。彼の金目はハンターのようにするどく、こちらが獲物になったかのような感覚におちいる。


「では、私も自己紹介を。私はサントス・ヤーネス・ベルナベと申します。サントスとお呼び下さい。コーネダリスさんは私の恩人なんです」


 マトロポスに続いて紹介したのは、鶯色うぐいすいろの髪に水色のインナーカラーをしており、水色の目にモノクルを付けている男。彼の白目は、サフィナと同じように黒目になっている。彼は三人の中で一番身長が高く、棚部たなべよりも身長があるように見える。


「はい、自己紹介終わり! 君たちの名前と顔は既に知ってるから大丈夫だヨ!」


 コーネダリスの言葉を最後に静まったリビングで、棚部たなべがなんだか申し訳なさそうに言った。


「あー、こいつらは俺が呼んだんだ」

「そう! 魔法陣とサフィナちゃんについてだネ! ちょうどここにいるし、先にサフィナちゃんの方にしようと思うのサ。いいかナ?」


棚部たなべの後にコーネダリスが話を進めていくが、ブレイクには聞き捨てならない言葉が聞こえた。


「ちょっと待て、サフィナについてってなんですか?」

「サフィナちゃんの体質についてかナ。君たちが来る前に、彼女自身から許可を得ていろいろ検査させて貰ってたんだヨ。その結果をお知らせに来たのサ! ついでに魔法陣について気になる事ができたから、一緒に見て欲しいって依頼も受けたんだヨ」

「うん、ちゃんと私が許可したの。お兄ちゃん大丈夫よ、あまり気にしないで。コーネダリスさんは信頼できる、とてもい人よ」


サフィナにそう言われ、ブレイクは心配ながらもコーネダリスの話を聞くことにした。

 リビング全体を見回したコーネダリスは、少し悩む仕草をした後、ひらいたという顔でみんなに向けて話す。


「うーむ、そうだネ。説明をしようかナ! 新人さんが多いから、基礎きそを教えてあげるのサ! まず聞きたいんだけど、君たちの世界では魔法や魔術は普及してたのかナ?」


 魔法や魔術。これを知らない人はほとんどいないだろう。しかし、使えるかと言われると、使えないと答えるしかできない。

ブレイクたちが居た元の世界では、幻想的げんそうてきなものという印象があり、使えるわけがないという考えだ。

しかし、今はそうではない。おそらくナイアーが作り出した魔法陣によって、ブレイクたちはこの世界に飛ばされたのだ。

 ブレイクは本当に使える人は使えるのだろうと思う。だが、普及していたかと言われると微妙である。実際、ブレイクもナイアーの魔法陣を見て経験するまで、魔法なんてあるわけないと思っていた。

 ブレイクがそんな事を考えている中、広岡ひろおかが当たり前のように答えた。


「そんなに普及してなかったよ。一部が取りあつかってたぐらい。魔法ってか魔術にかんしては、知ってても自分じゃ使えるわけないって思い込んでる人達のほうが多かったからね」

「あぁ、なるほど。理解したヨ」


広岡ひろおかの回答にコーネダリスはうんうんとうなずき、魔法で空中に何かを浮かばせる。それは何かの図だった。


「まず魔法や魔術は使おうと思えば誰でも使えるのサ。それを使うために必要なのは、魔力と呼ばれるものだネ。それは人間も人外も動物も植物も、生きとし生けるもの全てに存在するんだヨ」


 コーネダリスによって作られた簡素かんそで分かりやすいイラスト調の図が、魔力と生物について表していく。

 いつのまかサントスやマトロポスも、ブレイクたちと同じようにコーネダリスの説明を聞こうと座っていた。真剣に聞いているというより、コーネダリスの魔法を見ているといった感じだった。


「でも、ひとりが持てる魔力には限度があるのネ。私のよう莫大ばくだいな魔力を持っていても体を維持いじできて、コントロールもできる特異体質者とくいたいしつしゃが魔女、あるいは魔法使いって呼ばれてるのサ! 普通だったら、あまりにも多すぎる魔力は毒になるヨ。体内からジワジワと魔力におかされ、体が急速に劣化れっかするのサ。つまり、若い内に亡くなっちゃうケースが多いんだヨ。長生きできないってことネ」


 魔力について説明するコーネダリスは、ブレイクたちを一人ずつ眺めて、何かを理解したようにうなずく。そして、全員のデフォルメ顔が並んだ図を作り出す。その図の一番左側にはサフィナ、一番右側にブレイクのデフォルメ顔があった。

順番はサフィナ→ノーザイ→棚部たなべ広岡ひろおか白金しろがね徳札とくさね高峰たかみね百花ももか百奈ももな→ブレイクとなっており、これはブレイクたちの魔力の量を表していた。


「君たちの中だと、サフィナちゃんの魔力が一番多いネ。逆に、ブレイクちゃんは一番魔力が少ないヨ。あまりにも魔力が少なすぎると、使える魔法や魔術も勿論もちろん少なくなる。それから、一番一般的な魔力量をしてるのは徳札とくさねちゃんかナ。これぐらいが普通だヨ」


 図を示しながら説明していくコーネダリスだが、図から目を離してサフィナを見た。その表情は少し心配している様子がうかがえた。ブレイクは少し不安になった。


むしろ、サフィナちゃんは多すぎるぐらいなのサ。私以上の魔力だヨ。その魔力量で特に体調の変化がないなら、サフィナちゃんは魔女に分類ぶんるいされててもなんらおかしくないのサ……と言いたい所だけど、サフィナちゃんの魔力にはちょっと違和感があるんだよネ」

「違和感?」

「そう違和感がネ。普通に見た感じだと分からないけど、私がサフィナちゃんの体質を調べてたら、ちゃーんとおかしい事に気付けたヨ」


ブレイクの言葉にそう返すコーネダリスだが、ウインクをしてブレイクの後ろを通り、机に手を当てて腰掛けて言った。


「説明すると長くなるから、一旦休憩挟もうヨ」

「なっ、今すぐ聞かせてくれないのか?」

「私も考える時間が欲しいのサ。そして、サフィナちゃんに確認したいことがあってネ。安心して、ちょっと見るだけだヨ」


 コーネダリスはすがっていた机から離れ、ソファーに座っていたサフィナに近付いて手を出す。


「サフィナちゃん、ちょっと手をりてもいいかナ?」

「は、はい」


コーネダリスはサフィナと手をつなぐ。つないだ手を見てコーネダリスはサフィナに優しく伝える。


「私の手に魔力を渡すイメージで力を込めれるかナ? 手に魔力を集めて渡す感覚でやってみてヨ。まぁ、なんとなくでいいからサ」

「こう、ですか?」


 周りから見ても、ただ二人が手をつないでいる様にしか見えないが、コーネダリスは目を閉じて何かを感じているようだ。

一分にも満たない時間で、コーネダリスはサフィナの手を放す。


「……うん。…………ありがと、もう大丈夫だヨ。サフィナちゃんも休憩しようネ」


サフィナから視線を外し、ソファーや椅子に座っているみんなを見る。

 コーネダリスは頭に感嘆符かんたんふを浮かべ、魔法で何かを作り出しながらトコトコと歩いて何かを渡そうとした。


「あ、忘れるところだったヨ。これをみんなに渡しておくのサ」


 コーネダリスがそう言って渡してきたのは、三つのボタンが付いた片手サイズの謎の物だった。

ボタンにはそれぞれ、緑色の星、金目の狼、モノクルが描かれていた。おそらく星がコーネダリス、狼がマトロポス、モノクルがサントスをしていると思われる。これは三人の連絡手段として使うものだろうと考えられる。


「それを使えば、私たちの誰かに連絡が着くヨ。お買い物したくなったり、何か魔法について相談したい時に、迷わずそのボタン押しちゃってネ! 誰に連絡すべきか迷ったら、とりあえず私に連絡すればいいヨ!」


 コーネダリスはそう言った後キッチンの方へ向かい、まるで我が家の様に魔法で飲み物を入れていく。


 休憩と言っても、ブレイクはサフィナの事で頭がいっぱいだ。

周りは普通に休憩をしているようで、コーネダリスやマトロポス、サントスといろいろ話している。時折ときおり聞こえるのは、コーネダリスの魔法のやり方や、マトロポスが本物の狼になれること、サントスが植物にくわしいことなどで、楽しく会話をしているのが伝わる。

しかし、ブレイクの耳はそれらが左から右へとそのまま流れていってしまう。ブレイクにとっては、あまり休めない休憩だった。

 そんなみんなの様子を、周りから少し離れたところで見ながら休憩をしていた広岡ひろおかに、コーネダリスが近付いて話し掛ける。


「ねぇ広岡ひろおかちゃん」

「ん? なんだい?」

「それ、私みたいに分かる相手には分かるヨ。君が気にしてないなら、私はこれ以上何も言わないサ。けど、バレたくないなら、隠す方法を教えてあげますヨ」


そう言いながら、コーネダリスは自分の左目をしていた。広岡ひろおかはすぐに彼女の言いたいことをさっする。


「あー……いや、今はいいかな。けど、もしかしたらいつか必要になるかも。その時には是非ぜひお願いしたいな」


 広岡ひろおかは彼女の提案ていあんに少し考えたが、今はやめておくことにした。

普通の人間や人外には気付かれなかったが、コーネダリスのように魔法や魔術にくわしいなら、広岡ひろおかからわずかにれ出る別の相手の魔力を感じ取っても何等なんらおかしい事ではない。


「そっか、じゃあこれを渡しとくヨ。連絡、いつでもお待ちしてるのサ! とは言っても、もうしばらくはここにいるけどネ」


 そう言って、コーネダリスは先程さきほどブレイクたちにも渡していた、連絡用のボタンが付いた物を広岡ひろおかにも渡す。

 コーネダリスの用はそれで済んだのか、彼女は既にマトロポスたちの方へと移動していた。


「まぁ、そっち系にくわしい相手だとバレるよなぁ……」


 手に持っていた珈琲コーヒーすすってポツリとつぶやいた広岡ひろおかの言葉は、誰かの耳に入ることはなかった。


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