第98話 人類の奇才 VS 支配の超怪異
―――アズルーズ異能学園・旧校舎―――
「そうですね......ではこの足をいただき”ました”。」
......おっと、参ったな。
認識する暇すらなかった。
左足の感覚が、もうない。
状況から導き出せる攻撃手段はただ一つ。
純粋な高速接近による、直接攻撃だ。
「料金は基本前払いってこと......?」
「人は弱いこと.....出血だけで死に至るなど。」
「それはそうだね~。開始早々目まいがしてきたよ♤」
「下等種は苦労が絶えませんことね。」
異能で出血は止めた。
まぁ、それで失った血液が戻るわけじゃないけど。
......だけど、どうした?心が読めるのなら、なんで追撃してこない?
この状況からして、やはりマダムは相手の心を読めるわけではない?
どちらにせよ......
逃げ切れる確率が低いのなら、殺し切るしかない。
僕の神律章式を最後まで叩き込めれば、可能性はゼロじゃない。
やるしかないねん♡
「全開で行くよ。”異能共振・焔氷神魔”」
「無駄なことを......」
「共振奥義・氷律之第一章:凍原......」
「あら?直接作用での攻撃は終いでして?」
彼の詠唱とともに、空間そのものが書き換わる。
旧校舎の内部は、文字通り見渡す限りの凍原へと変貌した。
だがそれは、先ほどの直接作用とは異なる。
空間を支配するアルコンに届くはずもない、ただの冷気......
......の、はずだった。
「第一詩・霜害。」
「......ッ?」
「どうやら......相性が悪いのはマダムみたいだよ?♤」
「この程度でわたくしをどうこうできるわけ......」
アルコンの身体に、鈍い損傷が走る。
即座に砕ける破壊ではない。じわじわと、肉体の内側へ食い込むような侵蝕だった。
足元から冷気が這い上がってくる。
支配しているはずの周囲一帯、その地面そのものから。
「第2詩・樹氷。」
「......」
「続けて、第三詩・雨氷。」
「認めましょう......確かに相性は最悪のようですわ。」
アルコンの異形の肉体に、白く鋭い氷の結晶がまとわりつく。
続く三詩では、過冷却状態に置かれた鋭雨が降り注ぎ、その全身へ容赦なく突き刺さった。
肉体へ食い込んだ雫は衝撃と同時に本来の固体へと変質し、内側から凍傷を拡げていく。
「一章・幕の詩:凍害。」
「この......」
「演技はいいよん。この程度なんともないのバレてるからさ?♠」
「......余興はお嫌いかしら?」
アルコンは、何食わぬ顔で凍害を打ち砕いてみせた。
完全凍結によりマダムの一部は、確かに欠損している。
だが、それすら超怪異にとっては、かすり傷にも等しい軽傷でしかない。
攻撃が当たるが、まるで有効なダメージを与えられていない。
しかし――僕の異能は、まだまだ章がある。
「......余興は大好きだね~♡すぐに捕まえればいいのに。」
「えぇ。もうこちらは仕掛けております。」
「.....?」
「では......自分で右腕を切り落としてごらんなさい。」
次の瞬間、僕の右腕から鈍い音が響いた。
腕の切断なんて、もう何度も味わってきた感覚だ。
だが、今回は違う。
切断面が完全に凍結している。
そのうえ、左腕には僕自身の血が付着していた。
......つまり、これは。
「僕の脳神経の一部を支配したわけか......。」
「あら~?ヘラヘラした、お可愛いご尊顔が台無しですこと~。」
「失礼な~!僕だってたまにガチ恋くらいするさ♤」
「ですけども、全身を掌握できないあたり流石にナンバーズですこと。」
左腕は、ほとんど奪われたも同然だった。
もう自分の意思では、まともに動かせない。
それどころか、匂いも感覚も少しずつ鈍っていく。
どこかで既に、僕自身が術中に落ちていたのだと分かる。
......きっと最初のも、心を読んだんじゃない。
僕が、自分で心の声を口から漏らしていただけだ。
「仕方ないなぁもう。大サービスだよん?」
「あら?」
僕は異能で生み出した氷刃を振り、左腕すら自ら切り落としてみせた。
少し時間はかかる。だが、僕のもう一つの異能......
”レンジハイヒール”なら、時間さえあれば腕は治せる。
それはそれとして......現時点でマダムは全開状態ではないのか?
全身を支配しないあたり、マダムの異能には強者に対して何らかの制限があるようだ。
「......支配できる部位の数に限りが?」
「......ご名答です。」
「マダム~嘘ついたね? この異能共振の世界で効果が薄れた......だね?♠」
「......その口を閉じなさい。」
そうだ......
さっきから冷静そうにしているが、格下扱いされる言葉には露骨に感情を見せる。
加えて、全身を支配できるのなら、わざわざ四肢を切り落として拘束する必要はない。
こいつは......
他の超怪異に比べて、正面戦闘はそれほど得意ではないのかも。
「なんだ。結構弱いじゃ~ん♡僕程度が戦えるなんて~?」
「わたくしが弱い?......人間程度で戦える存在と?」
「うんうん。」
「ならその舐めた態度の対価は苦つ......」
――僕はわざと相手の言葉に被せるように、渾身の煽り文句を叩き込んだ。
「皇帝級より弱っちそ♡」
「......は?」
それまでとは比べものにならないほどの殺気が溢れ出す。
その圧は改めて、”僕では勝てない”と理解させるに足る、圧倒的な殺意の奔流だった。
だが、今はそれでいい。
長期戦を”しすぎれば”、こちらが不利になる。
多少無理をしてでも、ハニーたちにこの情報を持って帰る。
それがプリンセスとしての、僕の仕事さ!!
「さぁて。倒しちゃおうかな~?アメェリカンコーフィーが僕を呼んでいる。」
「無駄な抵抗を......」
「さぁ始めよう......焔律之第一章・炎災」
「......怪能・封心統御。」
たとえこの任で命を落としたとしても、それでいい。
退怪術士になった時点で、死ぬ覚悟なんてとうにできている。
たった十数秒の伝達事項をFCTへ送るために、僕の全てを投げ出せる。
人が弱小種族に成り下がってからずっと、人類と怪異の戦いはそういうものだった。
「第一詩・出火。」
......でも、一つだけ呟かせてくれ。
僕は君を、心から一番に愛していたよ。
――スペシャルマイハニー......愛しきミレイ。
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
でもここまで読んでくださりありがとうございます!
空間をも支配する絶対の怪能を持つ支配の超怪異。
しかし”神”の文字を冠する”寒熱のレイ”の異能が条理を無視して炸裂し?
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
でもここまで読んでくださりありがとうございます!
空間をも支配する絶対の怪能を持つ支配の超怪異。
しかし”神”の文字を冠する”寒熱のレイ”の異能が条理を無視して炸裂し?
5月16日、16:00更新の次回......遂にあの四大超怪異までが姿を現す?
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