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不死者の王  作者: Yuki@召喚獣
第一章
3/6

不死者になったんですよ

 俺は怠惰な人間だったと自覚している。暇な時間が大好きだし、できることなら休みの日はずっと寝ていたい。本当は大学に行くのだってバイトに行くのだって億劫なのだ。


 でも、それらは行かなければ俺の生活が成り立たなくなる。俺は怠惰な人間だが、それ以上に死ぬのが怖かったのだ。


 だから、死なないために生きていた。生きることに大した目標はなかった。


 いや、あるにはあったのかもしれない。きちんと就職して、できれば彼女と結婚して、子どもを授かって、老後を迎える。そんな、漠然とした目標が。


 だが、それも彼女の浮気を知ったあの瞬間に全て無くなった。俺にとって無価値になってしまった。


 だから、やっぱり目標なんて無かったのだ。


 そんな怠惰な俺が一生懸命歩き回って情報を集めたかというと、もちろんそんな訳はない。すぐに飽きて、途中で比較的ダメージの少ない建物に入っていった。


 建物の住人は死んでいるのか、物音一つしない。或いはさっさと逃げ出したのかもしれないが、まあそこはどうでもいいことだった。


 建物の中には瓦礫や散らばっている家具だとか色々なものの中に混じってノートパソコンも転がっていた。幸いにも壊れていないようで、電源を点けることに成功した。正直面倒だったが、まだ情報収集をしようという気は残っていた。


 家族共用のパソコンだったのか、パスワードが設定されていない。都合がいいので、そのまま起動してインターネットのブラウザソフトを立ち上げた。


 が、当然の事ながらWi-Fiは死んでいるようで、繋がらなかった。あいにく俺のスマートフォンはトラックに押し潰されてとっくに壊れている。


 ポケットWi-Fiが無いかと辺りを探る。適当に物を退けつつ、隣の部屋まで移動するとそれらしきものが落ちていた。書斎のような雰囲気なので、誰かが仕事用のパソコンのために購入していたのだろう。


 ポケットWi-Fiの電源を点ける。これも問題なく着いたので、パソコンと繋げる。こんな状況で使えるかどうかは賭けみたいなものだったが、案外なんとかなるようでそのまま使えた。


 ブラウザソフトを再度立ち上げ、インターネットで自分の住んでいる地域の検索をする。こんな状況なのだから何かしらヒットするだろう。


 その考えは当たっていたようで、直ぐに何件かヒットした。取り敢えず一番上に来ているものを見ると、そこにはこう書いてあった。


【未曾有の大災害。全国で相次いで巨大地震が発生。震度7を記録する地域も】


 そんなニュースの記事だった。そして、震度7が発生した地域の一つが俺の住んでいる街だった。


「マジかよ……」


 思わず声が漏れてしまった。異常事態に過ぎる。


 記事によれば全国各地で巨大地震が発生しているらしい。無事なのは中四国、九州、沖縄方面の方だけで、近畿から中部、関東、東北の方は壊滅的らしい。北海道は東北の地震の津波の煽りを受けている。


 この地域だけではない。日本中で異常事態が発生していた。


 インターネットを閉じて、パソコンの電源を落とす。ポケットWi-Fiの電源も落として、ポケットに入れる。


 重要な情報源だ。他人のパソコンだが、仕方ない。心の中で謝りながらパソコンを近くにあったバッグに入れた。


 バッグを肩にかけて建物から出たところで、地面が揺れた。トラックに轢かれる直前に感じた揺れはこれだったのかと思うような揺れだった。恐らく余震だろう。


 揺れ自体は俺が少し体制を崩す程度の揺れだった。だが、さっきまでいた建物は違ったらしい。所詮他の建物よりもダメージを受けていないだけで、あと一歩で倒壊するくらいのダメージを受けていたということだろう。


 何かが崩れる音がして、凄まじい音を起てながら建物が崩れた。俺を下敷きにして。


 流石に死んだと思った。とっさに腕で顔を庇ったが、それは所謂人間の防衛本能というやつで、本当に守れるとは思っていなかった。


 目の前に家が迫った。潰れるな、とどこか遠いところで思った瞬間、迫ってきていた家が弾かれた。


 いや、弾かれたというのは語弊がある。確かに俺の腕に当たっていたし、腹にも脚にも当たっていた。それらが俺に傷を付けることなくそのまま跳ね返されたと言うべきか。


 轟音を起てて建物が崩れ落ちた時、俺はトラックに跳ねられた後のように無傷でその場に立っていた。


 そして、また、ふと思い出した。


「おめでとう。貴方は不死者になりました。もう死ぬことはありません」


 その言葉で、今の状況で、俺は自分が死なない人間――不死者になったことを理解した。


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