表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/37

第17話 狙われる身


 山道を行く馬車はあっという間に十数人の男たちに囲まれてしまった。


 質が良さそうに見えない剣を片手に、ニヤニヤと笑っている。じりじりと包囲の円を縮めた。


 馬車のドアから飛び降り、ディランが剣を構える。レミは馬車の反対側に回った。アルヴェントは杖を、クリスは本を手に取る。


「ディラン・ブラーガ、その命もらっ――!」


 リーダー格の男が言い終える前に、レミは闇の刃を放った。吹きあがった砂埃に紛れて、男たちの中に突っ込む。

 戸惑った彼らをあっという間に叩き伏せていく。


 ディランも剣を振りかざして、男たちに向かって行った。

 アルヴェントとクリスの援護もあり、数分で彼らを制圧してしまった。


「誰からの命令だ?」


 ディランがリーダー格の男の首元に剣を突きつけながら尋ねた。髭面の男はフンと顔を逸らす。


「使い捨ての野良犬が一丁前に忠犬気取りかい? ご苦労なこった」


 髭面の男との隣にしゃがみ込んだレミが鼻で笑った。男がギリッとレミを睨みつける。


「まあ、あたしは誰でもいいけどさ」


 レミはそう言って、乱暴に男の額を掴んだ。リーダー格の男が短い悲鳴を上げる。レミの手から黒い魔力が揺らいだ。

 何をするのかとクリスが声を上げる。


「レミ!?」

「大丈夫、大丈夫。痛くはないはずだから」


 レミは軽く笑いながら男に魔法をかける。男から悲痛な声が上がった。恐怖で顔が引きつっていく。レミが手を放すと、男は肩で息をしながら震えていた。


「さ、忠犬はちゃんとご主人様の所に帰るんだよ」


 レミはにっこりと満面の笑みを浮かべた。男はよろよろと立ち上がり、仲間を残して走り去っていった。


 仲間が声を上げても、振り返ろうとしなかった。


「今の魔法は……?」


 ディランが唖然としながら尋ねる。


「ただのマーキングみたいなもんさ。あとで誰の所に帰ったか、わかるよ」


 レミの答えは素っ気ない。ただのマーキングにしては、男の悲鳴は異常だ。それを問いただそうとしたところで、彼女は答えないだろう。


 先を急ごうとレミはみんなを促した。馬車の移動が再開する。



 夕方前に、少し大きな町に着いた。馬車に乗ったまま宿屋を探していると、身なりの良い細身の男性に止められた。


 この地域を治めるジオーラ子爵というらしい。


「ブラーガ公爵のご子息、ディラン様ですね!? どうぞ、我が家へお泊りください!」


 断るに断れない勢いだったため、ジオーラ子爵の家へと向かう。


 ジオーラ子爵邸では、歓待を受けた。夕飯も豪華なメニューが並び、部屋も良い場所を貸してもらえた。そこには公爵家への忖度が見て取れる。


 夕食後、ディランとアルヴェントの部屋に集まって明日以降の行動を話し合った。


「ブラーガ公爵には悪いけど、あの馬車はここに置いていこう」


 レミの第一声はそれだった。どうして、とディランが首を傾げる。レミは肩を落とした。


「公爵家の紋がついた馬車は目立ちすぎる。今日だってディランを狙った山賊だったんだよ。誰かに狙われる心当たりないの?」

「俺を狙う奴ら、ねえ……」


 呑気な声で考え込むディラン。レミは顔をしかめて、アルヴェントに目を向ける。


「ディランに活躍されて困る奴らなら、少しはいるんじゃないかな。ガロンを公爵家の跡取りにしたい奴ら、とか」


 アルヴェントは思っていたことを答えた。ディランはため息をつく。面倒くさそうに頭をかいた。


「俺よりガロンが公爵家を継いだほうがいいと思うんだよな。伯父上は俺に公爵家を継がせたくて、こうやって何か功績をあげられるようにしてくれてるのはわかるけど」

「ディランは腹の探り合いとか細かいこと苦手だもんね」


 アルヴェントは軽い声で笑う。


「貴族も大変なのね」


 クリスが気の毒そうに言った。ディランが真っ直ぐな性分であることはすぐにわかった。


 最初はそれを信用して、手を貸したのだから悪いことではない。

 ただ、貴族社会を生き抜くには、なかなか難しい性分なのだろう。


「だったら、早々に明日は発とう。ここの当主はどうも胡散臭い。今夜も気を付けなよ」


 レミの顔は険しい。ジオーラ子爵に良い印象を持っていないようだ。人の様子を敏感に感じ取りながら生活してきた彼女の感覚が警鐘を鳴らしている。


 ディランは大袈裟な、と言いたげな表情を浮かべた。


「子爵家の中で襲われるなんてことは……」

「甘い」


 レミはバッサリと切り捨てる。彼女の真剣な指摘もあり、ディランは頷いた。



 その夜、閉めていたはずのドアの鍵がカチャリと開いた。音もなくドアが開き、一つの影が部屋に滑り込んでくる。


 月明かりに照らされたのは一本のナイフ。


 振り上げられたナイフは、眠っているディランへ振り下ろされた。


お読みいただきありがとうございます。

ディランは素直で真っ直ぐなので、腹の探り合いとかが苦手です。

誠実なのは良いことですが、お貴族様の社会では生きづらいのかもしれませんね。

よろしければ、ブックマーク、リアクション等よろしくお願いします。

頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ