【第3話】記録者レイ、勇者パーティーに同行す
「えっ⁉︎」
「父さんを知ってるんですか?」
知ってるも何も俺もあの町の出身だ!あの町でクロノス一家に世話になって無いやつなんかいねぇよ。
で、坊主!お前のスキルは何だ?
”さっきの件もあり一瞬口焦る“
「あの…..物を記録できる”記録“です」
”やはりギルド長も沈黙する“
「そういう反応になりますよね…..」
「僕、もう帰ります…..」
”ギルド長が慌てたように口を開く“
そうじゃ無いんだ!
実は今、
王宮からある依頼が来ているんだが、その依頼にお前を使えないかと考えていた。
「ギルド長!それは一体どういう事ですか⁉︎」
ミレーヌさんも驚きを隠せず声に出していた。
”そしてあの男も同じ“
「外れスキルの持ち主が参加出来るわけがないでしょう!」
今度はさっきの男だけではなく
そこに居合わせていた全員が意義を訴える!
お前ら落ち着け!
”ギルド長が一括する“
さっきも言った今回の依頼だが…..
先日、王都の外れの森が突如として消失して多数の魔物が現れたそうだ!
”森が消失⁉︎“
「どう言う事ですか⁉︎」
それはまだ分からん!
しかも、その周辺にはA級相当の魔物が出現しているらしい!
王宮はこの事態を重大に考え早急に調査するようにと我がギルドに依頼して来られたのだ!
そこで至急、勇者に同行するパーティーを編成して3日以内に出発しなければならない!
”真剣な面持ちで話すギルド長の次の言葉に全員の意識が集まる“
そこでだ!
今回の勇者パーティーにこのレイ君を同行させようと思う!
「どうしてですか?」
「普通の依頼ならまだしもこんな危険な依頼に同行させるなんてどうかしてます!」
”ミレーヌさんが止めに入る“
「レイ君の一家にお世話になったのはわかりますが公私混同です…..」
そうじゃないんだ!
”ギルド長がなだめる“
今回の依頼だが王宮は詳細な記録を残すようにとの御達しなのだ。
(ギルド長が真剣な面持ちで俺の方を向く)
レイ君、危険な依頼だという事は、重々承知した上で君に記録係として同行して貰いたいのだが…..
どうだろうか?
この依頼には君の記録のスキルが必要なのだ!
受けては貰えないだろうか?
今回、特例ではあるがギルドカードも発行しよう!
どうかね?
”俺は考える間もなく即答していた“
「願っても無いチャンスです」
「宜しくお願いします」
そうして、外れスキルの持ち主の
俺は、特例記録係として、勇者パーティーに同行することになった。
発行されたギルドカードには
スキル:”記録“と書かれていた。
これで俺も念願の冒険者の仲間入りだ。
しかも勇者パーティーだなんて
俺は嬉しさを抑えきれずその場で叫んでしまっていた。
”冷たい視線が刺さる“
(そして後日)
君に同行してもらう勇者パーティーのメンバーを紹介するから着いて来なさい!
ギルド長が機嫌良さそうに俺を呼ぶ。
今回の勇者パーティーの編成は以下の通りだった。
ライオネル(物理アタッカー):”勇者“、大剣で敵を切り裂く、熱血タイプ
ガルド(タンク):大盾と戦槌で味方を守る冷静な守護者
ミラ(魔法アタッカー):強力な魔法で敵を一掃、知略に長ける
エレナ(神官系):回復・蘇生担当、思いやりが深く主人公を気にかける
フィリス(支援系):仲間強化・敵弱体化、明るいムードメーカー
俺(記録係):記録、潜在的なスキルを持つ、身体は丈夫
”ギルド長が全員に声を掛ける“
皆んな聞いてくれ
この子が昨日話しておいた記録係のレイ君だ。
スキルは”記録“
名前の通り物を記録できるスキルだ。
戦闘には向いていないが宜しく頼む。
ギルド長が緊張で固まっている俺の背中を押す。
”レイ君、挨拶“
「レイ・クロノス 16歳です」
「宜しくお願いします」
”先ずライオネルが口を開く“
「足手まといにだけはなってくれるなよ!」
”エレナがライオネルをたしなむ“
「ライオネル、何でそんな言い方するの!」
どうでも良いだろう!…….
そう言ってライオネルは黙った。
「ごめんね。ライオネルは優しいから心配してるだけなの気にしないでね」
”ライオネルが顔を赤くする“
「黙れ!」
残りのメンバーとも挨拶を交わし
後は戦略ミーティングが行われた。
いよいよ明日の早朝にには王都の外れにある魔物がいる森へと出発する。
(翌朝)
王都を出発した俺たちは、街道を外れ、問題の森へと向かっていた。
最初のうちは、拍子抜けするほど静かだった。
鳥のさえずり、風に揺れる草木の音。
どこにでもあるような、穏やかな風景。
「……本当に魔物が大量発生してるのか?」
思わず呟くと、ミラが冷静に答える。
「表層はまだ安全圏。問題は――その先よ」
視線の先。
遠くに見える“森”。
その境界線だけが、明らかに異質だった。
木々が密集しすぎている。
光が、ほとんど届いていない。
まるで――“何かを隠している”ような森。
ガルドが低く言う。
「気を引き締めろ。ここから先は別世界だ」
その言葉を境に、空気が変わった。
一歩、また一歩と森に近づくにつれて――
“気配”が増えていく。
視線。
息遣い。
草陰のわずかな揺れ。
(……いる)
姿は見えないのに、確実に“何か”がこちらを見ている。
フィリスが小声で言う。
「ねぇ……なんか増えてない?」
ライオネルが剣に手をかける。
「ああ……囲まれてるな」
その瞬間だった。
ガサッ――!!
草むらが弾ける。
「来るぞ!!」
最初の魔物が飛び出した。
狼型の魔物。
だが普通の獣とは明らかに違う。
目が赤く濁り、牙から黒い液体が滴っている。
「数が多いぞ!」
次々と姿を現す魔物たち。
「ガルド!前に出る!」
「任せろ!」
ガルドが盾を構え、最前線に立つ。
ドンッ――!!
突進してきた魔物を受け止める。
「ぐっ……重いな……!」
「ミラ!」
「分かってる!」
ミラの魔法が炸裂する。
炎が走り、数体を焼き払う。
「フィリス、バフお願い!」
「任せて!」
光が仲間たちを包む。
「よし、行くぞ!!」
ライオネルが踏み込み、一気に距離を詰める。
剣閃が走る。
一体、また一体と切り裂かれていく。
(……すげぇ……)
俺はその光景を、ただ必死に“記録”していた。
だが――
「レイ!後ろ!」
エレナの声。
振り向くと、別の魔物が飛びかかってきていた。
「っ!?」
反射的に体を捻る。
だが避けきれない――
その瞬間、ガルドの盾が割り込んだ。
ガンッ!!
「無茶するな!」
「す、すみません!」
(……やばい……俺……完全に足手まといだ……)
その間にも戦闘は激しさを増す。
数は減らない。
むしろ――増えている。
「キリがないな……!」
ライオネルが舌打ちする。
ミラが叫ぶ。
「長居は危険よ!一度引くべき!」
ガルドも同意する。
「この密度は異常だ。森に入る前に消耗するぞ」
一瞬の判断。
そして――
「撤退する!陣形維持!」
ライオネルの号令が飛ぶ。
戦いながら後退。
エレナが必死に回復を飛ばす。
フィリスが強化を維持する。
なんとか――
本当にギリギリで。
俺たちは森の手前まで引き返すことに成功した。
⸻
その夜。
俺たちは森から少し離れた“安全地帯”で野営を張った。
焚き火の火が、静かに揺れている。
だが、空気は重い。
誰もが――理解していた。
「……想像以上ね」
ミラが静かに言う。
「まだ入口ですらないのに、あの数……」
ガルドが腕を組む。
「明日はさらに厳しくなるだろうな」
ライオネルは無言で剣を手入れしている。
フィリスも、珍しく口数が少ない。
そして――
「レイ、大丈夫?」
エレナが優しく声をかけてくる。
俺は苦笑いを浮かべる。
「……正直、全然ダメです」
「何もできなかった……」
「足引っ張ってばっかりで……」
するとエレナは、そっと首を振った。
「そんなことないよ」
「ちゃんと後ろ見ててくれたでしょ?」
「それってすごく大事なことなんだから」
「でも……」
言葉が続かない。
悔しい。
怖い。
そして――無力だ。
そのとき、ライオネルがぽつりと言った。
「死ななかっただけ上出来だ」
ぶっきらぼうな声。
だが――どこか優しさが混じっている。
「最初は誰だってそんなもんだ」
「明日、ちゃんとついて来い。それだけでいい」
俺は少し驚いて、頷いた。
「……はい」
焚き火の火が、ぱちりと音を立てる。
空を見上げると、星が広がっていた。
(……明日、本当に森に入るんだよな……)
不安は消えない。
むしろ大きくなる。
だが同時に――
胸の奥に、小さな決意が灯っていた。
(……絶対に、生き残る)
その夜、俺は浅い眠りについた。
森の奥から聞こえる、得体の知れない“何かの気配”を感じながら――




