【第2話】外れスキルと現実、そして冒険者への第一歩
”俺の目から涙が溢れる“
その日の夕食はいつもに増して俺の好物ばかりが並んでいた。
両親なりの気遣いだろう。
本当にこの人達の間に生まれて来て良かったと改めて感じた。
俺の両親は王都アストリアから10キロ程離れた人口5,000人程の小さな町で荷物の配達。元の世界でいう運送業で生計を立てている。
毎日、荷物の数を整理したり配達したりで忙しい毎日を送っている。
貧しくもないが裕福でもない。
でも愛情溢れる両親だ。
ただ俺にはひとつ困っている事がある。
この世界には映像などテレビ番組のの様な娯楽が無いという事だ!
すなわち、俺が元の世界で培った映像編集や番組制作のスキルも、この世界では何の役にも立ちそうも無いという事だ。
俺のスキルが記録とわかり
毎日のように両親の仕事を手伝うようになる。
主な役割は顧客名簿の記録や荷物の記録、やる事は多くある。
記録のスキルのない両親には大変な作業だったはずだ。
両親からは毎日感謝されている。
「記録する」という行為は、俺の気持ちとは裏腹に仕事をするうえでおおいに役に立っていた。
この世界での俺は、愛犬ルクスと愛情溢れる両親に囲まれた温かい家庭に恵まれたことが唯一の救いだと改めて思う。
おかげで何不自由なく毎日を送れている。
だが、頭の片隅には元の世界で俺のパソコンに突然現れたあの不可解な現象。「記録しますか?」が頭から離れない。
それに神様達が言っていた世界を救って欲しいの意味
まだ何もわかっていない…..
それに、こっちの世界に産まれた時から目の前にあるウインドウ。
ある日、両親に俺の目の前にあるウインドウが何なのか尋ねた事がある。
両親は揃って首をかしげる…..
どうやらこのウインドウは俺にしか見えていないようだ……
今のウインドウには名前の他に
”スキル:記録
(ものを記録する能力)
…と追加されている。
神様達は俺に世界を救って欲しいと言っていたけど。
こんな外れスキルでいったい何をどうすれば良いのか?
今はまだ、
分かるすべも見当たらない…..
……………
……….
…..
やがて、年月が流れ俺は14歳になった。
今では雑用や記録係として町の皆んなからも重宝されている。
その傍ら、俺は冒険者になる為に身体の鍛錬を欠かさずにやっていた。
神様の言葉はつねに残っている。
まだこの能力が世界を救うのにどう役に立つのか?
本当に外れスキルなのか?
それはまだ分からないが能力があてにならない以上、俺自身の身体を鍛えるしかない。
そしてこの世界では16歳を迎えれば、冒険者ギルドに登録できる。
心配なのは俺のスキルが戦闘系スキルではなく、ただ“物を記録”するだけの“外れスキル”ということだ。
この世界は生まれた時に神から授かったスキルの適正が全てで、与えられた能力が後の生き方に大きく影響する。
ある意味で理不尽な世の中だ。
だからこそ、戦闘スキルをこの身体に本気で刻みつけなければならない。
あれから2年、寝ているとき以外の全てを修行に費やした。
こうして忙しくしていると元の世界で早朝から夜中までこき使われていたテレビ局時代を思い出す…..。
あの後、俺が担当していた番組の編集作業どうなったかな?
ちゃんと放送されたんだろうか?
あれが俺の最後の番組編集になるなんてな…..
本当にいろんな番組の映像を編集して来たよなぁ…..
寂しくもあるけど
懐かしさもある
思わず笑ってしまう。
そして静かに息を整え
拳を握る手に力が入る。
レイ・クロノス
明日で16歳の誕生日を迎えるこことなる。
そして、今!
俺は王都アストリアにある冒険者ギルドの前に立っていた。
ギルドの建物は想像以上に大きく、冒険者たちの活気に満ちていた。
剣や弓、魔法の光が飛び交い、訓練場では戦闘の練習をする者たちの声が響く。
俺はその場の空気に圧倒される
「ここが念願の冒険者ギルドか!噂では聞いていたけどやっぱり凄いな。」
周囲をみながら圧倒されている俺にそこに居合わせた冒険者達の視線が集まる。
そのとき、柄の悪そうな一人の男が突然声を掛けてきた。
「見かけねぇツラだな⁉︎ 」
驚いた俺は思わず後退りして、足元に置いてあった荷物に足を取られて尻もちをついてしまう。
それを見ていた他の冒険者達も興味を向ける。
「なんだ!この小僧。そんな弱っちいのに冒険者にでもなるつもりなのか?」
「悪い事は言わねぇ辞めときな!」
周りにいた冒険者達もクスクスと笑いだす。
俺は慌てて立ち上がり言い返す。
「何か問題あるんですか⁉︎」
男が胸ぐらを掴む
「俺はお前が心配で忠告してやってんだぜ!」
「僕、急いでるんで…..放っておいてください!」
初日から問題を起こすのはいくらなんでもマズいだろうと思い。
それ以上は言わずに男を無視して
急いで受付に向かう。
受付に行くととても綺麗で髪の長いお姉さんが声を掛けてくれた。
私はこのギルドで受付や新人のお世話を担当している“ミレーヌ“
よろしくね♡
「はい。よろしくお願いします。」
さっきは災難だったわね。
あいつらいつも新人を馬鹿にしてからかうの…..。
ああいう奴らは相手にしちゃ駄目よ。
「ミレーヌさんありがとうございます」
”俺は顔に見惚れてしまう“
「なに赤くなってるのかしら?」
今、私の胸見てたでしょう(笑)
「み…み…み…見てませんよ!」
冗談よ(笑)
”よく見ると確かに素晴らしい胸だ“
いやいやセクハラは不味い!
”受けのお姉さんが反応する“
”セクハラって???“
「いえ何でもないです…」
この世界にはこの言葉はないらしい…..
で、今日はどうしてここに来たの?
ミレーヌさんが興味津々に聞いてくる。
「僕はレイ・クロノスと言います。隣りの町“リュミナス”から冒険者になりたくて来ました。」
”で、レイ君は今幾つなの?“
「今日16歳になりました。」
年齢は大丈夫みたいね
「ありがとうございます。」
でも問題は適正ね
レイ君も知ってると思うけど適正が無ければ冒険者登録は出来ない決まりなの。
レイ君はどんなスキル持ちなの?
“一瞬言葉を飲み込む”
レイ君?どうしたの?
ミレーヌさんが顔を覗き込む
”覚悟を決めて言葉にする“
「僕のスキルは“記録です。」
ミレーヌさんの表情が少し困ったように感じた。
そして近くで聞いていたさっきのガラの悪い男がまた絡んでくる。
「おい”小僧“ここはそんな外れスキル持ちが来ていい場所じゃねぇんだよ!」
「ガキはガキらしく帰って母ちゃんのオッパイでも吸っとけ!」
”すかさず、ミレーヌさんが止めに入る“
「でも俺….いや僕はどうしても冒険者にならなければいけないんです!」
「何でもしますからお願いします」
”ミレーヌさんが困った顔をする“
気持ちはわかるわ…..でも規則だから…..
本当はお姉さんも力になってあげたいけどごめんね…..
「帰れ!帰れ!いつまでもいられたんじゃ邪魔なんだよ!」
「そうだろ皆んな!」
”さっきの男が周りを煽ってまたちょっかいを出してくる“
「お前らは一体何を騒いでいるんだ!」
声の主は部屋の奥から突然現れた。
大柄で他の者達とはあきらかに格が違う顔に大きな傷がある強面男だった。
”その場に居た全員に緊張が走る“
最初に言葉を発したのはあの男だった。
「いえ、ギルド長!」
「この小僧がまともなスキルも無いのに冒険者になりたいと言って効かないんで大人として教えてただけですよ(汗)」
”強面のギルド長が俺の方を睨みつける!“
ギルド長…..この子は何も悪くないんです。
またあの男が勝手に絡んでただけで…..
”ミレーヌさんが庇ってくれる“
「そうか、それは悪かったな!」
”ギルド長が俺の方に歩み寄る“
「小僧。名前は?」
「レイ・クロノスです。」
”ギルド長の顔が少し緩んだ気がした“
もしかしてお前クロノスんとこのガキか?
「えっ⁉︎」
「父さんを知ってるんですか?」
知ってるも何も俺もあの町の出身だ!あの町でクロノス一家に世話になって無いやつなんかいねぇよ。




