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つないでゆくもの  作者: ぽんこつ


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遭遇

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


今日は夕方からバイトがあるのだけれど、真一郎は理央と隣町の海水浴場に来ていた。

兼ねてからの理央との約束を果たした形となる。

理央は傍でプカプカ浮き輪に捕まって、穏やかな波に身を委ねている。

人は多いがニュースでよく見るような混雑はなくて逆に驚いた。

驚いたといえば海がきれいなこともそうだった。

今いる場所は砂浜から20メートルほどの所。

辛うじて足が着くから水深は2メートルは無いかもしれない。

透明で底までくっきり見える。

「綺麗だな……」

それを見てボソッと呟くと、

「え? なに……照れるやん」

理央は真一郎に片手ですくった海水を掛けた。

あぁ、そういう風に取りましたか。

「やりましたね」

真一郎がやり返すと、理央はキャッキャ言いながら顔を背けてやり返してきた。

そして理央は水中睨めっこなるものを提案してきた。

まあいいでしょう、受けて立ちましょう。

なるほど。

せーので潜る訳ですか。

「じゃあ行くよ、せーの」

潜って理央の顔を見ると、真顔で口角を釣り上げてそこから泡がブクブクと出てきている。

真一郎は海中で吹き出すと泡と一緒に海面に顔を出した。

ヤバいでしょあの顔は……

理央は遅れて顔を出すと、息が切れたのか真っ赤な顔をしていた。

「理央、あれはずるい……もう一回勝負……」

「え、ハハハ、ええよ」

「せーの」

今度は真一郎が声を掛けた。

ハハーん、今度は変顔でですか。

真一郎は満を持して鼻から息を出して見た。

理央は両手で口を押えると海面へと上がって行った。

勝ちですな、やりましたね。

目の前に丁度、理央の胸があり、真一郎は驚いて海面に上がろうとした。

ん?

頭上に圧力がかかる。

理央が頭を押さえているようだ。

「真一郎のがずるやん」

笑いながら言う理央の声が聞こえる。

真一郎は手を海面に出して手を大きく振る。

理央の手は外れ、無事に酸素を吸うことが出来た。

「ちょっと、死ぬかと思った……」

顔が火照っているのを誤魔化すように呟く。

「一勝一敗か、真一郎ってさ運動しないけど……何かしてるん?」

「え? ああ、今はあまりしてないけど、合気道習ってた。それがどうしたの?」

「ん? え、あー、うちも合気道やってるん」

「そうなの?」

「そしたら、今度手合わせして」

顔を赤らめてはいるがニコニコスマイル出ましたね。


真一郎は理央と砂浜へ上がりシートの上でくつろいだ。

そこに、この場所には似つかわしくない格好の男性二人が話しかけてきた。

「お若い方々、神の御加護があらんことを」

年配の男性は優しい笑顔で金色に輝く丸に六芒星が施されたペンダントを二人の前に掲げる。

隣の若い男性も金色に輝く丸に星が施されたペンダントを同じように掲げた。

「幸多からんことを」

若い男性は笑顔でそう言うと、二人は別のシートの客の方へ歩いて行った。

「なん……だったんだ……」

真一郎は思わず声に出した。

「あの人……パフェ爺や」

理央が耳元で囁いた。

パフェ爺?

ああ、理央のバイト先に来る常連客か。

視線の先で二人の男は家族連れを相手に同様の事をしている。

その時、真一郎のスマホが鳴った。

「あ、理央ごめん、父さんから電話だ……ちょっと待てて」

「うん」

真一郎は電話に出ると、話し出す父の声に頷きながら人気のなさそうな場所を探した。

「そうなんだ、香の……彼女の秘密に感ずいている可能性が高いんじゃないかって」

真一郎は声を潜めて話した。

「だとすると……美樹さんがまた狙われる可能性がある……か」

「可能性はあると思うよ」

「ん? お前出先か?」

「え? ああ、まあね海水浴場にいるけど」

「え? まさか……」

突然、電話が切れる。

プッ。

車のクラクションが鳴った。

その方向を見るとサングラスを掛けた父が車の中から手を振っていた。

へ?

何でいるんだ?

真一郎は辺りを気にしながら車に近寄る。

父は運転席の窓を開けた。

クーラーの冷気が気持ちいい。

「お前が海なんて珍しいな」

「まあ……」

「デートか?」

「まあ……」

「相手は?」

「何で?」

「ハハハ、まあいい」

「嘉陽さんだよ……」

「ほお、理央ちゃんか……」

「どして?」

父はニコニコ笑っていたがすぐに真顔になる。

「美樹ちゃんにも、それとなく護衛を付けるが、本人には伝えないように」

サングラスを外すとこちらを見てウインクをする。

真一郎は黙って頷いた。

父は何か察したのかサングラスを掛け、

「すまない」

運転席の窓を閉めた。

その時、一台の車が駐車場から出て行き、父の車はそれを追うように走り去った。

真一郎が理央が待つシートに戻ると、お弁当が並んでいる。

「へへ、お昼にしよ」

理央のウキウキニッコリスマイルを見て、真一郎は自然と笑っていた。



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