第十五話 教師の悩み事(2)
第十五話 教師の悩み事(2)
その夜いつもの如くミーネは、屋根裏部屋の出窓に腰掛けたファンファと、一日の出来事を話し合った。ミーネのストレス発散の時間でもある。
「それで、お茶会のあとどうなったの?」
出窓に腰を掛けるファンファの言葉に、ミーネは溜息をつく。
「ご主人様とセファンは二人で食事に行ったわ。」
「なるほど、まぁ想定通りね。それで?」
「セファンには離れ離れになった子供がいるんですって。」
それを聞いたファンファが身を乗り出す。
「既婚者なの?やるわねあんたのご主人。」
「違うのよ。彼女が女学生の時に子供ができて、相手も学生だったもんだから、子供取り上げられて、無理やり別れさせられたそうなの。一応彼女は未婚よ。」
「ふむふむ。それで?」
「ファンファなんか楽しんでない?」
「いやいや、こんなドロドロ展開熱くならない訳ないでしょ。いいわ~他人のゴシップ。」
「…………。」
「ごめん、ふざけすぎた。それで?」
ファンファは謝るが、その目はキラキラと輝いている。
「セファンは転校させられて、子供も亡くなったと聞かされていたそうなの。でもこの町で別れた元彼と、亡くなった子供と同じ年頃の子供が、一緒にいるのを見かけたんですって。」
「ほぉ~。」
ミーネは野次馬根性丸出しのファンファの態度に眉を顰めるが、聞いてもらえるだけマシかと諦めて話を続ける。
「その元彼ってナイ共和国の役人で大使館にいるんだけど、何とか子供に会わせられないかって頼まれたの。」
「誰が?」
「わたしが。」
「大使館員のご子息なんて深窓のおぼっちゃまよ。ふらふら町中に出てくるわけないでしょ。その元彼って貴族なの?」
「子爵だそうよ。」
「下級貴族か〜、微妙~に厳しいわね。出来そうで出来ない微妙なライン突いてくるわ。」
「わたしもそう思う。」
「直接会いに行ったらダメなのね?」
「昔向こうの家族激おこだったらしいから、まず無理なんだって。しかも他国の大使館員でしょ。この町の衛兵もガードしてるから、へたに近づけないらしいの。」
「あぁ、うちの領主そこらへんうるさいからね。いい町なんだけどそこらへん窮屈よね。」
領主は昔戦争で痛い目にあったトラウマから、外国人との接触を快く思っていない節がある。各国の使節は厳重に監視され、うかつに町に出てこないし、この国の人々も彼らとはそうそうと接触できない。
「う~ん。魔法で大使館ぶっ飛ばそうか。その隙にお坊ちゃま攫えばいいわ。」
「またそれ?いつもいつも力技過ぎないかしら。ぶっ飛ばすのは最後の手段にしましょう。B案ね。」
「B案としては残すのね。」
ファンファが苦笑いする。
「厳重な警備の大使館から、お坊ちゃまをなんとか理由付けて連れ出す。人に見られてはだめ。人気の無い場所で母親とお話しする時間を作るのね。」
「うん。」
「子供が協力してくれるならどーとでもなりそうだけど。わたし姿を見えなくする魔法が使えるし、夜なら何とかなりそうよ。」
「わたし使えない。」
ミーネがうなだれる。
「あなた物燃やすとか吹き飛ばすとか、破壊系の魔法は得意なのにね。」
「雑な魔法使いでごめんね。」
「いいのよ~。あなた可愛いから。」
出窓から飛び降りたファンファは、ミーネの隣に座って頭をよしよしした。
「あなたのご主人様に協力するのは不本意だし、どこぞの女教師なんてそこらへんの石コロくらいしか興味ないけど、かわいい妹分の為ならわたしも協力するわ。あなた猫になって付いて来なさいな。それなら万が一見つかってもどうにかなるでしょ。猫なら子供説得出来そうだし。」
二人はこうして物騒な誘拐計画の段取りを詰めていった。




