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復讐の誓い

【はじめに】


この作品は『知らない方がいいこと』の裏側を描いた作品です。


主人公交代:[ 夏未 ] ⇒ [ 明人 ]


【狂人の明人編】は、本編第7話" 一緒にするな "と同じ時間軸から始まります。


夏未の浮気の告白から十日後。


明人の家に夏未の友人夫婦が、遊びに来ていた。


喫煙所で、妻の美姫が夫に言った一言を、明人は聞いてしまう。


「それにしてもさ、よくこんな時に遊びにいこうとか言えるよね」


夫は、少しだけ口元を緩める。


その後、しばらくして夫妻は帰って行った。


――夏未に浮気の話をするなと言ったはず。こんな約束すら守れないのか。


明人は表情こそ変えないが、腹の中は怒りに満ちていた。


「なんで、あの二人が浮気のことを知ってるの?」


明人が問い詰めると、夏未は困ったように黙り込んだ。


「美姫に相談しただけなの」


「相談?」


明人は拳をテーブルへ叩きつけた。


「もう、この話はするなって言っただろ!」


大きな音に、夏未が身体を震わせる。


「でも、私だって誰かに話さないと――」


「ふざけんなよ!」


明人は足元にあった陽介のおもちゃを蹴り飛ばした。


夏未は慌てて陽介を抱き上げる。


「お願いだから、落ち着いて」


「どんだけ……」


明人の声が震えた。


「どんだけ人を馬鹿にすれば、気が済むんだよ!」


もう、自分を抑えられなかった。


このまま家にいれば、何をしてしまうか分からない。


明人は何も持たず、家を飛び出した。



明人は、湖畔の道路をひたすら歩いた。


それでも怒りが収まることは一向に無かった。


ふいに湖を照らす白い月を見上げる。


もう、無理だ。


何もかも耐えられない。


全てを忘れて、このまま湖の底へ沈んでしまいたい。


明人は湖へ向かって、一歩踏み出した。


さらに、もう一歩。


そのとき、ふいに自分の両手を見た。


これが、俺の人生の終わりか。


夏未。


それに、夏未の浮気相手。


二人は、俺がここまで苦しんでいることを知っているのだろうか。


俺が死んでも、自分たちの恋愛を正当化するのだろうか。


明人の目から、悲しみが消えていく。


代わりに、強い怒りが込み上げた。


――殺してやりたい。


心の底から、そう思った。


明人はもう一度、白い月を見上げた。


もう、感情はいらない。


怒りも、悲しみも、すべて邪魔なだけ。


『復讐』


そのためだけに生きる。


俺だけが壊れて終わるなんて、許さない。


お前たちにも、同等以上の苦しみを味わわせる。


俺が死ぬのは、そのあとでいい。


明人は、はっきりとそう決めた。



一時間後。


明人は自宅へ戻った。


夏未が駆け寄ってくる。


そして、またその場しのぎだけの説明を始めた。


もう、うんざりだった。


まともに相手をする必要などない。


明人からの夏未に向けていた優しさは、もう残っていなかった。


何を言われても、全て聞き流す。


しかし、ただ一言。


「明人が浮気したって、私はついていくから」


その言葉だけは、どうしても許せなかった。




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